温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あゆり温泉

2013年01月16日 | 福島県
 
矢吹町の役場近くにある「あゆり温泉」はお湯のクオリティが私好みなので、本来ならば近くへ立ち寄った度に利用したいのですが、どういうわけかこの界隈を訪れるときは夕方か日没後が多く、夕方以降の「あゆり温泉」はいつも混雑しているため、行きたいなぁと思いつつもついつい及び腰になっておりました。でも毎度毎度及び腰では何時まで経っても再訪できないため、先日考え方を改め、久しぶりに利用してみることにしました。



暗い画像じゃ外観がちっともわかりませんよね。ハードディスクの中を漁っていたら4年前に撮った画像が見つかったので、ついでに載せておきます。全然意識していませんでしたがこの施設って「矢吹町老人福祉センター」という名称だったんですね。


 
エントランスの前には「300万人突破」の記念看板が誇らしげに立てられていました。町民に愛される憩いの湯って良いじゃないですか。玄関を入ってすぐ目の前の受付に立っているおじさんに500円玉を差し出すと、10回捺すと1回無料になるご利用カードと一緒にお釣りの100円が戻され、「この100円はロッカーで使うからね」と笑顔で教えてくれました。受付の周りには田舎のお風呂らしく食品の類がたくさん販売されていました。


 
受付から右手に進むと浴室です。脱衣室の壁際にはロッカーがズラリとたくさん並んでいますが、受付のおじさんが教えてくれた通りにその全てが100円リターン式となっています。いかにも公営施設らしい無機質な室内ですが、洗面台は4基、そしてドライヤーは2台用意されており、使い勝手はまずまずです。
なおロッカーの上の見つけにくいところに「入湯税として1人1日100円(日帰りの場合に限る)を納入していただきます」という案内が掲示されていました。余談ですが、入湯税は市町村税ですからその金額をいくらにするかは各自治体の条例に依るわけでして、温泉や鉱泉の宿泊施設に泊まる客に対してはどこの自治体でも標準税率である150円が課税されますが、日帰り利用に関しては自治体により金額に差があり、この矢吹町の場合は100円ですが、アットランダムにピックアップしてみますと、たとえば首都圏からの観光客を呼び込みたい栃木県那須町や神奈川県箱根町は50円ですし、鳴子温泉を擁する宮城県大崎市は70円、川湯温泉の北海道弟子屈町は90円、岐阜県高山市や青森県大鰐町など日帰りと宿泊客で区別がない市町村は150円と、下と上では3倍近い開きがあるんですね。尤も条例で入湯税が定められている自治体でもきちっと徴収されているかといえばかなり曖昧なんですが…。



浴室は湯気が濃く篭っており、5メートル先も目視できないほど視界不良だったので、こんな画像しか撮れていません。ごめんなさい。
室内は天井が高くて床も広々しており、もしここが青森県だったらトドが大量発生しちゃうかも。側面には白いタイルが、床には薄いエメラルドグリーン系の色を帯びた石板タイルが貼られているのですが、広いばかりでこれといった捉え処が無く、いかにもお役所が好みそうな無難な内装と言えるかもしれません。

洗い場には混合水栓が11基設置されており、うち1基にはシャワーが付いていません。シャンプーやボディーソープの備え付けはありませんが、固形石鹸なら各水栓に用意されていました。
浴槽もプールみたいに大きなもので、入浴中は思わず両手を掻いて平泳ぎしたくなっちゃうほどです。この浴槽と洗い場の床との間には段差があり、浴槽の方がかなり低い位置に設けられているため、この日のように曇って視界不良だったり初めてで浴槽周りの状況があまりわからない場合は、その段差に気づかず足を踏み外してしまうかもしれません。浴槽にはちゃんと安全に入るための手摺付きステップが設置されていますから、横着していきなり浴槽に入ろうとせず、このステップを使った方が良いかと思います。

