温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新しくなった八町温泉 亀の湯

2009年09月12日 | 福島県
本年5月31日に当ブログにて紹介しました福島県・会津地方の八町温泉の共同浴場につきまして、他サイトの情報をもとにその文中で「現在改築されている」と記載しましたが、先日現地へ行ってまいりましたので現状をお伝え致します。

まず国道沿いには、道から見えにくい湯屋の存在を誇示しているかのように「八町温泉共同浴場」と記された杭が立てられていました。川へ下ってゆくと、ありましたありました、新しい湯屋が! 手前にあったコンクリートの小屋は取っ払われて湯屋のみとなり、その湯屋も全体的な大きさは以前と同じくらいですがウッディーな質感が活かされた外観になっています。特に以前には無かった屋根の湯気抜きが目立っています。また入口の庇の梁には「八町温泉 亀の湯」と書かれた立派な表札も貼られています。


国道沿いに立てられた名前の杭


新しくなった共同浴場「亀の湯」


階段を数段下りて引き戸を開けるのは以前と同様ですが、改築されて内部の様子も変わったのかと思いきや、中に入ってみてびっくり。従前の浴槽がそのまま使われており、その浴槽は以前同様ひとつのみでパーテーションは設けられていないので男女混浴。男女の脱衣スペースもやはり以前同様、入口の左右に別れているもののカーテンで仕切りだけの簡単なものでした。つまり上ものだけが新しくなり、内部や使い勝手はそのまま残されていたわけです。最近は保健所も口喧しくなり、混浴のお風呂を設けるなど以ての外というような風潮が行政にできつつありますので、てっきりそんな指導を受けているのか(あるいは意識しているのか)と思っていたのですが、良い意味で裏切られました。改築後も混浴を維持していることは非常に貴重です。


内部の構造は昔のまま。
入口の左が男、右が女の更衣スペース


湯屋の壁にはまるで神社の玉垣のように、この浴場に寄付をした方々の名前が書かれた札が沢山提げられています(これも以前同様です)。その面々の多くは金山町内や近隣町村に在住の方ですが、中には東京や埼玉など遠方からの寄付も寄せられており、いかにこのお風呂が多くの人から愛されているかがわかります。こうした寄付のお蔭で、改築後も入浴料は100円以上の寸志で大丈夫です。とてもありがたいことです。


壁には寄付者の名前と金額が書かれた札が提げられています


さてお湯について、前回の記事では2本のパイプから八町温泉の源泉と玉梨温泉の源泉がブレンドされて注がれていると述べましたが、今回訪れたときには八町源泉を供給するポンプのコンセントが抜かれていてお湯は全く出ておらず、玉梨源泉のみ注がれていました。なぜ八町源泉が止められているのかは不明ですが、以前から供給量が心細かっただけにちょっと心配です。一方、玉梨源泉のお湯の量は相変わらず豊富で、存分にかけ流されてオーバーフローしていました。
奥会津の代表的な地元密着型共同浴場だけに、これからも末永く訪問者に佳い湯を提供し続けてほしいものです。


昔と全く変わらぬ浴槽にはお湯が絶え間なく滾滾と注がれています


川の対岸から見た様子

 
(平成21年3月18日発行の分析表)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
44.3℃ pH6.4 16L/min(自然湧出) 成分総計4604mg/kg

福島県大沼郡金山町大字玉梨 地図

利用可能時間不明(常識の範囲内で)
寸志(100円以上)

私の好み:★★★
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二岐温泉 湯小屋旅館

2009年09月10日 | 福島県


二岐温泉はつげ義春が昭和43年『ガロ』に上梓した作品「二岐渓谷」(現在は双葉社『リアリズムの宿』に収録)に登場する温泉地で、福島県会津地方と中通り地方の境界の山間の渓谷に位置しており、作品中の言葉を借用すると「宿屋が崖にしがみつくように点在して」いる実に鄙びた湯治場です。

