温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

松之山温泉 民宿みよしや

2015年08月14日 | 新潟県
 
前回記事の「十日町市高齢者憩の家」に続いては、松之山の温泉街に移動して、温泉街唯一の自炊可能な素泊り専門民宿「みよしや」で、立ち寄り入浴することにしました。小さくて鄙びている質素なお宿ですが、湯使いの良さには温泉ファンから定評があり、ネットで検索すると温泉巡りの先達の皆さんによるレポートがたくさん表示されますので、そうした尻馬に乗っかる形で私も訪れることにしました。


 
玄関で声をかけますと、まずはワンコが千切れんばかりにシッポを勢い良く振りながらご挨拶。それから数テンポ遅れてお宿のオーナーである老夫婦が対応してくださいました。玄関から奥へ伸びる廊下を進んだ突き当たりに大小の内湯が一室ずつあり、適宜男女を入れ替えているようですが、この時は手前側の大きな浴室に「男湯」の札がさがっていました。
脱衣室は木製のベンチと棚、そしてプラ籠が用意されているばかりで、洗面台は無く至って質素。


 
浴室はタイル貼りでほぼ全面タイル貼り。壁はサーモンピンクで床はチャコールグレーといった配色です。左手に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが2基並んでいました。


 

浴槽もタイル貼りで、おそらく4~5人サイズ。レンガ色の縁が槽内のコバルトブルーと鮮やかなコントラストを生み出しています。お宿の説明によれば「温泉は循環設備を使用しないかけ流しの湯です。(温度調整のため加水はしています。)」とのことで、たしかに槽内で循環装置の吸引口や吐出口らしきものは見当たりません。浴槽のお湯はオーバーフロー管を通じて排湯されており、床に突き出たその管のまわりは薄っすら黄色く染まっていました。
この日は運が悪いことに、配湯設備の具合が良くなかったらしく、私が訪れる直前にお湯が止められてしまい、カエルの湯口からはチョロチョロと滴っていただけでしたが、配湯停止からまだあまり時間は経っていなかったからか、お湯の鮮度感はまずまず。こちらに引かれているお湯は鷹の湯1・2・3号の混合泉で、大雑把に表現すればほぼ無色透明ですが、よく見ると灰緑色系の微濁を帯びており、湯中では黒くて微細な浮遊物が確認できました。湯面からは松之山温泉らしい刺激を伴うアブラ臭と、墨やお焦げを連想させるゴムような匂いが漂っている他、鹹味や苦味、口腔の粘膜に痺れをもたらす渋味が感じられます。また、食塩泉らしいツルスベ感と少々の引っ掛かりが混在しているようでした。
本来ならばお宿ご自慢の掛け流しのお湯を楽しめたはずなのですが、上述のようにこの日は配湯の具合が良くなかったため、入浴しているうちにお湯がどんどんぬるくなってしまい、結局30分でお風呂から上がってしまうはめに(こうなることを予め承知の上で入浴させていただきました)。もっとも、そのおかげで松之山温泉ならではの過度な火照りからは逃れられましたが、機会があれば改めて再訪し、お湯の良さを実感してみたいと思っています。


鷹の湯1号・2号・3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 85.5℃ pH7.5 掘削自噴 溶存物質14978mg/kg 成分総計14979mg/kg
Na+:3500mg(60mval%), NH4+:31mg, Ca++:1900mg(38mval%),
Cl-:8900mg(99mval%), Br-:25mg, I-:10mg,
H2SiO3:110mg, HBO2:250mg,

北越急行・まつだい駅より東頸バスの松之山温泉行で終点下車
新潟県十日町市松之山湯本19-1  地図
025-596-2017
ホームページ

日帰り入浴10:00~15:00
500円
シャンプー類あり

私の好み:★★
コメント (3)
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松之山温泉 十日町市高齢者憩いの家

2015年08月12日 | 新潟県
毎日逃れようのない厳しい残さが続いておりますが、せめてブログの画像だけでも猛暑から離れて一服の涼を得ていただくべく、今回からも引き続き半年前の冬に訪れた新潟県中越地方の温泉を取り上げてまいります。前回記事まで連続して掲載していた栃尾又温泉「自在館」を出発した後は、車を西へ走らせて国道253号の八箇峠を越え、現在は十日町市に含まれている日本三大薬湯のひとつ松之山温泉を目指しました。