浴室は大きな窓に面しているのですが、その窓は市販のサッシを上下2段に並べたもので、窓の総面積の割りにはサッシの窓枠が邪魔しているのであまり開放感はありません。また一部のガラスには目隠しフィルムが貼ってあるので余計に開放感が失われているように思われます。とはいえ開放感がどうたらこうたらと戯言を垂れるのは偶に利用する私のような外来客ぐらいなもので、常連客の皆さんは窓際に確保された広いスペースに腰を掛け、窓の外なんて関心を払わず、その場でグッタリとしながらクールダウンなさっていました。


 
お湯は岩組みの上から滝のように浴槽へ落とされています。館内表示によれば温度調整のために加水されているそうですが、そのお湯を直接触ってみると体感で50℃近くあり、分析表に記された湧出温度も50.0℃ですから、加水量はかなり少ないのではないかと想像されます。なお湯使いは加水された上での放流式で、加温循環消毒は行われていないようでした。また脱衣室内の張り紙によれば、以前は浴槽のお湯を洗い場の方へオーバーフローされていたそうですが、保健所の指導により現在は窓下の溝へ溢れさせて排湯させています。


 
こちらの施設は2010年の夏に改修工事が実施されたそうでして、露天風呂は前回に利用した時とはかなり様子が異なっており、以前は日本庭園風だったように記憶しているのですが、改修後の現在は全体的に小奇麗ですっきりとした雰囲気に生まれ変わっていました。露天エリアの隅っこに設けられたモミジなどの植え込みが、以前の和風な雰囲気を残しているようでした。


 
浴槽は石板貼りの長方形で比較的大きな造り。頭上には真新しいステンレスの骨組みが立てられており、その半分にはテントが張られているので、この日はザーザー降りの雨だったのですが、テントのおかげで雨粒を気にせず露天で入浴出来ました。

湯面下にある源泉投入口から熱めのお湯が湯船へ吐出されており、浴槽縁の切り欠けから惜しげも無く音を立てて排湯されています。湧出量が豊富なんですね。もちろん掛け流しの湯使いです。お湯はごく薄い黄色透明、重曹泉的なほろ苦みを有し、ミシン油的な鉱物油の味と匂い、そして仄かなタマゴ味&臭が感じられます。ツルツルスベスベの浴感が非常に強く、また1分ほど全身浴していると体中のうぶ毛に気泡がビッシリと付着しますので、まるでローションの中に浸っているかのような錯覚に陥り、その素晴らしい浴感は夢心地そのものです。湯上りはサッパリ爽快、いつまでもお肌はさらさらし続けました。浴室に関してはつい辛口なことを書き綴ってしまいましたが、お湯は掛け値なしで本当に素晴らしく、もし私が近所に住んでいたら毎日通ってしまうこと必至です。


 
駐車場の一角には温泉スタンドも設置されているので、次回利用時にはタンクを持参しようかしら。


アルカリ性単純温泉 50.0℃ pH8.9 410L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質732.6mg/kg 成分総計746.7mg/kg
Na+:213.9mg(99.14mval%),
Cl-:78.4mg(24.92mval%), HCO3-:322.8mg(59.64mval%), CO3--:33.1g(12.40mval%),
H2SiO3:45.8mg, HBO2:30.5mg, CO2:14.1mg,

東北本線・矢吹駅より徒歩20分(約1.7km)
福島県西白河郡矢吹町八幡町442
0248-42-2615
紹介ページ(矢吹町公式HP内)

9:00~21:00 第4火曜および大晦日・元旦定休 
400円
ロッカー(100円リターン式)・石鹸・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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割烹温泉 観音湯

2013年01月15日 | 福島県
 
福島県矢吹町に点在する温泉施設のひとつ「割烹温泉 観音湯」で立ち寄り入浴してまいりました。割烹と名がつく温泉は拙ブログでも以前に島根県出雲市の「楯縫温泉 湯元楯縫 割烹温泉ゆらり」を取り上げていますが、当然ながらそちらと今回の施設は無関係であります(たぶん…)。その名の通り割烹料理をいただきつつ温泉で寛ぐというコンセプトの施設のようですが、宿泊も入浴のみの利用も可能ですから、赤貧生活の私は入浴のみで利用させていただくことにしました。