駐車場に車をとめて川の方へ下ってゆくと左手に別の旅館が、そして右手に今回紹介する湯小屋旅館が建っています。他の旅館は改築を重ねて旅館の名に恥ずかしくない外観を保っているにもかかわらず、この湯小屋旅館はそれに反して昔ながらの草臥れた建物で、玄関に至ってはトタン葺きの屋根が傾いていて営業しているのかどうか怪しく思われるほどです。
玄関を上がって料金を払い、館内の通路及び階段を下ってちょっと離れたところに浴室がありました。浴室には男女別の内湯と混浴の露天風呂がありますが、露天風呂へは男性用内湯を通ってゆく必要があります。内湯には塩ビのパイプ2本から熱めの源泉が掛け流されており、湯口においてあるコップで無色透明のそのお湯を飲んでみると、石膏泉ならではの味と匂いが感じられます。また体をお湯に沈めてみると石膏泉のトロミ、キシキシ感、そして湯面できらめく青白い光を楽しむことが出来ました。

一方露天風呂は手を伸ばせば二岐川のせせらぎが手に届く位置に湯船が設けられており、大小2つの岩風呂となっています。上述「二岐渓谷」でつげ義春が入った露天風呂は渓谷沿いにあって、宿泊した晩の豪雨の際に川の濁流に飲み込まれてしまったとありますから、もしかしたらこの湯小屋旅館の露天風呂をさしているのかもしれません。
浴槽と渓流を隔てる岩には緑色の綺麗な苔がびっしり生えており、渓流の流れや岩風呂を覆う木々の緑と相俟って何とも言えない落ち着いた雰囲気を醸し出しています。訪問時はちょうど新緑の頃で、葉を透けて輝く日の光が眩しい季節でしたが、秋の紅葉の時期になるとまるで絵画の中にいるような美しい世界が待っていることでしょう。

お湯から上がって宿を出ようとすると、宿のおじさんが「どうぞ遠慮なくお茶でも飲んでいってください」とお誘いくださるので、お茶を頂きながらいろいろとこの宿についてお話を伺うと、この旅館は一度閉じてしまったのですが、それを惜しんだ有志が集まって再興させ、週末だけ営業させているのだそうです。また店番もその有志が交替で担っており、私が訪れたときの店番の方は郡山から来ているとのことでした。語り口調がとても柔らかい方で、お湯でホッコリした私は心まで温められました。


男性内湯


渓流沿いの露天風呂


露天風呂の隣を流れる二岐川


浴室への通路。当宿のかつての看板が掲げられている


露天風呂から山側を見上げると擁壁に治山工事の銘板がはめ込まれていました。
下段の擁壁には昭和45年度とあるので、つげ義春が体験した豪雨や川の濁流に
関係しているかもしれません。


カルシウム-硫酸塩泉

福島県岩瀬郡天栄村大字湯本字下二俣22-7 地図
0248-84-2210

10:00~16:00 週末のみ営業(平日休み)
500円

私の好み:★★★
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強首温泉 おも観荘

2009年09月07日 | 秋田県
※残念ながら閉館したようです。



強首(こわくび)温泉は昭和39年に石油を掘削しようとボーリングしていたらお湯が湧き出したところです。石油試掘の際に発見された温泉はこの他にも新潟県の瀬波温泉や月岡温泉、山形県の羽根沢温泉などがありますが、それらと同様にこの強首温泉のお湯も油の匂いが特徴的です。

