温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

肘折温泉 上の湯

2013年01月21日 | 山形県
 
肘折温泉のランドマークと言っても過言ではない共同浴場「上の湯」に関しては、温泉ファンのみならず多くの方がネット上で様々な形で紹介なさっていますから、ボキャブラリの貧相な私が今更駄文を垂れ流してあーだこーだ申し上げたところで何の価値もありませんが、かと言って「河原湯」「疝気湯」と続いて「上の湯」を取り上げないわけにはいかないので、数点の画像と共に簡潔に書き綴ってみます。


 
浴室入口は1階のバス通りに面していますが、その手前から上層階へ昇る外階段の下には、洗濯用と思しき温泉槽が顔をのぞかせていました。こうした生活に密着した設備こそ、温泉地の共同浴場らしさを感じさせてくれますね。


 
宿泊先のお宿で「上の湯」の無料入浴券を手にしているので、これを番台のおばちゃんに手渡し、若女将会特製の暖簾を潜って脱衣室へ入ります。肘折に3箇所ある共同浴場のうち、ここだけ有人なんですよね。さすがに当地を代表する共同浴場だけあって、他2箇所の共同浴場よりはるかに広いスペースが確保されています。



ほぼ朝一番のタイミングで利用したのですが、屋外との温度差のためか室内は濃い湯気が充満しており、思いっきり視界不良でした。このためどれだけ頑張っても私の安物デジカメではこれが限界です。何を撮っているかわからない画像でごめんなさい。このお風呂に関してはネット上で多くの方が撮影なさっていますから、もし浴室の様子を知りたい場合は、お手数ですがググッて他サイトをご覧くださいませ。
一般的に曇っている浴室は不評である場合が多いのですが、もしお風呂が混雑していたとしても、周囲の様子がほとんど見えないが故に他のお客さんの姿が視界に入ってこないので、混雑を気にせず入浴できるメリットがありますし、なにしろ幻想的でもありますので、へそ曲がりな私はこの理由により曇ったお風呂が結構好きだったりします。尤もこの時は私以外にどなたもいらっしゃらなかったのですが…。


 
「上の湯」といえば浴槽の縁に佇むこのお地蔵さんですね。台座の説明によれば…
大同二(807)年老僧(地蔵権現)がこの「上の湯」を発見し、折れた肘を洗ったら傷も治り気力も増した。次来この霊湯は仏の慈悲として伝えられている。老僧の住んだ洞窟を「地蔵倉」と呼び聖地とした。老僧の折れた肘が湯で治ったということからこの温泉を「肘折温泉」と名付けた。
とのこと。いくら1200年前の話とはいえ、お湯で洗っただけで折れた肘が治るもんかしら…なんて疑っちゃう私は、生粋の野暮なのかもしれません。


 
お地蔵さんの下から滔々とお湯が注がれて広い湯船を満たし、浴槽の縁から静々とオーバーフローしています。使用源泉は3号と4号の混合泉で、多少黄土色を帯びて霞んでいるものの石板貼りの底がはっきり見える程度の透明度を有しており、湯口のお湯を手に掬って口に含んでみますと、甘塩味と金気味、そして薄い出汁味と炭酸味が感じられます。他施設で多く導入されている2号泉と違って炭酸っぽさが強い一方で金気と濁りは弱く、浴槽や床で赤茶けた箇所はあまり見られません。やや熱めですがトロトロした浴感が心地よく、さすがお地蔵さんの霊湯は違うなと思わずニンマリしたくなりました。



肘折の他の共同浴場と同じく室内にシャワーなどの設備は無いのですが、その代わりにちゃんとした上がり湯が設けられている点は、当地を代表する「上の湯」のグレードの高さを示しているのかも。