車寄せもあるほど立派なエントランスなのに、意外と受付がかなり控えめで、私が訪問したときは係員の方がその場にいなかったため、チャイムを押してスタッフを呼び出し料金を支払いました。


 
受付前から奥へ進んで浴室へ向かう途中、窓から眺める中庭の紅葉がとっても綺麗でした。廊下には個室がたくさんならんでいますが、おそらくこれらのお部屋で料理をいただくのでしょうね。そんな廊下を右へ左へと曲がりながら案内に従って奥へと歩き、芳香剤の匂いが強い女性トイレの前を通り過ぎて浴室へ。


 
明るくて綺麗な脱衣室は手入れがよく行き届いており、ちょっと高級な旅館みたい。4台並んでいる洗面台には櫛や綿棒などベーシックなアメニティもひと通り揃っています。


 
浴室の左側にはシャワー付混合水栓が6基並び、右手は手前からサウナ、水風呂、主浴槽の順で各設備が配置されています。どの温浴施設でも同じですが、こちらでもサウナは集客力があり、この時の利用客のほとんどはサウナに入って玉のような汗をかいていました。


 
窓に面して石板貼りの主浴槽が設置されています。石のカエルが頬杖つきながら横になっている傍らからお湯が落されているのですが、お湯は温度調整のために加水されているらしく、吐出口のお湯に直接触ると、熱かったり冷たかったりと温度にムラがあったので、おそらく湯口にて加水が行われているものと思われます。この他の加温や循環消毒は行われていないらしく、湯船のお湯は窓下の溝へ次々に溢れて排湯されていました。湯加減はちょうどよいのですが、槽内ではジェットバスやジャグジーが稼働しており、これを気持ち良いと捉えるか騒々しいと判断するかは好みが分かれるところかもしれません。



露天の浴槽は2つあり、手前側は木の縁で大きなサイズ、奥はこぢんまりした石材の浴槽で、手前側は屋根掛けされていて天気を気にせず入浴できる一方、奥の石材のお風呂は日本庭園で囲まれており、入浴中はその景色の中に自分が紛れ込んでいるかのような雅やかな気分に浸れます。
女湯との仕切りの塀には長い腰掛が設置されており、またウッドデッキにはチェアーも置かれているので、それらに座ってクールダウンするサウナ利用客もいらっしゃいました。


 
手前側の大きな浴槽は10人なら余裕で同時入浴できそうなほど広いもので、檜材で縁取られており槽内は石板貼りです。また槽内のステップ部分が大きめに作られています。しっかりと屋根掛けされているので雨の日でも大丈夫。露天周囲の床はスノコ状となっており、おそらく水捌けの良さと木材ならではの温かみのある見た目を兼ね備えたかったのでしょうが、このスノコ床が結構滑りやすいので、通路となる部分には滑り止めとして人工芝が敷かれていました。
加水されている内湯と異なり、露天は完全かけ流しの湯使いなんだそうでして、確かに木組みの湯口から出てくるお湯は熱いのですが、湯船の表面積の広さのためか加水しなくとも程よい加減に冷めてくれるので、薄められていないお湯を適温で楽しむことができました。なお湯船を満たしたお湯は湯口と反対側の縁に刳り貫かれた穴から排湯されており、床にはオーバーフローしない構造になっていました。


  
奥の浴槽には屋根掛けされていませんが、当然ながら開放感はこちらの方が遥かに勝っていますし、周囲には美しい日本庭園が施されており、この日は雨粒を滴らせるしっとりとした紅葉がとっても綺麗で、その場にいるとあたかも自分が風景画の世界に同化しているかのようでした。石板貼りの浴槽は3~4人サイズといったところでしょうね。


 
手前側の大きな露天同様、こちらも完全かけ流しですが、温度調整のためか投入量はやや絞り気味でした。浴槽のサイズが小さいため、加水しないで源泉をそのままどんどん注いじゃうと、熱くて入れなくなっちゃいますもんね。備え付けの温度計は42℃を指していました。

