今回ご紹介するトルコ・バルケシル県のヒサララン(Hisaralan)温泉は、専門的な学術論文はよくわかりませんが、少なくとも物見遊山レベルでは、おそらくこのブログが初めて取り上げる日本語サイトではないかと思われます(もし誤っていたらゴメンナサイ)。私がこの温泉の存在を知ったのは、トルコ温泉めぐりの計画を立てていたときのこと。せっかくレンタカーで自由に行動できるのですから、基本的なルートからあまり逸れない場所で、どこか面白そうな温泉地はないものかと、経由地である"Balıkesir"(バルケシル)、そして温泉を意味する"kaplıca"というワードで検索していたところ、シマーヴからバルケシルへ向かうルートの至近に、立派な石灰華を擁する温泉地があるらしいことを発見しました。情報はトルコ語のものばかりで、詳しくはわからなかったのですが、実際に現地へ行けば温泉に関係する何かと出会えるに違いないと確信し、シマーヴのエイナル温泉で一夜を明かした次の日、その場所へと向かったのでした。
●ヒサララン集落・集落付近の源泉地帯
シマーヴからD240号線という道を西進し、景色の良いワインディングロードを快走しながら峠を越え、キュタフヤ県からバルケシル県へと入ります。県境から40kmほど走ると、路傍に上画像のような観光ポイントを示す茶色地・白抜き文字の標識を発見。Hisaralanと記されていますので、それを確認の上、ここを右折します。道路は一応舗装されているものの、あちこちに穴ぼこがあいているので、それを避けながら進んでゆくと…
曲がり角から約1kmほどで、小さな集落にたどり着きました。どうやらここが温泉名にもなっているヒサララン(Hisaralan)という場所のようです。谷状の地形に沿って農家と思しき民家がまばらに建ち、5~6軒の鄙びた温泉民宿が点在しています。曲がり角から上がって来ると、同じような形の窓とドアをいくつも連ねる小部屋群が目につくのですが、集落の人に尋ねたところ、これはかつて温泉の個室風呂として使われていたものなんだそうです。残念ながら現在では使われておらず、廃墟となっていました。
ちょっと小高いところから集落の中心部を俯瞰してみました。画像の中央に写っているカラシ色の3階建ては"Şafak Otel"、小豆色の6階建ては"Çetin Otel"という温泉民宿です。後ほど小豆色の"Çetin Otel"で実際に入浴したのですが、それについては次回記事でご紹介します。
私が集落に車を停めると、"Şafak Otel"のオーナーであるお爺さんが私に声をかけてきました。観光ガイドブックには決して載らないこんな僻地へ、背の低い極東人が車に乗って一人でやってきたのですから、相当珍しかったに違いありません。お爺さんは当地の温泉資源がいかに豊富であるかを紹介すべく、源泉地帯へと案内してくださいました。集落には上画像のようなコンクリ製のお湯汲み場がいくつか設けられており、いずれにも直には触れないほど熱い温泉が貯められていました。
集落のまわりには農業用ビニルハウスがいくつも建てられているのですが、ここでは温泉熱を利用した蔬菜栽培が行われており、お爺さんによれば今はトマトやキュウリを作っているのことでした。
ビニルハウス等の集落各施設へ温泉を供給する集湯槽や中継枡が、丘の斜面に点在しています。供給が需要を上回っているらしく、コンクリの槽からは温泉がドバドバ捨てられていました。
お爺さんの後につきながら段々畑のあぜ道を歩いてゆくと、地面の広範囲から湯気を上げている源泉地帯へとたどり着きました。パムッカレほど大規模ではありませんが、テニスコート一面分はありそうな源泉地帯は、純白な石灰によって覆われており、リムストーンが形成されて棚田状になっています。そして硫化水素臭も感じられます。辺りにはこのような源泉地帯がいくつもあるので、他の源泉も間近で見てみたかったのですが、このまわりは熱湯の湿地になっており、ぬかるみにハマると全身火傷をするから、これ以上先へ進んではいけないよとお爺さんに制止されてしまいました。たしかに立ち昇る湯気から伝わる熱気がものすごく、尋常ではない熱さであることは間違い無さそうです。