屋外から入口の戸付近に向かって一本のパイプが突き出ており、そこから桶にぬるいお湯が落とされており、浴槽などに注がれること無く、そのまんま床へ捨てられていました。
ちなみに私の入浴中、温度計を手にしたおじさんが入ってきて、私に湯加減を確認した上で浴槽や上がり湯、そしてこのパイプのぬる湯の温度を計測して、そそくさと去っていきました。ということはこのぬるいお湯も管理対象になっているわけですよね。でも何のためにお湯がここへ引かれて捨てられているのかしら。
あぁ、冒頭で簡潔に書き綴ると申し上げておきながら、いつものようにだらしなく戯言を吐き続け、その上答えが見出だせない疑問をイタチの最後っ屁のように呈して文末を誤魔化す始末。大変失礼いたしました。


組合3号源泉・組合4号源泉混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 69.0℃ pH6.5 蒸発残留物2965mg/kg 溶存物質3429mg/kg
Na+:898.8mg, K+:72.7mg, Mg++:26.8mg, Ca++:78.4mg,
Cl-:1055mg, SO4--:214.2mg, HCO3-:849.9mg,
H2SiO3:159.1mg, HBO2:66.7mg, CO2:309.2mg,
(平成19年10月10日)
源泉温度が高いので井戸水で加水

山形県最上郡大蔵村南山
肘折温泉ホームページ

8:00~18:00 木曜は清掃のため休業
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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肘折温泉 疝気湯(2012年12月下旬・再訪)

2013年01月20日 | 山形県
 
前回取り上げた「河原湯」から上がった後、せっかくなので久しぶりに共同浴場「疝気湯」にも立ち寄ってみることにしました。拙ブログは津々浦々の温泉地を万遍なくピックアップしているつもりですが、どういうわけか肘折はポッカリと抜け落ちており、そんな中で唯一「疝気湯」だけは4年ほど前に記事にしております。その際の記事はこちらをご参照ください。さて数年間の間に何が変化し何が維持されているのやら。



無人施設であるためカードキーで入口のドアを解錠するのは「河原湯」と同様ですが、カード読み取り機の上には「どうぞ上の湯(大浴場)に料金払って…」と案内されています。私のように宿泊先からカードキーを借りている客でしたら問題ありませんが、宿泊せずにふらっと立ち寄っただけの日帰り客はわざわざ「上の湯」まで行かなきゃいけないわけか…。



以前はご近所の小料理屋「みちくさ」を訪い、お店のおじさんに料金を支払って鍵を開けてもらっていたのですが、この日のお店は人のいる気配がなく戸も固く閉ざされていました。わずか数年の間ですが、こんな変化があったんですね。


 
解錠して中に入り、若女将会の暖簾を潜って脱衣室へ。肘折のランドマークである「上の湯」を大浴場、前回の「河原湯」を小浴場とするならば、この「疝気湯」は中浴場といった規模ですね。



棚の上に伏せられていたプレートには、ここがかつて一時的にジモ専だったことを窺わせる文言が記されていました。肘折の共同浴場って外来者でも利用できるものと勝手に思い込んでいたのですが、実際にはそんなお気楽な状況ではないんですね。このプレートは現在は使われておらず、肘折温泉の公式HPにも日帰り入浴施設として「疝気湯」が紹介されているので、以前同様に現在でも外来者の利用は可能なのですが、管理にかかわる問題が温泉街にとって大きな負担になっていることは想像に難くなく、上述の料金支払い先の件はその具体的な一例なのかもしれません。



「お湯は十分に出ます。ぬるくて出した人は必ず細くして下さい。次の人が熱くて入れない時があります」とのこと。つまり源泉投入量は絞り気味にしておいてくださいね、ってことですね。そうそう、この「疝気湯」って以前入った時にとても熱くて肌がピリピリした記憶があります。よし、熱さを覚悟して、いざ浴室へ。


 
浴室の天井は高いものの、屋外は吹雪いて凍てつく寒さだったためか、室内には濛々とした湯気が濃く篭っていました。コンクリ造で長方形の浴槽は4~5人サイズ。浴槽も床も、お湯が掛かるところは悉く赤茶けており、コンクリの地肌はすっかり着色されていました。