 
雪の絶壁に挟まれた道路を走行です。幸いにしてこの日は天気に恵まれ、路面の雪も溶けていたため、八箇峠越えも松之山までの上り勾配も、スイスイと快走することができました。


 
まず初めに訪れたのは、天水越集落にある「十日町市高齢者憩いの家」です。その施設名からもわかるように老人福祉を目的とした公共施設であり、平成26年1月にオープンしたばかりなのですが、こちらには外来者でも利用できる温泉浴場が併設されており、しかも湯使いも良いらしいので、是非訪れてみたかったのでした。
県道80号を走って温泉街の入口を過ぎ、スキー場の手前にある集落の十字路を右に曲がって路地を数十メートル進むと、駐在所の近くでいかにも豪雪地らしい大きな屋根の建物が目に入ってきました。


 

戸を開けて中へ入りますと、玄関右側にあるお座敷からは婆様たちの賑やかな声が聞こえてきました。どうやら貸切でランチ会が催されている様子。受付で入浴したい旨を告げますと、おばあちゃんが快く対応してくださり、入館料の領収書をもいでくれた上で、お風呂の前まで案内してくださいました。お風呂は男女別内湯が1室ずつです。
なおこの施設は1階がお座敷と温泉浴場ですが、2階は65歳以上の高齢者向け冬期共同住宅となっており、外来者の立ち入りはできません。


 
まだオープンして1年ほどしか経っていないので、脱衣室内には新しさが漲っており、どこもかしこもピッカピカです。設置されている棚の一部には風呂場鍵が取り付けられていますので、旅行者でも安心して利用できますね。



浴室出入口の戸を開けた瞬間、室内から松之山温泉ならではの刺激を伴うアブラ臭が香ってきました。内装は実用的な造りで装飾性に欠けていますが、脱衣室と同様に新しさがまだ随所に残っており、天井が高くて湯気の篭りも少なく、気持ち良く利用することができました。なお窓には雪囲いがなされているため、外の景色は見えませんでした。


 
洗い場にはシャワー付きカランが4基一列に並んでいる他、ちょっと離れた位置には立って使うシャワーも1台取り付けられていました。ボディーソープ等の備え付けが利用できるのはありがたいところです。


 
浴槽は目測で3m×2.5mほど。縁は御影石で槽内はタイル貼りです。館内表示によれば、温度調整のために加水しているとのことで、壁に取り付けられた温度計には42.7℃と表示されていました。なお浴槽にはジェットバスと思しき給気用および噴き出し用の穴が設けられていましたが、稼働はしていませんでした。


 
浴槽隅の角っこに設けられた湯口からは、熱いお湯がやや絞り気味に投入されていました。浴槽のお湯は縁から溢れ出ることなく、オーバーフロー管を通じて壁下の側溝へと流下しており、この側溝と接している縁だけ木材が採用されていました。

こちらに引かれているお湯は鷹の湯3号源泉で、ほぼ無色透明ですが、わずかに灰色と翠色を帯びた懸濁を呈しています。加水されているものの、加温循環消毒の無い放流式の湯使いとなっており、松之山温泉らしい個性がしっかりと感じられます。具体的には、ヨードチンキを連想させるような刺激のあるアブラ臭、強い塩辛さと苦味、そして口腔の粘膜が痺れる渋みが確認できました。食塩泉らしいツルスベ浴感の中にトロミも含まれており、味や匂いだけでなく、浴感からもお湯の濃さを実感できました。ただし、濃い食塩泉ですから長湯は禁物。ごく普通に湯浴みしただけですが、厳冬期だというのにパワフルに火照って汗が止まらず、湯上がり後は脱衣室の扇風機を回して、クールダウンに努めました。さすが松之山温泉のお湯は凄いですね。
松之山ではお湯を循環させている施設が多いようですが、そんな中にあって、こちらは(加水されているものの)放流式ですから、温泉ファンにとっては利用する価値が十分にあるかと思います(料金設定はちょっと高めですけどね)。