さてさて肝心のお湯についてですが、大雑把に表現すれば矢吹町周辺でよく見られるタイプの重曹泉型のアルカリ性単純泉でして、見た目は薄い黄色の透明であり、口に含むとホップのような爽やかなほろ苦みとアルカリ性単純泉にありがちな収斂感、そして鉱物油的な味と微タマゴ味が感じられ、ミシン油のような鉱物油臭とその裏でひっそりと自己主張する弱いタマゴ臭が鼻から抜けていきます。
ツルツルスベスベ感がとても強く、何度も自分の肌をさすりたくなるほどの爽快感が得られるので、ちょうど良い湯加減とこの爽快な浴感のために、湯船から出ようにも出られなくなるほど、すっかりお湯の魅力にハマってしまいました。アルカリ性・重曹泉型・炭酸イオンというファクターがこの心地よさをもたらしているのかもしれませんね(なお気泡の付着は見られず。薄暗かったので自分の目で確認できなかっただけかも…)。

近くの新菊島温泉に似たような温泉ですが、泡付きやツルスベ感こそ新菊島の方が勝っているものの、温度はこちらの方が高いですし、何より使い勝手が良くて清潔ですので、お湯や設備に対する満足感は遥かにこちらの方が勝っています。700円という料金設定は界隈ではちょっと高めですが、それでも平日の夕方で常時5~6人の客が浴室を利用していましたから、高い料金に見合った価値があると地元の方も評価なさっているのでしょう。もし同じ設備と同じお湯の施設が東京近郊にあったら、1000円以上の料金が設定され、しかも大混雑になるでしょうね。充分満足できる温泉でした。


観音湯温泉
アルカリ性単純温泉 56.9℃ pH9.4 596L/min(動力揚湯) 溶存物質0.5269g/kg 成分総計0.5269g/kg
Na+:143.0mg(99.04mval%),
Cl-:45.1mg(18.49mval%), HCO3-:229.5g(54.73mval%), CO3--:33.8mg(16.45mval%),
H2SiO3:47.8mg,
内湯:源泉の温度が高いために加水
露天:加水加温循環ろ過なし

福島県西白河郡矢吹町南町182-7  地図
0248-42-2418

9:00~22:00
700円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★



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不動湯温泉 後編(羽衣の湯・露天風呂)

2013年01月14日 | 福島県
「不動湯温泉 前編(アプローチ・常磐の湯)」の続きです。
※当記事は2012年当時の様子をレポートしたものです。現状とは異なります。2019年4月に再訪した際のレポートはこちらです。

●羽衣の湯
 

「常磐の湯」の前から屋外に出て、屋根掛けされた回廊のような長い階段をひたすら下りてゆきます。途中には足腰が弱い方に配慮して休憩用の腰掛けが設けられていますが、確かにお年寄りにとっては辛いかもしれません。



足腰がそれほど衰えていないはずの私も下りている途中でバランスを崩しそうになったのですが、それもそのはず、途中で振り返ってみると、ステップは傾いでおり、柱や梁も随所で撓んでいました。また側面の板が朽ちて地面も露出しており、全体的にかなり草臥れているようでした。でもこれが却って深い味わいを醸し出しているんですよね。


 
階段を下りきったところには木板の古い分析表が掲示されていますが、ペンキが一部剥がれていて判読が難しい状態でした。いや、目を凝らせば読めそうですが、よく見てみますと、剥がれている箇所にも文字が隠れていますので、元々の分析表の上を白いペンキで塗りつぶして改めてデータを記し直し、その後上塗りしたペンキが剥がれて下地になっていた元々の文字まで現れてしまったのでしょう。



正面が露天、右は「御婦人風呂」(女性専用の内湯)、そして左が「羽衣の湯」。露天は後ほど利用するとして、ここはひとまず左の「羽衣の湯」へ。


 
「羽衣の湯」の脱衣室は総木造で「常磐の湯」の2~3倍はあろうかと思われる広さですが、シンプルであることには変わらず、棚にカゴが8つ収められているだけです。まさに湯治宿の風情そのもの。