脱衣室の戸に向かって斜めに切り込まれた溝が個性的。湯船に人が入って溢れ出ない限り、湯船のお湯は全てこの溝から排湯されていきます。



バルブが接続された湯口からアツアツの源泉がチョロチョロと落とされていました。使用源泉は金気と濁りの強い2号の単独。貯湯槽から何ら手が加えられることなくここまで引かれてくるので、湯口では触れないほど熱く、上述の「ぬるくて出した人は必ず細くして下さい…」云々の注意書きはこうした事情によるわけです。ややモスグリーン掛かった赤錆色混じりの黄土色に笹濁り、2号泉らしく鉄錆系の味や匂いがはっきり自己主張し、更に甘塩味と弱炭酸味が感じられます。
そして肌をピリピリ刺激する熱さはまさに「疝気湯」そのもの。ここのお風呂はやっぱりヒーヒー唸るほど熱くなきゃいけませんね。

前回紹介時と今回では利用方法に変化があったものの、熱いお湯と渋い浴室は以前のままだったので、記憶と変わらぬ「疝気湯」に再び出会えてホッとしました。


組合2号泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 86.4℃ pH7.4 蒸発残留物4012mg/kg
Na+:1233mg, K+:103.6mg, Mg++:37.6mg, Ca++:134.1mg,
Cl-:1343mg, SO4--:287.6mg, HCO3-:1356mg,
H2SiO3:196.7mg, HBO2:47.1mg, CO2:90.5mg,
(平成14年3月6日)
温度調整のため井戸水を加水

山形県最上郡大蔵村南山
肘折温泉ホームページ

入浴可能時間調査忘れ
200円(要カードキー、宿泊先の宿に問い合わせ。なお立ち寄り利用の場合は上の湯で)
備品類なし

私の好み:★★★
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肘折温泉 河原湯

2013年01月19日 | 山形県
 
私は肘折へ何度か訪れていますが、なぜか共同浴場の「河原湯」だけは未訪問でしたので、今回利用してみることにしました。路地沿いの民家の裏手にひっそりと佇む小さな湯屋はいかにも地元の方向けのお風呂らしい隠れキャラ的な風情であり、共同浴場はこうでなくっちゃと雪まみれの私は独り合点しながらひとまずデジカメにその姿を収めます。この時は路地から浴場へ向かうアプローチには足跡が全く見られなかったので、しばらく誰も入っていないコンディションの良いお湯を独り占めできるぞとほくそ笑みながら、まっさらな雪を踏みしめて入口へ向かいました。


 
宿泊先の旅館でお借りしたカードキーで解錠し、その隣にあるポストへ入浴券(これも宿泊先で入手)を投入して中へ。


 
若草色の暖簾の裏には若女将会の名前が赤く縫い込まれていました。


 
こぢんまりした脱衣室の棚には衣類や荷物を収める枠が8つしかありません。棚の上には大正12年と彫られた石の湯神が祀られており、その左右には御幣がさがった榊が供えられていました。温泉は神様が与えてくれた天の恵みですから、脱衣前にこの神様に手を合わせてから有難く入らせていただくことに。


 
浴室には湯船がひとつあるばかりで、余計なものが一切排除された至ってシンプルなレイアウトです。水道の蛇口以外にカランは無いので、桶で湯船のお湯を汲んで掛け湯します。床はタイル貼りで壁はモルタル塗り、ビビッドな水色の水道配管がとても目立ちます。


 
四角い浴槽は3人は入れそうな大きさで、左隅のパイプからトポトポとお湯が投入されています。こちらに引かれているお湯は3号と4号の2源泉混合で、前々回取り上げた「西本屋旅館」の「金魚湯」や前回の「三浦屋旅館」で使われている単独の2号泉と違い、ほんのりと赤茶系の黄土色を帯びて弱く濁っているものの、浴槽の底の石板タイルがはっきり見えるほどの透明度があるのですが、湯口の直下の底部は赤茶色に濃く染まっていたり、浴槽の縁は桜貝のような淡いピンク色の析出に覆われていたりと、湯船の透明度だけでは判断できない成分の濃さを有しているようです。お湯を口に含むと甘塩味+薄い出汁味+炭酸味+鉄系の金気味が舌に伝わってきますが、2号泉と較べて金気は弱いものの炭酸味は(相対的に)はっきりしているように感じられました。体を湯船に沈めるとツルスベ浴感とトロミのある感触が混在して肌に載ってきます。なお浴室の段階では全く加水していませんが、湯加減は丁度良く、そのまんまの状態で絶妙な状態のお湯に入ることができました。

