前回記事の続編です。
迷うこと無くムラトダーウ(Muratdağı)へ辿り着けたのは大いに結構なのですが、私がわざわざここへやってきたのは温泉に入浴するためですから、温泉に入れなければ意味がありません。温泉浴場はどこにあるのか、辺りを見回してみますと…
広場の東側に下り坂のスロープがあり、そこには"HAMAMLAR"(トルコ式浴場)と記された看板が立っていました。これこそ、私が探していた文字です。
(料金表の画像はクリックで拡大)
スロープの下には、左(上)画像の左側に写っている受付と思しき小屋があるのですが、小屋のまわりには誰もいません。小屋の窓ガラスには料金表が掲示されていたので、そこに記されている項目を上からスマホを使って翻訳していったのですが、宿泊棟やテント場の料金ばかりで、お風呂に関しては浴室の男女別曜日割だけが記されているのみ。入浴料については一切書かれていません。浴場の裏手で建物の修繕をしている方がいらっしゃったので「お風呂に入りたいので料金を支払いたい」という旨をジェスチャーまじりで伝えたところ、料金はいらないよとの答えが返ってきました。あれ? 無料で入浴できるの?
浴場は2棟あり、曜日によって男女を入れ替えています。一見すると民家のような手前側の湯屋は"KOCA HAMAM"という名称で、私が訪れた日は女湯となっていました。
その奥に隣接する、まるでプラネタリウムのような白いドーム天井を戴く立派な造りの浴場は"HACHTHANE"といい、この日はこちらに"ERKEKLERE"(男湯)の札が下がっていました。
しっかりした造りの湯屋ですので、館内に係員が常駐しているのかと思いきや、中に入るとガランとしたホールがあるばかりで、人の気配が全く感じられません。どうやら無人公衆浴場のようです。
ホールの壁際にはベンチが並び、その上の長押には服を引っ掛けるフックが取り付けられています。ロッカーのような備品はないので、ベンチが荷物置き場の代わりです。なお壁には男女の曜日割が掲示されていました。
ホールと浴室を結ぶ短い通路の右側にはトイレが、左側にはシャワーが、それぞれ2室ずつ並んでいます。ホールにはパーテーション的なものがないので、水着に着替える際はこれらの個室を使うと良いでしょう。と言っても、誰も居ないのを幸いに、私はホールで着替えちゃいましたけどね。
なおシャワーからは温泉のお湯が落とされ、その吐出口は成分の付着によって赤茶色に染まっていました。
浴室は柱や浴槽など多くの部位が大理石によって造られており、大きな円形の浴槽に沿って並び立つ幾本もの大理石の柱を目の前にすると、ここが温泉であることを忘れ、まるで神殿に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥ります。山腹の秘湯らしからぬ、荘厳な佇まいです。
トルコの一般的なハマムと同様、浴室の壁際には洗い場が計10箇所並んでおり、各水栓には石造りの鉢が置かれています。水栓を開けて出てくるのはごく普通の水です(お湯ではありません)。このお風呂でちょっと不便なのは、桶が備え付けられていないこと。つまり手ぶらでは掛け湯ができません。そんなこともあろうかと、私は柔らかい樹脂製の折りたためるバケツを持参していましたので事なきを得ましたが、もしこちらへ訪問なさる場合は、手桶代わりになるようなグッズをご持参なさった方が良いかもしれません。
印象的な外観をもたらす白い大きなドームは、ちょうど浴槽の真上に位置しています。てっぺんをはじめとして、球体の至る所に小さな穴が開けられており、湯気抜きと明かり取りを兼ねて機能しているようです。天井を見上げると、日中なのにまるで星座が輝いているみたい。湯気が立ち込める浴室内に、これらの穴から陽光が射し込んでおり、穴の小ささによって光量が絞られることにより、光が柔らかくなるとともに、室内の明るさも程々に抑えられ、落ち着きのある室内環境が生み出されていました。