 
浴室は床がスノコ敷き、壁は羽目板で、谷へ開けている方向はガラス窓で眺望を確保しています。
一方山側の壁は、天井に近い部分は同じく板張りですが、その下はモルタル、更に腰壁には岩組みとなっています。天井真上には湯気抜きがあるのですが、天井付近の側壁にも通気のための穴が開けられており、そこには網など外部から侵入するものを遮断するものが設けられていないため虫の侵入を拒むことができませんが、外気も常に入ってくるため半露天風呂のような雰囲気もちょっぴり味わえました。「常磐の湯」と同様シャワーなどはありませんから、備え付けのケロリン桶で湯船のお湯を直接汲んで掛け湯することになります。



室内の隅には清水を湛える水受けがあり、その周りは美しく苔むしていました。


 
総檜の湯船は大小に2分割されており、手前側の小浴槽は1~2人サイズで浅い造り、奥の大きな方は3~4人サイズで一般的な湯船の深さです。槽内側面の穴および側面岩組みの出っ張りから源泉が注ぎ込まれており、そのお湯は無色透明無味無臭の単純泉で、癖が無く滑らかなで優しい感触を有しています。「常盤の湯」や後述する露天風呂より高温ですが、それでも41~2℃程度ですからのぼせるような温度ではありません。もちろん完全かけ流しです。
浴室の戸には「湯舟の中の沈殿物は温泉成分の湯花です」と記されているように、大小双方の湯船の底にはこげ茶色の泥みたいな粒子状のものが沈殿しており、浴槽の上から覗き込むだけでもわかるほど大量に沈んでいるのですが、体を湯船に沈めてお湯が動くとその沈殿が一気に攪拌されて、全身が沈殿物まみれになってしまいました。これって本当に湯の華? 泥だったらどうしましょ…。


●露天風呂
 
「羽衣の湯」の前でツッカケに履き替えて屋外に出て、沢が流れる谷へ向かって階段を下りてゆきます。沢のせせらぎが耳にはっきりと入ってくる頃、視界の下方に露天の湯船が見えてきました。ちなみに春になるとこの階段の周りにはカタクリの可憐な花が咲くんだとか。


 
露天風呂は小さな沢が滝のように落ちている所の傍らに設けられていました。脱衣小屋は棚と籠があるだけで至って簡素です。


 
岩の崖を穿って造られたような露天風呂は2人も入ればいっぱいになっちゃいそうな小さなもので、他の浴室と同様にカランもシャワーもありませんから、備え付けのケロリン桶で掛け湯します。訪問時は湯面に落ち葉がたくさん浮いていたので、傍に置かれていた網で掬ってから入浴させてもらいました。


 
湯口は湯面下にあり、入浴中はその勢いが体に伝わってきます。お湯は薄っすらと青白く濁っており、湯中には白い綿屑のような湯の華が沢山浮遊しています。泉質としては硫黄泉なんだそうでして、タマゴ感と砂消しゴム感をたして2で割ったような味と匂いが感じられ、更には石膏っぽい甘味も有しているようでした。湯使いは完全かけ流しで湯温は40℃くらいでややぬるく、夏場ですととっても爽快かと想像されますが、山が冬の装いを纏いはじめていたこの日は湯あがりにちょっと寒さをおぼえてしまいました。
目の前を沢が流れ周囲を原生林に抱かれるとってもワイルドな環境ですが、細い谷の間にひっそりと佇む露天風呂なので、開放感や豪快といった趣向とは逆ベクトルの、谷に隠れて人知れず密かに湧く秘湯と表現すべきロケーションですね。


●「御婦人風呂」

女性専用の内風呂「御婦人風呂」は、文字通り女性限定のお風呂ですが、どなたもいらっしゃらなかったので、ちょこっと見学させていただきました。2つの混浴内湯とは異なり、総木造ながらこちらはとっても綺麗です。改修されたばかりなのでしょうね。脱衣室にはちゃんとドライヤーも用意されていました。