余談ですが、肘折の宿泊客はカードキーさえあれば3つの外湯を自由に利用できますが、地元の方は利用する共同浴場が暗黙のうちに決まっているそうでして、宿泊先のお宿の方から伺った話によれば、近所の浴場以外は入ったことがないからどんなお風呂か知らないんですよ、とおっしゃっていました。佇まいもさることながら、こうした具体的な使われ方こそいかにも地元民向け施設だなと実感させられました。


組合3号源泉・組合4号源泉混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 69.0℃ pH6.5 蒸発残留物2965mg/kg 溶存物質3429mg/kg
Na+:898.8mg, K+:72.7mg, Mg++:26.8mg, Ca++:78.4mg,
Cl-:1055mg, SO4--:214.2mg, HCO3-:849.9mg,
H2SiO3:159.1mg, HBO2:66.7mg, CO2:309.2mg,
(平成19年10月10日)
源泉温度が高いので井戸水で加水

山形県最上郡大蔵村南山
肘折温泉ホームページ

入浴可能時間調査忘れ(8:00~18:00だったかな?)
200円(要カードキー、宿泊先の宿に問い合わせ。なお立ち寄り利用の場合は近所の方からキーを借りるそうです)
備品類なし

私の好み:★★★
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肘折温泉 三浦屋旅館

2013年01月18日 | 山形県
 
前回取り上げた「西本屋旅館」を出た後、次なるお風呂を求めつつ小規模な旅館を中心に訪ってみたのですが、訪問した日はまだ肘折へのアクセス道路が通行止だったために温泉街に客の姿は全く見られず、しかも折からの豪雪のために皆さん雪掻きや雪下ろしで大わらわ、開店休業状態のお宿が目立っており、なかなか入浴まで辿り着くことができません。そんな中で玄関の引き戸に「只今入浴できます」の札を貼っていた「三浦屋旅館」はこの日の私にとって救世主のような存在でありました。



昔ながらの湯治宿的な風情を色濃く残すこちらのお宿を訪って入浴をお願いすると、女将さんが快く受け入れてくださいました。上がり框を上がってすぐ左手が浴室です。浴室入口脇には2階へ上がる階段が伸びていますが、いかにも古い建物らしく勾配が急で、その途中の壁には引き出しが埋め込まれていました。


 
暖簾を潜って浴室へ。お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。
脱衣室は括りつけの棚とユニットタイプの洗面台が設置されているだけの至ってシンプルな造りです。



浴室はメインストリートに面しており、窓からは雪に反射された昼光が降り注がれています。外観も館内も伝統的な木造建築そのものですが、お風呂だけは石板貼りなんですね。室内の中央には横幅いっぱいに角の取れた石造りの浴槽がひとつ据えられています。その大きさは3~4人くらいでしょうか。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が1つ。女湯とこちら側を仕切る塀には渓流を写した大きな写真が貼られていました。限られたスペースを少しでも広く見せようと工夫なさっているのでしょう。


