矢吹町の役場近くにある「あゆり温泉」はお湯のクオリティが私好みなので、本来ならば近くへ立ち寄った度に利用したいのですが、どういうわけかこの界隈を訪れるときは夕方か日没後が多く、夕方以降の「あゆり温泉」はいつも混雑しているため、行きたいなぁと思いつつもついつい及び腰になっておりました。でも毎度毎度及び腰では何時まで経っても再訪できないため、先日考え方を改め、久しぶりに利用してみることにしました。
暗い画像じゃ外観がちっともわかりませんよね。ハードディスクの中を漁っていたら4年前に撮った画像が見つかったので、ついでに載せておきます。全然意識していませんでしたがこの施設って「矢吹町老人福祉センター」という名称だったんですね。
エントランスの前には「300万人突破」の記念看板が誇らしげに立てられていました。町民に愛される憩いの湯って良いじゃないですか。玄関を入ってすぐ目の前の受付に立っているおじさんに500円玉を差し出すと、10回捺すと1回無料になるご利用カードと一緒にお釣りの100円が戻され、「この100円はロッカーで使うからね」と笑顔で教えてくれました。受付の周りには田舎のお風呂らしく食品の類がたくさん販売されていました。
受付から右手に進むと浴室です。脱衣室の壁際にはロッカーがズラリとたくさん並んでいますが、受付のおじさんが教えてくれた通りにその全てが100円リターン式となっています。いかにも公営施設らしい無機質な室内ですが、洗面台は4基、そしてドライヤーは2台用意されており、使い勝手はまずまずです。
なおロッカーの上の見つけにくいところに「入湯税として1人1日100円(日帰りの場合に限る)を納入していただきます」という案内が掲示されていました。余談ですが、入湯税は市町村税ですからその金額をいくらにするかは各自治体の条例に依るわけでして、温泉や鉱泉の宿泊施設に泊まる客に対してはどこの自治体でも標準税率である150円が課税されますが、日帰り利用に関しては自治体により金額に差があり、この矢吹町の場合は100円ですが、アットランダムにピックアップしてみますと、たとえば首都圏からの観光客を呼び込みたい栃木県那須町や神奈川県箱根町は50円ですし、鳴子温泉を擁する宮城県大崎市は70円、川湯温泉の北海道弟子屈町は90円、岐阜県高山市や青森県大鰐町など日帰りと宿泊客で区別がない市町村は150円と、下と上では3倍近い開きがあるんですね。尤も条例で入湯税が定められている自治体でもきちっと徴収されているかといえばかなり曖昧なんですが…。
浴室は湯気が濃く篭っており、5メートル先も目視できないほど視界不良だったので、こんな画像しか撮れていません。ごめんなさい。
室内は天井が高くて床も広々しており、もしここが青森県だったらトドが大量発生しちゃうかも。側面には白いタイルが、床には薄いエメラルドグリーン系の色を帯びた石板タイルが貼られているのですが、広いばかりでこれといった捉え処が無く、いかにもお役所が好みそうな無難な内装と言えるかもしれません。
洗い場には混合水栓が11基設置されており、うち1基にはシャワーが付いていません。シャンプーやボディーソープの備え付けはありませんが、固形石鹸なら各水栓に用意されていました。
浴槽もプールみたいに大きなもので、入浴中は思わず両手を掻いて平泳ぎしたくなっちゃうほどです。この浴槽と洗い場の床との間には段差があり、浴槽の方がかなり低い位置に設けられているため、この日のように曇って視界不良だったり初めてで浴槽周りの状況があまりわからない場合は、その段差に気づかず足を踏み外してしまうかもしれません。浴槽にはちゃんと安全に入るための手摺付きステップが設置されていますから、横着していきなり浴槽に入ろうとせず、このステップを使った方が良いかと思います。
浴室は大きな窓に面しているのですが、その窓は市販のサッシを上下2段に並べたもので、窓の総面積の割りにはサッシの窓枠が邪魔しているのであまり開放感はありません。また一部のガラスには目隠しフィルムが貼ってあるので余計に開放感が失われているように思われます。とはいえ開放感がどうたらこうたらと戯言を垂れるのは偶に利用する私のような外来客ぐらいなもので、常連客の皆さんは窓際に確保された広いスペースに腰を掛け、窓の外なんて関心を払わず、その場でグッタリとしながらクールダウンなさっていました。
お湯は岩組みの上から滝のように浴槽へ落とされています。館内表示によれば温度調整のために加水されているそうですが、そのお湯を直接触ってみると体感で50℃近くあり、分析表に記された湧出温度も50.0℃ですから、加水量はかなり少ないのではないかと想像されます。なお湯使いは加水された上での放流式で、加温循環消毒は行われていないようでした。また脱衣室内の張り紙によれば、以前は浴槽のお湯を洗い場の方へオーバーフローされていたそうですが、保健所の指導により現在は窓下の溝へ溢れさせて排湯させています。
こちらの施設は2010年の夏に改修工事が実施されたそうでして、露天風呂は前回に利用した時とはかなり様子が異なっており、以前は日本庭園風だったように記憶しているのですが、改修後の現在は全体的に小奇麗ですっきりとした雰囲気に生まれ変わっていました。露天エリアの隅っこに設けられたモミジなどの植え込みが、以前の和風な雰囲気を残しているようでした。
浴槽は石板貼りの長方形で比較的大きな造り。頭上には真新しいステンレスの骨組みが立てられており、その半分にはテントが張られているので、この日はザーザー降りの雨だったのですが、テントのおかげで雨粒を気にせず露天で入浴出来ました。
湯面下にある源泉投入口から熱めのお湯が湯船へ吐出されており、浴槽縁の切り欠けから惜しげも無く音を立てて排湯されています。湧出量が豊富なんですね。もちろん掛け流しの湯使いです。お湯はごく薄い黄色透明、重曹泉的なほろ苦みを有し、ミシン油的な鉱物油の味と匂い、そして仄かなタマゴ味&臭が感じられます。ツルツルスベスベの浴感が非常に強く、また1分ほど全身浴していると体中のうぶ毛に気泡がビッシリと付着しますので、まるでローションの中に浸っているかのような錯覚に陥り、その素晴らしい浴感は夢心地そのものです。湯上りはサッパリ爽快、いつまでもお肌はさらさらし続けました。浴室に関してはつい辛口なことを書き綴ってしまいましたが、お湯は掛け値なしで本当に素晴らしく、もし私が近所に住んでいたら毎日通ってしまうこと必至です。
駐車場の一角には温泉スタンドも設置されているので、次回利用時にはタンクを持参しようかしら。
アルカリ性単純温泉 50.0℃ pH8.9 410L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質732.6mg/kg 成分総計746.7mg/kg
Na+:213.9mg(99.14mval%),
Cl-:78.4mg(24.92mval%), HCO3-:322.8mg(59.64mval%), CO3--:33.1g(12.40mval%),
H2SiO3:45.8mg, HBO2:30.5mg, CO2:14.1mg,
東北本線・矢吹駅より徒歩20分(約1.7km)
福島県西白河郡矢吹町八幡町442
0248-42-2615
紹介ページ(矢吹町公式HP内)
9:00~21:00 第4火曜および大晦日・元旦定休
400円
ロッカー(100円リターン式)・石鹸・ドライヤーあり
私の好み:★★★