温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

キュタフヤ県 ウルジャス温泉公衆浴場(ウルジャ・ハマム)

2015年02月11日 | トルコ
 
ウルジャス温泉にはいくつかの入浴施設があるのですが、今回は誰でも気軽に利用できる男女別の大きな公衆浴場「ウルジャ・ハマム(Ilıca Hamami)」を取り上げます。レジャー施設「アクアパルク」に隣接しており、大変わかりやすいロケーションで、当地へ訪れたら誰でも必ずこの建物を目にするはずです。正面向かって右が女湯、左が男湯の入口というように分かれており、男湯側には何故かゲーセンによくあるパンチングマシンが置かれていました。


 
館内に入ってすぐの玄関ホールに設けられている番台には、大変驚かされました。と言うのも、男女双方の中間に番台が配置されていること、その番台では石鹸やシャンプーなどのお風呂道具が陳列販売されていることなど、雰囲気が日本の銭湯と非常に良く似ているのです。敢えて相違点を挙げれば、壁に売り物の浮き輪がぶら下がっていることでしょうか。この番台を目にした刹那は、自分がトルコの地にいることを忘れそうになりました。
アジアの東端に位置する日本と、同じく西端に位置するトルコ。アジアの端っこ同士である両国は、ともに豊富な温泉資源を有し、入浴をこよなく愛する文化を持っているわけですが、人々とお風呂を仲介する風呂屋の番台にも共通したスタイルが見られるという点は実に興味深く、人種が違っていても宗教が異なっていても、人間が浴場で受付を設けようとすると、とどのつまりは同じようなスタイルに落ち着くのかもしれないと、日本から何千キロも離れたトルコの地で、ひとり勝手に文化人類学を理解したような気分に耽けたのでした。

番台のおじさんは私が日本人だと知ると、「トルコと日本はベストフレンド」だと口にしながら、笑顔で対応してくれました。まず貴重品を番台の鍵付きボックス(エマネット)に預け、鍵を受け取ってから浴室へと向かいます。なおこの浴場において料金は後払いでした。


 
番台の前にはマッサージチェアが置かれていました。こんなところも日本の銭湯みたい。


 
番台から奥へ進んだところで、靴からサンダルに履き替えます。


 
浴場手前のホールには、荷物置き場代わりのベンチ等が用意されている他、試着室のような小さな更衣スペースも設けられています。またこのホールに面して洗い場のみの個室なども並んでいますから、そこで着替えることも可能です。ホール内には冷蔵庫を備えた湯沸かし室があり、湯上がりに紅茶もいただいたり、冷たいソフトドリンクで喉を潤すこともできます。


 
お風呂ではなく温泉プールと表現した方が相応しい大きな浴室。トルコのハマムでは建材として大理石を用いることが多いようですが、こちらでは主にタイルが採用されていました。キュタフヤは焼き物の産地ですから、大理石ではなくタイルが選ばれたのかもしれません。
その大きくて広い浴室の中央でお湯を湛える主浴槽は、寸法が目測で6m×10m、深さは約150cmと結構深い造りです。無色透明でクリアに澄んだお湯は、体感で41~2℃という日本人向きの湯加減です。この主浴槽を挟む形で、長い浴室の左右には洗い場が10箇所ずつシンメトリに配置されており、各洗い場には水とお湯の水栓が取り付けられています。なお、画像には写っていませんが、一番奥には深さ60cmほどの小さな浴槽もあり、お年寄りはそこで湯浴みなさっていました。
平日の昼間だというのに、老若を問わず利用客が多く、ざっと見ただけでも10数人の客が、お湯に浮かんだり、泳いだり、あるいは三助さんに垢すりをしてもらったり、常連同士が談笑したりと、思い思いのスタイルで寛いでいらっしゃいました。この温泉が地元の方から愛されていることが窺えます。



温泉プールにお湯を供給しているのは、青森県の百沢温泉グループを彷彿とさせるアヒル口の湯口で、体感で50℃以上はありそうな、しっかりと熱い温泉がドバドバ大量に吐出されていました。前回記事で取り上げたように、当地で湧出する温泉は、明瞭な褐色を呈する立派な石灰ドームや石灰棚などを作り出していますので、この浴場でお目にかかれるお湯も、さぞかし重炭酸土類泉のような金気と土気の多い濁り湯かと思い込んでいたのですが、豈図らんや、アヒル口から出ているお湯は無色透明であり、しかも味や匂いもほとんど感じられず、まるで単純泉のような実にアッサリとしたタイプだったのです。あの大迫力の石灰棚を生み出した源泉とは全く異なる泉質の別源泉があるのか、お湯をしっかり濾過しているのか、はたまた私が目にしているのは温泉ではなく単なる沸かし湯なのか…。

親切に接してくださった番台のおじさんに伺えば、その辺りの事情が掴めたはずですが、英語もろくに話せない私がトルコ語なんてわかるはずもなく、お湯に関する謎を解決することのないまま、喉の奥に小骨が刺さったような心境で、今こうしてこの記事の原稿を書いております。しかしながら、湯上がりに私に話しかけてくれた湯浴み客のおじさんは、羽織っていたバスローブの前をはだけ、自分の胸を指さしながら、この温泉のおかげで体が良くなったんだと(ジェスチャーと片言の英語を織り交ぜながら)説明してくれましたので、おそらくこの無色透明で癖のないお湯も、けだし天然の温泉なんだろうと信じております。


GPS座標:N38.940383, E29.258021,


8:00~24:00
5リラ
貴重品は番台預かり、ドライヤーあり、番台にてお風呂道具販売あり(貸タオルおよび貸水着はいずれも1.5リラ)

私の好み:★+0.5
コメント
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