コワクビとは何だか物騒な名前のこの温泉は、綱引きで有名な刈和野から車で約10分程のところにあり、途中の道筋には温泉郷への案内板も立てられているので迷うことはないのですが、実際にたどり着いてみると温泉郷と呼ぶにはあまりに寂しいところで、住宅のある強首集落からは離れており、周囲には温泉宿数軒以外には何もなく、その宿も一軒一軒が離れて建っていてひっそりと静まり返っており、温泉郷というよりは場末のラブホテルが建ちそうな立地で、ひと気が全くありません。
強首温泉で最も規模の大きな宿は「強首ホテル」ですが、事前に調べたところによれば温泉を循環・消毒しているとのことだったので、1本手前の道沿いに建つ「おも観荘」へ行くことにしました。おも観とはどういう意味なのだろうと思いつつ玄関に立ってみたら、表札には雄物川観光と大きく書かれており、つまり雄物川観光を省略しただけなのでした。

玄関を開けるとまずはニャンコがお出迎え、声を掛けてしばらく経ったら奥から女将がやってきて、お風呂へと案内してくれました。お風呂は男女別の内湯がそれぞれひとつずつのみ。脱衣室には上がり湯用のボイラーのスイッチがあって、利用者が各自でON/OFFするようになっています。掛け湯をしてお風呂に入ろうとすると今度は旦那さんが登場し「熱くないですか」と聞いてくるので「良い湯加減ですよ」と返答すると、旦那さんはご自身でも湯加減を確かめた後「うん、大丈夫だ。いや、源泉の温度が安定しないもんでね」と仰っていました。ややもするとすぐ熱くなってしまうので旦那さんが適宜水で薄めているのだそうです。この時は小雨が降るやや肌寒い天気が幸いしてか、源泉そのままのお湯に何ら手を加えることなく入浴することができました。

浴槽は二つに分かれており、湯口のある手前側がやや熱め(計測時:41.9℃)になっていて、そこから奥側のややぬるめの槽(40.6℃)へと流れています。お湯は黄褐色にうっすら濁っており、手前側の浴槽より奥側の槽が濁りが濃くなっていることから、湯温の低下や空気との接触が濁りを濃くさせていることがわかります。濁りの原因である黄褐色の湯の華が沢山浮遊しており、これに黒い湯の華がポツポツ混じっています。湯の華の量が多くて浴槽の隅には滓になって沈殿しています。匂いは上述のように油の匂いが特徴的で、浴室に入るだけでツンと鼻を突いてきます。強いのは匂いのみならず塩味も強めで、これに苦味が加わって個性的な味を感じさせてくれます。塩味が強いということは湯上り後も温まりが強く、冬の寒い日に入れば湯冷めしないこと間違いないでしょう。
マイナーな温泉なのでなかなか注目されにくいところですが、お湯の良さや面白さは温泉マニアを納得さえるに十分な質を兼ね備えているといってよいでしょう。油田由来の温泉はどこもかしこも個性的で、湯巡りをする私のような者にとっては決して外せない名湯揃いです。




上がり湯用スイッチ


ナトリウム-塩化物泉
47.1℃ 330L/min (大場崎温泉・強首温泉2号の混合)

※残念ながら閉館したようです。
秋田県大仙市強首上野台15-16
TEL:0187-77-2229

私の好み:★★★
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川原毛大湯滝

2009年09月04日 | 秋田県


秋田県湯沢市のウェブサイトによれば、同市の川原毛地獄は青森県の恐山や富山県の立山(地獄谷)と並ぶ日本三大霊地の一つなんだそうで、今から約1200年前に同窓という僧侶によって開山されたとされています。木や草が全く生えない火山のガレが広がる荒涼とした光景はまさにこの世の果て、あるいは地獄を思わせるに相応しい様相です。硫黄分で真っ黄色になった噴気孔からは鼻を強く刺激する硫化水素ガスや水蒸気がシューシューと音を立てながら勢いよく噴出され、この地で火山活動が活発に行われていることを窺い知ることが出来ます。
この火山活動により熱せられた温泉水が集まって沢となり、滝として一気に落ちている箇所が今回紹介する川原毛大湯滝です。滝そのものが温泉であり、滝つぼがそのまま浴槽になるという実に珍しい場所で、かの有名な北海道・知床にあるカムイワッカの滝と並び称されるほど、野湯好きの方なら誰しもがご存知の場所でもあり、そのワイルドさには誰しも魅了され、休日ともなれば必ず家族連れの観光客などが滝つぼに入って湯浴みを楽しんでいます。