お爺さんが足元の安全を確かめてくれた場所に立ちながら、目の前でフツフツと音を立てて湧出する温泉の温度を測ってみたら、なんと95.5℃と表示されたではありませんか。沸騰している熱湯が一帯で湿地をつくっているのですから、もしお爺さんの注意に耳を傾けず、勝手に辺りを歩いてぬかるみを踏み抜いたら、それこそ全身火傷どころか、命の保証もありませんね。こんなアツアツのお湯の大部分は、使われずに捨てられているんですから、実に勿体無いことです。
●地熱井と丘の上の源泉地帯
熱湯が噴き上がる源泉地帯を見学している時、私は丘の上に巨大な石灰華ドームがあるのを発見していました。事前にこのヒサララン温泉をネットで調べているときにも、トルコ語表記の各サイトでは、当地を代表するランドスケープとしてその石灰華が紹介していましたので、私としては是非間近にそれを見てみたかったのですが、直線距離で近づこうとすると熱湯の泥沼に行く手を遮られてしまい、別の場所から迂回を試みたものの上の方へ伸びる道が見当たらず、丘の斜面に広がる枯れ藪が邪魔をするので、斜面を強行突破することもできません。諦めかけながら"Şafak Otel"のお爺さんと共に一旦集落まで戻ると、今度は"Çetin Otel"のご主人が私の心情を察し、現場近くまで道案内をしてくれると仰ってくれました。トルコの皆さんって、どうしてこんなにも親切なんでしょう。宿からもその石灰華は見えるのですが、道の関係で現場までは遠回りする必要があるらしいので、このオーナーさんを助手席に乗っていただき、車で向かうことにしました。オーナーさんのナビに従い、集落から更に坂道を上がってゆきます。
地形の関係で坂道は一旦石灰華から離れますが、その後左折してゆくうちに、高度を上げつつ大きく迂回しながら先程の丘の上へと戻っていきました。やがて左(上)画像の民家が現れるのですが、手前の角から左へ細いダートが伸びていますので、左折してその小径へと入っていきます。デコボコ道を400メートルほど進むと視界が開けて、広場のある行き止まりとなるのですが、その真ん中には1軒の作業小屋が建てられていました。
小屋の横では黒くて太い配管が地面から立ち上がっており、辺りにシューシューと勢い良く音を響かせています。言わずもがなこの施設は地熱井であり、太い配管で麓の集落に地熱を送っているのでしょう。ちょうど私が訪れた時には、管理人のおじさんがいらっしゃり、小屋の様子をカメラに収めていると、こちらに向かって笑顔で手を振ってくれました。日本でしたらこの手の施設は立入禁止ですが、当地では規制が一切無いのですから、実に長閑です。
地熱井は丘の上に位置しており、目下のヒサララン集落をはじめとして、遥か彼方までなだらかな丘陵がいくつも伍する気持ち良い景色を一望することができました。そして集落まで下る丘の斜面では、所々から白い湯気が上がっていました。
丘の上からは、さきほど車で登ってきた道路の周りも眺められるのですが、その周辺に広がる段々畑の一帯からも、白い湯気があちこちから上がっていました。このエリアは地熱資源が相当豊富なのかもしれません。
管理人のおじさん曰く、石灰華ドームは丘の中腹にあるとのことですから、地熱井がある丘の上から斜面を下ってゆくことにしました。斜面にはあちこちで温泉が湧出しており、その中の一つへ温度計を差し込んだところ、90.2℃と表示されました。もしこの源泉に鶏卵を入れたら、数分で温泉卵が出来上がりますね。
熱湯を湧出させている源泉は数えきれないほどあり、あちこちからフツフツとお湯の湧く音が聞こえ、白い湯気を朦々と立てています。そしてそこから流れ出た温泉によって、地面はお湯の湿地になっていました。ぬかるみにはまって火傷しないよう、足元に気をつけながら、この地熱の丘の散策を続けます。
各源泉にはコンクリで簡単な囲いが作られており、湧き出たお湯がだらしなく地面へ漏れることを防いでいました。このおかげで私は源泉群の丘を無事に歩くことができたのかもしれません。
丘には源泉の他、所々に大きな筍のような奇岩が点在していました。石灰華を形成する当地の温泉と何かしら関係があるのでしょうか。また晩秋でほとんどの草が枯れているというのに、奇岩のまわりだけ妙に青々としているのも、温泉がもたらす温かさと関連性があるのかもしれませんね。
そんな奇岩の脇を、熱いお湯が勢い良く流れています。これだけ自噴する温泉が目の前で流れているのですから、野湯好きな私としては、是非ここでも野湯を嗜みたいところですが、お湯は細い流れをつくって斜面を一気に流れ落ちてしまうので湯溜まりが無い上、温度が非常に高く、加水できるような水も無いため、ここでは野湯をたのしむことができませんでした。残念…。