浴室に入って右側には長方形の小さな槽があり、槽内は濃い赤茶色に染まっています。お湯の吐出口で温度を測ると41.5℃でした。槽内は色が染まっていますが、お湯自体は無色透明で、見た目から想像できるように金気の味と匂いが明瞭に感じられる他、石膏的な甘味などの土類感、そして弱い炭酸味が伝わってきました。宮城県遠刈田温泉のようなタイプのお湯です。
この小さな槽は掛け湯専用なのかと勝手に思い込んでいたのですが、浴室に後からやってきたお爺さんは、しっかり体を洗った後、大きな真円の主浴槽ではなく、この長方形の槽に入って、幸せそうな微笑みを浮かべていました。きっと熱いお風呂が好みなのでしょうね。ちょうど2人入れる大きさがあるので、そのお爺さんに誘われて私も一緒にここで湯浴みさせていただいたところ、その程よい熱さのおかげで、あたかも日本の温泉に浸かっているような気持ち良さが味わえました。
総大理石造りで真円形の主浴槽は、直径5~6m、深さは130~140cmほど。小さな槽を赤茶色に染めるお湯も、この大きな槽内では暗めの翠色を帯びて弱く濁っています。小さな槽の下にお湯の供給口があり、その反対側の側面からザブザブ音を立ててお湯が溢れ出ています。お湯が溢れ出るところは、湯溜まり同様に赤茶色に染まっていました。湯口の位置から推測するに、この主浴槽は小さな槽からお湯を受けているように思われたのですが、よく見ますと小槽のお湯は全量が側溝に流出しており、主浴槽は小槽とは別個にお湯を引いているようです。そして、浴槽より溢れ出る量から察するに、お湯の供給量は相当多いようです。言わずもがな、完全掛け流しです。
上述のように遠刈田温泉に似たお湯でしたので、この大理石のお風呂をみちのくの湯に見立て、日本の温泉のように頭にタオルを載せて入浴してみました。湯船のお湯は39.5℃という、微睡みを誘う長湯仕様です。重炭酸土類泉のような泉質ですから、湯船の中ではギシギシと引っかかる浴感があり、40℃程度の湯加減でありながら、お湯の持つパワーは本格派で、ゆっくり浸かれることもあって、体の芯まで実によく温まりました。
浴場の佇まいも秀逸ならば、泉質も出色。美しい景色と清らかな環境に抱かれた、実に素晴らしい秘湯でした。わざわざここまで来て正解でした。おすすめ。
GPS座標:N38.955926, E29.621573,
"KOYA HAMAM"(手前側の民家のような湯屋)のスケジュール(通年)
月曜:女湯
火曜:男湯
水曜:女湯
木曜:男湯
金曜:女湯
土曜:男湯
日曜:女湯
"HACHTHANE"(ドーム天井を戴く奥の湯屋)のスケジュール(通年)
月曜:男湯
火曜:女湯
水曜:男湯
木曜:女湯
金曜:男湯
土曜:女湯
日曜:男湯
開場時間不明
利用料金不明(無料?)
備品類なし(サンダルしかありません)
私の好み:★★★
迷うこと無くムラトダーウ(Muratdağı)へ辿り着けたのは大いに結構なのですが、私がわざわざここへやってきたのは温泉に入浴するためですから、温泉に入れなければ意味がありません。温泉浴場はどこにあるのか、辺りを見回してみますと…
広場の東側に下り坂のスロープがあり、そこには"HAMAMLAR"(トルコ式浴場)と記された看板が立っていました。これこそ、私が探していた文字です。
(料金表の画像はクリックで拡大)
スロープの下には、左(上)画像の左側に写っている受付と思しき小屋があるのですが、小屋のまわりには誰もいません。小屋の窓ガラスには料金表が掲示されていたので、そこに記されている項目を上からスマホを使って翻訳していったのですが、宿泊棟やテント場の料金ばかりで、お風呂に関しては浴室の男女別曜日割だけが記されているのみ。入浴料については一切書かれていません。浴場の裏手で建物の修繕をしている方がいらっしゃったので「お風呂に入りたいので料金を支払いたい」という旨をジェスチャーまじりで伝えたところ、料金はいらないよとの答えが返ってきました。あれ? 無料で入浴できるの?