 
沢に面して大きなガラス窓が嵌められている浴室には四角い木の浴槽が据えられ、無色透明のお湯が絶え間なく注がれていました。



シャワー付混合水栓が2基も設置されているのも、他の浴室とは違う点ですね。デリケートな方が多い女性のお客さんも、他の内湯の利用にちょっと躊躇いを感じたとしても、こちらのお風呂でしたら気持ちよく利用できますね。


福島県福島市土湯温泉町字大笹  地図
024-595-2002
ホームページ

冬季休業(2013年は1月6日~3月末まで休業)
日帰り入浴10:00~15:00
※2016年から日帰り入浴施設として再出発しました。営業時間10:00~17:00、土・日・祝のみ営業。ただし冬季は休業。営業期間などについては公式サイトをご覧ください。
500円
シャンプー類は内湯にあり、ドライヤーは「御婦人風呂」にあり、他備品類なし

私の好み:★★
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不動湯温泉 前編(アプローチ・常磐の湯)

2013年01月13日 | 福島県
※2016年から日帰り入浴施設にリニューアルしました。本記事はリニューアル以前(2012年)の様子をレポートしたものです。2019年4月に再訪した際のレポートはこちらです。


 
鄙びた温泉が好きな方からの評価が高い土湯温泉の「不動湯温泉」で日帰り入浴してまいりました。土湯には何度も訪れていますが、不動湯は週末になると混む、という噂を耳にしてから恐れをなして訪問機会を逸しており、先日ようやく平日に時間を取ることができたので、これを機に行って見ることにしたのです。
土湯の温泉街から細い坂道を上がっていきます。はじめの2kmは離合箇所こそ少ないものの舗装路面ですし、しかも温泉街から離れれば離れるほど道幅が広くなってゆくので、対向車さえ来なければ普通に走れますが、後半2kmは本格的な林道でして、ダート区間もあれば泥んこなままの路面もあり、しかも急な坂道もあったりして、私のFF車で大丈夫なのだろうかと不安に苛まれ、ハンドルを握る掌は汗でビッショリになってしまいました。


 
林道のどん詰まりの駐車場に車を止め、ゲートを潜ってアプローチを歩くこと約1分。


 
「不動湯温泉」に到着です。時が止まったような渋い佇まいもさることながら、険しい林道のおかげで、温泉街から大して離れていないのにとんでもない秘境にやってきたような感覚です。
玄関脇に据えられている清水が滴り落ちるつくばいではラムネが冷やされていました。訪問したのは山肌が薄っすらと白くなり始めた初冬の某日、こんな冷え込んでいる日に冷たいラムネを飲む客なんているのかしら、と小首を傾げたくなりましたが、いやいや、風呂あがりに飲んだらさぞかし美味いんでしょう。


 
玄関に入ってすぐ左の棚にはご当地らしくこけしがたくさん陳列されています。また引き戸の枠には、飲食店営業の古い札がかかっていました。旧字体で書かれているので、相当古いのでしょうね。


不動湯温泉には3つの内湯「常磐の湯」「羽衣の湯」「御婦人風呂」と1つの露天風呂があり、「御婦人風呂」を除けば全て混浴なのですが、日帰り入浴がスタートする10:00丁度に訪問したためか、各浴室において私一人で独り占めすることができました。内容がちょっと長くなりそうなので、記事を2分割させていただき、前編となる今回は「常磐の湯」を取り上げます。


●常磐の湯
 
帳場から一番近いお風呂が「常磐の湯」。引き戸を開け、薄手のグリーンカーペットが敷かれたステップを下りて脱衣室へ。浴室の名前が揮毫された扁額こそかかってるものの、室内はとってもシンプルでくくりつけの棚に籠が収められているばかりです。でもこの質素な佇まいこそ秘湯らしい風情と言えるのかもしれません。


 
質素な浴室には窓に面して扇形を歪ませたような形状で2~3人サイズの浴槽がひとつ据えられているだけ。渋いお風呂なのでシャワーなどの現代的な設備はありませんが、ボディーソープやシャンプーは用意されていました。浴室の床は元々赤茶けていたようですが、最近その上にグレーのペンキが塗られ、塗装が薄い箇所では下地の赤茶色が透けて見えています。