●石灰華ドーム
丘の中腹まで下ると、お目当ての石灰華ドームとご対面。
近づいてみました。結構な迫力じゃありませんか。高さは7~8mといったところ。パムッカレの一部を切り出して移設したかのような姿ですが、ちゃんとこの地で生まれたものです。
上部で湯気が立ち昇っていることからもわかるように、石灰と炭酸を沢山含む温泉が湧出し、崖状の地形を流れ落ちることによって、この白く巨大なトラバーチンが形成されたものと想像されます。もし他の国でしたら観光名勝として成り立つほど立派なものですが、このヒサラランはちっとも観光地化されておらず、既に述べた通り、地元の方に道を尋ねなければトラバーチンへ行き着くことすらできません。パムッカレという世界的な巨大トラバーチンを擁するトルコですと、この程度じゃ話にならないのかもしれませんね。
まわりにはフェンスが立てられ、安全のためにお湯の流れも変えられているため、私の訪問時、トラバーチンの表面にお湯は流れておらず、乾燥がかなり進んでいました。でも自噴する温泉が生み出したこの白亜の自然造形美は、観光客を呼び寄せるに十分な迫力と稀有な魅力を有しており、豊富な地熱利用の開発と共に、静かな環境と素晴らしい眺望を組み合わせることよって、観光地として大きく化ける可能性を秘めているように思われます。
●温泉リゾート
集落には5~6軒の温泉民宿があると述べましたが、シマーヴとバルケシルを結ぶD240号線沿いには、この温泉を引いた規模の大きなリゾート宿泊施設"Obam Termal Resort & Spa"があり、ホームページを見ると大変立派で綺麗な各種設備を擁しているらしく、大手宿泊予約サイトにおける口コミ評価もまずまずのようですから、田舎の民宿はちょっと苦手という方は、こちらを利用するもの宜しいかと思います。
"Obam Termal Resort & Spa"のホームページには、青い湖畔にホテル棟が立地する美しい画像が載っていますし、地図で確認してもここには東西に細長い湖が水を湛えているはずなのですが、私の訪問時には湖の水位がかなり下がって、辛うじて水溜りが残る程度で、ほとんど干上がりかけていました。これって時季的な問題なのでしょうか、はたまた恒常的に水位が低いのでしょうか…。湖水を眺めながら宿泊できたら、最高なんですけどね…。
石灰華ドームのGPS座標:N39.271831, E28.317971,
次回記事では、ヒサララン温泉の鄙びた温泉民宿で日帰り入浴した時のことをご紹介します。
●ヒサララン集落・集落付近の源泉地帯
シマーヴからD240号線という道を西進し、景色の良いワインディングロードを快走しながら峠を越え、キュタフヤ県からバルケシル県へと入ります。県境から40kmほど走ると、路傍に上画像のような観光ポイントを示す茶色地・白抜き文字の標識を発見。Hisaralanと記されていますので、それを確認の上、ここを右折します。道路は一応舗装されているものの、あちこちに穴ぼこがあいているので、それを避けながら進んでゆくと…
曲がり角から約1kmほどで、小さな集落にたどり着きました。どうやらここが温泉名にもなっているヒサララン(Hisaralan)という場所のようです。谷状の地形に沿って農家と思しき民家がまばらに建ち、5~6軒の鄙びた温泉民宿が点在しています。曲がり角から上がって来ると、同じような形の窓とドアをいくつも連ねる小部屋群が目につくのですが、集落の人に尋ねたところ、これはかつて温泉の個室風呂として使われていたものなんだそうです。残念ながら現在では使われておらず、廃墟となっていました。
ちょっと小高いところから集落の中心部を俯瞰してみました。画像の中央に写っているカラシ色の3階建ては"Şafak Otel"、小豆色の6階建ては"Çetin Otel"という温泉民宿です。後ほど小豆色の"Çetin Otel"で実際に入浴したのですが、それについては次回記事でご紹介します。