川原毛大湯滝へは車では直接行くことができませんので、駐車場に車を置き遊歩道を歩いて向かうことになります。最寄りの駐車場から温泉の川に沿って歩くこと約15分、階段を下ってゆくとやがて滝の轟音が聞こえてきます。滝の傍の対岸には掘っ立て小屋ですが更衣室もあるので、そこで水着に着替えて滝つぼに入りましょう。
滝から流れ落ちるお湯は無色透明の酸性硫黄泉で、口に入ると口腔内が収斂し、飛沫が目に入ると沁みます。ですからあまり飛沫が多く掛かるような場所だと落ち着いて入れないかもしれません。私が訪問した8月中旬の曇天の日、滝つぼで湯温が40.5℃、更衣小屋へ渡る橋近くまで下っても40.1℃に温度が保たれていましたので、ちょっと川下で浸かるのもいいかと想います。そんなの関係ないやという人は是非滝つぼへ。滝は2筋落ちていますが、向かって左側の滝の滝つぼがまるで岩を刳り貫いた湯船のようになっており、深さも丁度よい具合で湯加減も程よく、実に爽快です。

この川原毛大湯滝は湯温の関係で夏に入るのがもっとも相応しいと思われます。冬季(11月上旬~5月上旬)は道路が閉鎖されているので行くことすらできませんが、それ以外の時期でも春や秋ですと湯温が低くなってしまい湯浴みするには適しません。気温が高くなって冷めにくくなる夏休みに訪れるのがよいでしょう。また硫黄分の付着により川の岩や石はとても滑りやすくなっていますので、怪我しないようにご注意ください。

なお、川原毛地獄の駐車場は二つあり、ひとつは泥湯温泉を通って小安峡と秋の宮温泉を結ぶ県道310号線沿いに設けられた川原毛地獄頂上のものと、もうひとつは県道51号線から南へ伸びる狭隘な山道をひたすら進んだドン詰まりにあるものですが、大湯滝へは後者の方をおすすめします。というのも前者は上述の通り地獄の頂上にあるのに対し、後者は地獄の下部に位置しており、大湯滝はその更に下にあるので、前者に駐車すると往路は歩道を下りていけばいいのですが、復路は1キロ半ちかくある山道をひたすら登らなくてはいけないので、まさに地獄を味わうことになります。その点後者の方が徒歩の距離が短く済むので楽なのです。後者の駐車場に行く場合は、国道13号方面から県道51号線に入って小安峡方面に向かえば要所要所に看板が立てられていますので、それに従って脇道へ入っていけばたどり着けます。途中行き違いの出来ない狭隘な区間が多いので運転にはご注意を。


湯浴みに興じる家族連れ


湯船に丁度よいサイズの滝つぼ


地獄から湧いて流れてくる温泉の川。
撮影時には46℃ありましたが、季節をずらせば入浴できる湯温になりますので、
もし大湯滝の湯温がぬるい場合はこちらの川に入ってしまうのもいいかも


川原毛地蔵菩薩


灰白色の荒涼とした景色が広がる地獄地帯
あちらこちらから火山性ガスが音を立てて噴出しています


硫黄で黄色くなった噴気孔


川原毛地獄の頂上から大湯滝方向を見下ろした様子
頂上と滝の間にはかなりの高低差があります


酸性-含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)-塩化物泉
94.5℃ pH1.41 蒸発残留2600mg/kg

秋田県湯沢市高松字高松沢国有林内
湯沢市物産観光情報(川原湯地獄のページ)

道路閉鎖期間(通常):11月上旬~5月上旬
従ってそれ以外の期間ならば訪問できますが、入浴するなら7月下旬~9月上旬がよいと言われています。

無料 水着着用

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