砂利が敷き詰められた水受けには清冽な清水が注がれていました。



お湯は一見すると無色透明ですが、ぼんやりと白く霞がかっているようにも見えます。湯中では薄い白色の膜がちぎれたような浮遊物が沢山舞っており、これが霞の正体ではないかと推測されますが、湯船に体を沈めるとこの膜状の浮遊物が一気に舞い上がって湯船が浮遊物にまみれ、人によっては不快に感じてしまうかもしれません。室内はお湯から放たれた赤錆の匂いが漂い、そのお湯を口に含んでみると少々の土気味と収斂を伴う赤錆味が感じられます。詳しい分析表は見当たりませんでしたが、館内の案内によれば泉質は単純炭酸鉄泉とのこと。


 
木板の蓋い塩ビのパイプが突っ込まれており、蓋を開けてみると内部が真っ赤に染まった湯壺が姿を現しました。お湯の金気で赤く染まったのでしょうね。パイプから湯壺に落とされたお湯は浴槽内部の側面から湯船へ注がれています。湧出量が少ないのかお湯の流量はそれほど多くなく、一度私が全身浴したら湯船の嵩が減ってしまってなかなか元の嵩まで戻りませんでした。また私個人の体感で40℃に満たないと思われるようなぬるさなので、ゆっくりじっくり浸かって温まらないと、冬は湯上りに寒くて身震いしちゃうかもしれません。でも今回は独り占めできたので、他のお客さんを気にすること無く肩までお湯に沈めてゆっくり浸かり、この幽玄なお風呂で時間を忘れて瞑想に耽けました。



ちなみに浴室入口前には缶ビールの自販機と並んで、福島県民のソウルドリンク「酪王カフェオレ」「酪王牛乳」のベンダーが設置されていました。しかも瓶ですよ。もちろん私は腰に手を当てながらこの瓶のコーヒー牛乳を一気飲みしました。「酪王カフェオレ」は何度飲んでも美味いなぁ。どうでも良いことですが、このベンダーは上部を紙で隠されているものも、元々は雪印のものでしょうね。

次回は「羽衣の湯」「露天風呂」です。

後編に続く。
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土湯温泉 サンスカイつちゆ こけし湯

2013年01月12日 | 福島県
※残念ながら2019年3月末を以て閉館しました。


土湯温泉は狭い谷あいに旅館が犇めき合っているため、ちょっと立ち寄りで入浴しようと思っても駐車場のスペースがなかなか確保できずに難渋することがしばしばですが、温泉街から離れた山中に位置する「サンスカイつちゆ」は広い駐車場が利用でき、かつ掛け流しのお湯が安い料金で楽しめるため、私は土湯峠を通過する際にこれまで何度かお世話になっています。こちらは福島県観光開発という第三セクターによって運営されている会議室や研修室などを擁するハコモノでして、その施設のひとつとして温泉浴室「こけし湯」が一般へ開放されているわけです。



玄関でスリッパに履き替え、券売機で料金を支払い、常設なのに臨時カウンターのような印象を受ける簡素な受付台にて券を差し出します。玄関ホールには土湯の名物「こけし」が展示されていますが、その様子は工芸品を陳列というよりホリマリン漬けの標本を並べているようであり、施設全体としても病院や学校にも似たような、いかにも公営らしい無機質で実用本位な雰囲気ですから、ここだけで捉えちゃうと「温泉もハズレなんじゃねぇの?」という疑念を抱いてしまうのですが、まぁまぁ早計な判断は措いておき、ここはとにかく先に進みましょう。


 
カップラーメンやお菓子類が販売されている受付をまわりこみ、暖簾を潜った先でスリッパを脱ぎ、別棟になっている浴室へと向かいます。貴重品は浴室入口前にたくさん並んでいるロッカーへ。



無味乾燥としたロビーまわりと異なり、浴室はぬくもりのあるウッディな雰囲気。室内には棚の他に洗面台が1台設置されています。でも棚は小さいためにほとんどのお客さんは備え付けのカゴに衣類や荷物を入れ、床や棚の上に置きっぱなしにしています。なおドライヤーは受付に申し出れば貸し出してくれます。