私が集落に車を停めると、"Şafak Otel"のオーナーであるお爺さんが私に声をかけてきました。観光ガイドブックには決して載らないこんな僻地へ、背の低い極東人が車に乗って一人でやってきたのですから、相当珍しかったに違いありません。お爺さんは当地の温泉資源がいかに豊富であるかを紹介すべく、源泉地帯へと案内してくださいました。集落には上画像のようなコンクリ製のお湯汲み場がいくつか設けられており、いずれにも直には触れないほど熱い温泉が貯められていました。
集落のまわりには農業用ビニルハウスがいくつも建てられているのですが、ここでは温泉熱を利用した蔬菜栽培が行われており、お爺さんによれば今はトマトやキュウリを作っているのことでした。
ビニルハウス等の集落各施設へ温泉を供給する集湯槽や中継枡が、丘の斜面に点在しています。供給が需要を上回っているらしく、コンクリの槽からは温泉がドバドバ捨てられていました。
お爺さんの後につきながら段々畑のあぜ道を歩いてゆくと、地面の広範囲から湯気を上げている源泉地帯へとたどり着きました。パムッカレほど大規模ではありませんが、テニスコート一面分はありそうな源泉地帯は、純白な石灰によって覆われており、リムストーンが形成されて棚田状になっています。そして硫化水素臭も感じられます。辺りにはこのような源泉地帯がいくつもあるので、他の源泉も間近で見てみたかったのですが、このまわりは熱湯の湿地になっており、ぬかるみにハマると全身火傷をするから、これ以上先へ進んではいけないよとお爺さんに制止されてしまいました。たしかに立ち昇る湯気から伝わる熱気がものすごく、尋常ではない熱さであることは間違い無さそうです。
お爺さんが足元の安全を確かめてくれた場所に立ちながら、目の前でフツフツと音を立てて湧出する温泉の温度を測ってみたら、なんと95.5℃と表示されたではありませんか。沸騰している熱湯が一帯で湿地をつくっているのですから、もしお爺さんの注意に耳を傾けず、勝手に辺りを歩いてぬかるみを踏み抜いたら、それこそ全身火傷どころか、命の保証もありませんね。こんなアツアツのお湯の大部分は、使われずに捨てられているんですから、実に勿体無いことです。
●地熱井と丘の上の源泉地帯
熱湯が噴き上がる源泉地帯を見学している時、私は丘の上に巨大な石灰華ドームがあるのを発見していました。事前にこのヒサララン温泉をネットで調べているときにも、トルコ語表記の各サイトでは、当地を代表するランドスケープとしてその石灰華が紹介していましたので、私としては是非間近にそれを見てみたかったのですが、直線距離で近づこうとすると熱湯の泥沼に行く手を遮られてしまい、別の場所から迂回を試みたものの上の方へ伸びる道が見当たらず、丘の斜面に広がる枯れ藪が邪魔をするので、斜面を強行突破することもできません。諦めかけながら"Şafak Otel"のお爺さんと共に一旦集落まで戻ると、今度は"Çetin Otel"のご主人が私の心情を察し、現場近くまで道案内をしてくれると仰ってくれました。トルコの皆さんって、どうしてこんなにも親切なんでしょう。宿からもその石灰華は見えるのですが、道の関係で現場までは遠回りする必要があるらしいので、このオーナーさんを助手席に乗っていただき、車で向かうことにしました。オーナーさんのナビに従い、集落から更に坂道を上がってゆきます。
地形の関係で坂道は一旦石灰華から離れますが、その後左折してゆくうちに、高度を上げつつ大きく迂回しながら先程の丘の上へと戻っていきました。やがて左(上)画像の民家が現れるのですが、手前の角から左へ細いダートが伸びていますので、左折してその小径へと入っていきます。デコボコ道を400メートルほど進むと視界が開けて、広場のある行き止まりとなるのですが、その真ん中には1軒の作業小屋が建てられていました。
小屋の横では黒くて太い配管が地面から立ち上がっており、辺りにシューシューと勢い良く音を響かせています。言わずもがなこの施設は地熱井であり、太い配管で麓の集落に地熱を送っているのでしょう。ちょうど私が訪れた時には、管理人のおじさんがいらっしゃり、小屋の様子をカメラに収めていると、こちらに向かって笑顔で手を振ってくれました。日本でしたらこの手の施設は立入禁止ですが、当地では規制が一切無いのですから、実に長閑です。
地熱井は丘の上に位置しており、目下のヒサララン集落をはじめとして、遥か彼方までなだらかな丘陵がいくつも伍する気持ち良い景色を一望することができました。そして集落まで下る丘の斜面では、所々から白い湯気が上がっていました。