 
「二号湯 あったまり 元湯」と彫られた石の下には灯籠や石樋が設置され、その樋から文字通り組合2号源泉が他源泉と混合されることなく単独で浴槽へ注がれています。緑色掛かった黄土色に濁り、金気や土類系の味と匂いが感じられます。鮮度感が良いスベスベの爽快なお湯です。
お湯に関しては2号泉単独使用である前回掲載の「西本屋旅館」の「金魚湯」とほぼ同じ印象ですが、こちらの方がやや赤みが強く、また透明度もやや高いように見えました。温度調整のために加水されているものの放流式の湯使いでして、縁に3つある切り欠けからしっかり排湯されています。周囲は温泉成分の付着により薄く赤茶けていますが、排湯溝がきちんと機能しており、縁上を乗り越えるような溢湯は少ないため、床全体が染まるようなことはないようでした。
湯船のお湯はちょっと熱めでしたが、温泉街を彷徨い歩いて冷えきった体には寧ろその熱さが丁度良く、あったまりの湯の恩恵を有難く受けさせていただきました。


組合2号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 87.5℃ pH7.4 掘削自噴 溶存物質4758mg/kg 成分総計4846mg/kg
Na+:1196mg(81.80mval%), K+:103.6mg(4.17mval%), Mg++:38.1mg(4.94mval%), Ca++:105.1mg(8.24mval%),
Cl-:1430mg(59.10mval%), SO4--:302.5mg(9.23mval%), HCO3-:1310mg(31.45mval%),
H2SiO3:194.3mg, HBO2:64.3mg, CO2:87.9mg,
(平成元年10月30日)
源泉温度が高いため井戸水で加水

山形県最上郡大蔵村南山490
0233-76-2046

日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類あり(ドライヤーは見当たらず)

私の好み:★★★

コメント (4)
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肘折温泉 西本屋旅館

2013年01月17日 | 山形県
 
雪が降りしきる年末の某日、仙台での所用を済ませて終日オフになった私は、山形県最上地方の肘折温泉へ向かい、吹雪の中を歩いて全身雪まみれになりながら、温泉のハシゴを実践してまいりました。どこからスタートすべきか迷っていたのですが、玄関に提げられていた「湯めぐり 只今入浴できます」の札に導かれて、まずは「西本屋旅館」で入浴をお願いしてみることにしました。



玄関に入って声を掛けてみますが、しばらくは何の反応もありません。それもそのはず、お宿の方は雪下ろしの真っ最中でして、やがて私の声に気づいた女将さんが仕事の手を休め、笑顔でお風呂へと案内してくださいました。そんなこととは露知らずにのほほんと訪って雪下ろしの邪魔をしてしまい申し訳ございません…。
館内はいかにも肘折らしい古風な湯治宿の面影を残す佇まいで、タイル貼りの共用洗面台がレトロな雰囲気を醸し出していました。


 
こちらのお宿には「金魚湯」と「岩風呂」という2つのお風呂があり、通常はそれぞれを男女に分けて利用しているようですが、この時は私以外にどなたもお客さんがいらっしゃらないので両方使って良いという有難い言葉をいただきました。2つのお風呂の中でも「金魚湯」はお宿の看板と言うべき名物なんだそうですから、まずはそちらから入ってみることにしましょう。金魚はお風呂のみならず宿そのもののトレードマークのような存在でもあるらしく、玄関の照明にも金魚が描かれていました。


 
棚と籠、そして腰掛けが備え付けられているばかりの実用本位でシンプルな脱衣室ですが、さすがに金魚をプッシュするお宿だけあり、室内の片隅には青い折り紙の金魚(青いから金魚じゃないのか…)が竹竿にたくさん吊り下げられていました。とっても微笑ましく可愛らしい飾りですね。


 
浴室はごく一般的な内湯のスタイルでして、洗い場には混合水栓が2基設置されており、うち1基はシャワー付きです。ホームベースのような形状をした五角形の湯船にはやや緑色を帯びた黄土色に濁るお湯が張られており、濁り方はとても濃くて底はほとんど見えないほどです。肘折でこの色や濁りといえば2号泉ですね。このお風呂では2号泉を単独使用しているそうです。浴槽や床は赤茶色に染まり、コンクリの浴槽縁は析出によって被覆されていました。