 
お風呂は内湯のみ。浴室に入った途端、ふんわりとした優しい硫黄臭に包まれます。ログハウスのような造りで天井は高く、むきだしの梁には立派な材木が用いられています。また窓からは梢越しに温泉街を見下ろせます。床はグレー単色の鉄平石のような石材敷きです。浴槽も本格的な総木造で、温かみのある外観と優しい肌触りが温泉風情を盛り上げてくれます。膝を曲げれば5人、伸ばせば3人サイズといったところでしょうか。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでいます。シャンプーやソープ類の備え付けはないので、利用の際は事前に用意を。


 
温泉街や混合源泉を供給する中継槽からここまではちょっと離れていますが、そんな隔たりをものともせず、湯口からは触れないほどアツアツの混合源泉が注がれており、そのままではさすがに入浴に不適であるため、水道のホースが湯口まで伸ばされ、水と一緒に浴槽へ落とされていました。加水されているものの温度計の針は47℃を指しており、入浴客はみな茹でダコのように全身を真っ赤にしていました。湯使いは加水こそあるものの加温循環消毒は無い放流式の湯使いであり、浴槽の縁から絶え間なくお湯がオーバーフローしています。



土湯温泉では多くの施設で混合源泉が用いられており、この風呂でも同様です。土湯のお湯は蒸気造成泉に湧出泉をブレンドさせた上で配湯しており、造成泉のボリュームが大きいために、硫黄感を伴うけれどもあっさりとしたいかにも造成泉らしい特徴を呈しています。具体的には無色澄明で湯中には消しゴムのカスのような白い湯の華がたくさん浮遊あるいは沈殿しており、火山の噴気孔から出るガスのような刺激を伴う硫化水素感と砂消しゴム感と足して2で割ったような硫黄の味と匂いが感じられます。造成泉の単純泉ですから浴感に特筆すべき個性はありませんが、熱いながらも肌への当たりはやさしく、湯上りはサラサラサッパリです。造成泉は邪道だと仰る温泉ファンも少なからずいらっしゃいますが、私個人としては、体への当たりがマイルドなのにしっかりと硫黄等の知覚を有している造成泉は意外と好みだったりします。

最近では11月下旬の平日昼間に利用させていただきましたが、そんな時間帯にもかかわらず、利用者は多く、常時3~4人、最大で7人が湯浴みしていました。半数以上はお風呂道具を詰め込んだバスケットを持参していましたから常連さんも多いのでしょうね。


2号泉・15号泉・新1号井・16号泉の混合
単純温泉 60.4℃ pH7.2 溶存物質412.8mg/kg 成分総計421.2mg/kg
Na+:73.8mg, Ca++:13.2mg,
Cl-:55.3mg, SO4--:95.4mg, HCO3-:51.9mg,
H2SiO3:88.5mg,
(cf. S2O3--:0.0mg, HS-:0.0mg, H2S:0.0mg)
新1号井:単純温泉 69.5℃ pH7.6 800L/min(掘削時造湯量・自然湧出・200m掘削・中継槽まで約1800m)
2号泉:硫黄泉 70.2℃ pH8.7 448L/min(掘削時造湯量・自然湧出・100m掘削・中継槽まで約1700m)
15号泉:単純温泉 43℃ pH7.3 200L/min(現状・動力揚湯・3m掘削・中継槽まで約1700m)
16号泉:硫黄泉 63℃ pH6.5 380L/min(掘削時造湯量・自然湧出・113m掘削・中継槽まで約2000m)


福島駅東口7番ポールより福島交通バスの土湯温泉行で「土湯温泉入口」下車、徒歩10分(0.7km)
福島県福島市土湯温泉町字赤坂7-6  地図
024-595-2612
ホームページ

※残念ながら2019年3月末を以て閉館しました。
9:00~20:00(受付19:30まで) 年末年始休業
250円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤー受付貸し出し、シャンプー類は販売

私の好み:★★★
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