浴場は2棟あり、曜日によって男女を入れ替えています。一見すると民家のような手前側の湯屋は"KOCA HAMAM"という名称で、私が訪れた日は女湯となっていました。
その奥に隣接する、まるでプラネタリウムのような白いドーム天井を戴く立派な造りの浴場は"HACHTHANE"といい、この日はこちらに"ERKEKLERE"(男湯)の札が下がっていました。
しっかりした造りの湯屋ですので、館内に係員が常駐しているのかと思いきや、中に入るとガランとしたホールがあるばかりで、人の気配が全く感じられません。どうやら無人公衆浴場のようです。
ホールの壁際にはベンチが並び、その上の長押には服を引っ掛けるフックが取り付けられています。ロッカーのような備品はないので、ベンチが荷物置き場の代わりです。なお壁には男女の曜日割が掲示されていました。
ホールと浴室を結ぶ短い通路の右側にはトイレが、左側にはシャワーが、それぞれ2室ずつ並んでいます。ホールにはパーテーション的なものがないので、水着に着替える際はこれらの個室を使うと良いでしょう。と言っても、誰も居ないのを幸いに、私はホールで着替えちゃいましたけどね。
なおシャワーからは温泉のお湯が落とされ、その吐出口は成分の付着によって赤茶色に染まっていました。
浴室は柱や浴槽など多くの部位が大理石によって造られており、大きな円形の浴槽に沿って並び立つ幾本もの大理石の柱を目の前にすると、ここが温泉であることを忘れ、まるで神殿に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥ります。山腹の秘湯らしからぬ、荘厳な佇まいです。
トルコの一般的なハマムと同様、浴室の壁際には洗い場が計10箇所並んでおり、各水栓には石造りの鉢が置かれています。水栓を開けて出てくるのはごく普通の水です(お湯ではありません)。このお風呂でちょっと不便なのは、桶が備え付けられていないこと。つまり手ぶらでは掛け湯ができません。そんなこともあろうかと、私は柔らかい樹脂製の折りたためるバケツを持参していましたので事なきを得ましたが、もしこちらへ訪問なさる場合は、手桶代わりになるようなグッズをご持参なさった方が良いかもしれません。
印象的な外観をもたらす白い大きなドームは、ちょうど浴槽の真上に位置しています。てっぺんをはじめとして、球体の至る所に小さな穴が開けられており、湯気抜きと明かり取りを兼ねて機能しているようです。天井を見上げると、日中なのにまるで星座が輝いているみたい。湯気が立ち込める浴室内に、これらの穴から陽光が射し込んでおり、穴の小ささによって光量が絞られることにより、光が柔らかくなるとともに、室内の明るさも程々に抑えられ、落ち着きのある室内環境が生み出されていました。
浴室に入って右側には長方形の小さな槽があり、槽内は濃い赤茶色に染まっています。お湯の吐出口で温度を測ると41.5℃でした。槽内は色が染まっていますが、お湯自体は無色透明で、見た目から想像できるように金気の味と匂いが明瞭に感じられる他、石膏的な甘味などの土類感、そして弱い炭酸味が伝わってきました。宮城県遠刈田温泉のようなタイプのお湯です。
この小さな槽は掛け湯専用なのかと勝手に思い込んでいたのですが、浴室に後からやってきたお爺さんは、しっかり体を洗った後、大きな真円の主浴槽ではなく、この長方形の槽に入って、幸せそうな微笑みを浮かべていました。きっと熱いお風呂が好みなのでしょうね。ちょうど2人入れる大きさがあるので、そのお爺さんに誘われて私も一緒にここで湯浴みさせていただいたところ、その程よい熱さのおかげで、あたかも日本の温泉に浸かっているような気持ち良さが味わえました。
総大理石造りで真円形の主浴槽は、直径5~6m、深さは130~140cmほど。小さな槽を赤茶色に染めるお湯も、この大きな槽内では暗めの翠色を帯びて弱く濁っています。小さな槽の下にお湯の供給口があり、その反対側の側面からザブザブ音を立ててお湯が溢れ出ています。お湯が溢れ出るところは、湯溜まり同様に赤茶色に染まっていました。湯口の位置から推測するに、この主浴槽は小さな槽からお湯を受けているように思われたのですが、よく見ますと小槽のお湯は全量が側溝に流出しており、主浴槽は小槽とは別個にお湯を引いているようです。そして、浴槽より溢れ出る量から察するに、お湯の供給量は相当多いようです。言わずもがな、完全掛け流しです。
上述のように遠刈田温泉に似たお湯でしたので、この大理石のお風呂をみちのくの湯に見立て、日本の温泉のように頭にタオルを載せて入浴してみました。湯船のお湯は39.5℃という、微睡みを誘う長湯仕様です。重炭酸土類泉のような泉質ですから、湯船の中ではギシギシと引っかかる浴感があり、40℃程度の湯加減でありながら、お湯の持つパワーは本格派で、ゆっくり浸かれることもあって、体の芯まで実によく温まりました。
浴場の佇まいも秀逸ならば、泉質も出色。美しい景色と清らかな環境に抱かれた、実に素晴らしい秘湯でした。わざわざここまで来て正解でした。おすすめ。
GPS座標:N38.955926, E29.621573,
"KOYA HAMAM"(手前側の民家のような湯屋)のスケジュール(通年)
月曜:女湯
火曜:男湯
水曜:女湯
木曜:男湯
金曜:女湯
土曜:男湯
日曜:女湯
"HACHTHANE"(ドーム天井を戴く奥の湯屋)のスケジュール(通年)
月曜:男湯
火曜:女湯
水曜:男湯
木曜:女湯
金曜:男湯
土曜:女湯
日曜:男湯
開場時間不明
利用料金不明(無料?)
備品類なし(サンダルしかありません)
私の好み:★★★