お湯がトポトポとパイプから湯船へ注がれており、温度調整のために蛇口から出る山水で加水されています。金気の味と匂い、土類系の味と匂い、そして薄い塩味や弱炭酸味が感じられ、肘折のお湯らしいスベスベ浴感が楽しめました。訪問時はお湯が溜まったばかりで、まだ誰も入っていないキリッキリの新鮮なお湯を堪能することができたのですが、女将さんは湯加減が心配だったらしく頻りに「ぬるくなかったですか」「温度は大丈夫でしたか」と声を掛けてくれました。確かに肘折のお湯にしてはやや低めの温度だったかもしれませんが、それでも体感としては41~2℃でして、身体には一番良い温度でしたから、肘折の他のお風呂みたいに熱さを気にすること無くゆっくりと全身浴することができ、むしろこの湯加減の方が個人的には嬉しく思います。

さて、ここまでは何ら変哲のない内湯なのですが…



湯船の隣には金魚が泳ぐ水槽が設けられており、入浴しながら悠然と泳ぐ金魚達を観賞できちゃうのが非常にユニークなのであります。ちょっとキッチュかもしれませんが、でも凄いよ、これ!


 
いままで沢山のお風呂に入ってきましたが、温泉に浸かりながら色鮮やかな金魚を鑑賞できるお風呂は初めての体験でしたので、ついつい興奮してしまいます。水槽のガラスはとっても綺麗で一点の曇もありませんでしたから、相当こまめにお手入れなさっているのでしょうね。元禄の頃の大阪(大「坂」と表記した方が正しいですね)の豪商は自分の屋敷の天井をビードロ張りにしてそこに金魚を泳がせていたそうですが、それに近いような非日常的で奢侈な体験に、しばしお大尽気分…。


 
もうひとつのお風呂「岩風呂」にも入ろうかと思っていましたが、「金魚湯」でたっぷり湯浴みして体が十二分に火照ってしまったので、こちらは見学だけさせていただくことに。


 
名前の通り周囲を岩でガッチリ組まれた男性的で剛健な感じがする浴室ですね。パッと見た様子では浴槽の容量も「金魚湯」より一回り大きいようです。洗い場にはシャワー付き混合水栓が1基設けられています。


 
湯口から注がれるお湯は、2・3・4号の3源泉混合のお湯。モスグリーン系の黄土色に濁っていました。長い年月を経て付着したコテコテな析出によって湯面近くの岩はクリーム色に染まり、石板が埋め込まれている洗い場の床の目地も析出ですっかり埋まっています。析出を見ると涎が出ちゃう温泉ファンには堪らない光景かもしれません。

お湯から上がった後も、雪下ろしの途中にもかかわらず女将さんは再び玄関まで下りてきて、湯加減について気をかけてくれたり、訪問日の時点ではまだ通行止だったバス通りについてお話してくれたりと、一見の客である私に色々と気配りしてくださいました。肘折の方はみなさん本当に親切ですが、こちらの女将さんはまさにその好例で、おかげさまで肘折における湯めぐりを気持ちよくスタートすることができました。岩風呂はまだ未湯ですから次回は宿泊がてらそちらにも入ってみたく思います。


・金魚湯
組合2号泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 86.4℃ pH7.4 蒸発残留物4012mg/kg
Na+:1233mg, K+:103.6mg, Mg++:37.6mg, Ca++:134.1mg,
Cl-:1343mg, SO4--:287.6mg, HCO3-:1356mg,
H2SiO3:196.7mg, HBO2:47.1mg, CO2:90.5mg,
(平成14年3月6日)
温度調整のため山水を加水

・岩風呂
組合2号・3号・4号混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 64.6℃(貯湯槽、2号85.1℃, 3号75.6℃, 4号65.5℃) pH7.3 蒸発残留物3053mg/kg 溶存物質3586mg/kg
Na+:944.1mg, K+:77.5mg, Mg++:28.6mg, Ca++:88.6mg,
Cl-:1066mg, SO4--:242.2mg, HCO3-:920.8mg,
H2SiO3:148.0mg, HBO2:61.3mg, CO2:181.2mg,
(平成22年7月2日)  

山形県最上郡大蔵村大字南山522
0233-76-2316
ホームページ

日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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