丘の上からは、さきほど車で登ってきた道路の周りも眺められるのですが、その周辺に広がる段々畑の一帯からも、白い湯気があちこちから上がっていました。このエリアは地熱資源が相当豊富なのかもしれません。
管理人のおじさん曰く、石灰華ドームは丘の中腹にあるとのことですから、地熱井がある丘の上から斜面を下ってゆくことにしました。斜面にはあちこちで温泉が湧出しており、その中の一つへ温度計を差し込んだところ、90.2℃と表示されました。もしこの源泉に鶏卵を入れたら、数分で温泉卵が出来上がりますね。
熱湯を湧出させている源泉は数えきれないほどあり、あちこちからフツフツとお湯の湧く音が聞こえ、白い湯気を朦々と立てています。そしてそこから流れ出た温泉によって、地面はお湯の湿地になっていました。ぬかるみにはまって火傷しないよう、足元に気をつけながら、この地熱の丘の散策を続けます。
各源泉にはコンクリで簡単な囲いが作られており、湧き出たお湯がだらしなく地面へ漏れることを防いでいました。このおかげで私は源泉群の丘を無事に歩くことができたのかもしれません。
丘には源泉の他、所々に大きな筍のような奇岩が点在していました。石灰華を形成する当地の温泉と何かしら関係があるのでしょうか。また晩秋でほとんどの草が枯れているというのに、奇岩のまわりだけ妙に青々としているのも、温泉がもたらす温かさと関連性があるのかもしれませんね。
そんな奇岩の脇を、熱いお湯が勢い良く流れています。これだけ自噴する温泉が目の前で流れているのですから、野湯好きな私としては、是非ここでも野湯を嗜みたいところですが、お湯は細い流れをつくって斜面を一気に流れ落ちてしまうので湯溜まりが無い上、温度が非常に高く、加水できるような水も無いため、ここでは野湯をたのしむことができませんでした。残念…。
●石灰華ドーム
丘の中腹まで下ると、お目当ての石灰華ドームとご対面。
近づいてみました。結構な迫力じゃありませんか。高さは7~8mといったところ。パムッカレの一部を切り出して移設したかのような姿ですが、ちゃんとこの地で生まれたものです。
上部で湯気が立ち昇っていることからもわかるように、石灰と炭酸を沢山含む温泉が湧出し、崖状の地形を流れ落ちることによって、この白く巨大なトラバーチンが形成されたものと想像されます。もし他の国でしたら観光名勝として成り立つほど立派なものですが、このヒサラランはちっとも観光地化されておらず、既に述べた通り、地元の方に道を尋ねなければトラバーチンへ行き着くことすらできません。パムッカレという世界的な巨大トラバーチンを擁するトルコですと、この程度じゃ話にならないのかもしれませんね。
まわりにはフェンスが立てられ、安全のためにお湯の流れも変えられているため、私の訪問時、トラバーチンの表面にお湯は流れておらず、乾燥がかなり進んでいました。でも自噴する温泉が生み出したこの白亜の自然造形美は、観光客を呼び寄せるに十分な迫力と稀有な魅力を有しており、豊富な地熱利用の開発と共に、静かな環境と素晴らしい眺望を組み合わせることよって、観光地として大きく化ける可能性を秘めているように思われます。
●温泉リゾート
集落には5~6軒の温泉民宿があると述べましたが、シマーヴとバルケシルを結ぶD240号線沿いには、この温泉を引いた規模の大きなリゾート宿泊施設"Obam Termal Resort & Spa"があり、ホームページを見ると大変立派で綺麗な各種設備を擁しているらしく、大手宿泊予約サイトにおける口コミ評価もまずまずのようですから、田舎の民宿はちょっと苦手という方は、こちらを利用するもの宜しいかと思います。
"Obam Termal Resort & Spa"のホームページには、青い湖畔にホテル棟が立地する美しい画像が載っていますし、地図で確認してもここには東西に細長い湖が水を湛えているはずなのですが、私の訪問時には湖の水位がかなり下がって、辛うじて水溜りが残る程度で、ほとんど干上がりかけていました。これって時季的な問題なのでしょうか、はたまた恒常的に水位が低いのでしょうか…。湖水を眺めながら宿泊できたら、最高なんですけどね…。
石灰華ドームのGPS座標:N39.271831, E28.317971,
次回記事では、ヒサララン温泉の鄙びた温泉民宿で日帰り入浴した時のことをご紹介します。