鷹の湯3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 97.5℃ pH7.7 200L/min(掘削自噴) 溶存物質16095mg/kg 成分総計16095mg/kg
Na+:3700mg(60mval%), NH4+:28mg, Ca++:2100mg(37mval%),
Cl-:9500mg(99mval%), Br-:28mg, I-:7.3mg, SO4--:78mg,
H2SiO3:170mg, HBO2:270mg,
加水あり(温度調整のため)

新潟県十日町市松之山天水越774  地図

4月1日~11月30日→9:30~17:00, 12月1日~3月31日→10:00~15:00, 月曜および年末年始定休
500円
ロッカー(少数)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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栃尾又温泉 自在館 その5(うけづの湯)

2015年08月10日 | 新潟県
前回記事の続きです。
今月に入ってから栃尾又温泉「自在館」のお風呂に関して連続して取り上げてまいりましたが、ようやく今回の記事でおしまい。貸切の露天風呂「うけづの湯」に連載のラストを飾っていただきましょう。


 
前回記事で取り上げた貸切内湯「うさぎの湯」や「たぬきの湯」と同じくエレベータで地下1階へ下りるのですが、エレベータから出た後はすぐに右へ折れ、廊下を進んでゆくと、その突き当たりに「うけづの湯」の出入り口がありました。引き戸の脇にぶら下がっている札を裏返して「入浴中」にし、いざ入室です。


 
 
民芸調の内装が施された脱衣室は広くて快適。洗面台も設置されており、使い勝手も良好です。内線電話も引かれていますので、万が一の時も安心ですね。棚の上には、籠の代わりに箕が用意されていました。


 
ゆとりのある脱衣室に反し、主役である露天風呂は意外にもコンパクト。建物の壁に沿って細長い岩風呂が設けられており、庇が伸びて全体を覆っているので、雪の日でも冷たい思いをせずに入浴可能です。この庇の先には簾が下げられており、材木や岩などと相俟って和の温泉風情を醸し出していました。なおスペース的な問題なのか、洗い場は設けられていませんので、露天の利用に際しては、事前に「うえの湯」や貸切の内風呂で汗や垢を流しておくべきかと思います。


 
コンパクトとはいえ、浴槽は2~3人同時に入れそうな容量を有していますので、カップルやご夫婦なら一緒に入ることもできそうです。ステップ部分や槽内は岩および石板敷きですが、長辺にあたる縁には丸太が渡されており、ここに頭を載せて入浴すると良い具合に湯に浸かることができました。
浴槽奥の配管から吐出されているお湯は、貸切内湯(「うさぎの湯」や「たぬきの湯」)と同じく、沢の対岸に源泉がある栃尾又自在館1号で、温度が低いために加温されており、私が利用した日のような寒い時期には循環も行っているんだそうです。それにしても、真冬の露天風呂で40℃以上をキープさせるのですから、燃料代は相当なものになるのだろうと察します。お湯は無色透明で無味無臭、癖がなく優しく軽やかな浴感でした。


 
浴場名の「うけづ」とは対岸の山の名前なんだとか。手の届くところに雪がたんまり積もっていましたので、その場で雪だるまを作って、浴槽の縁に飾ってみました。この温かくて優しいお湯に浸かっていれば、あたりを深く覆う冷たい雪までもが温もりあふれる景色に映ります。

多様なお風呂と安らぎをもたらす霊泉で宿泊客を楽しませてくれるこちらのお宿は、まさに湯治のテーマパーク。お風呂のみならず、客の痒いところに手が届く細かな配慮も実に素晴らしく、滞在した一晩の間に、心をすっかり鷲づかみされていることに気づきました。


栃尾又自在館1号
単純弱放射能温泉 28.5℃ pH7.9 77L/min(自然湧出) 131×10^-10Ci/kg(35.9マッヘ) 溶存物質226.6mg/kg 成分総計227.1mg/kg
Na+:24.6mg(37.95mval%), Ca++:33.4mg(59.22mval%), Sr++:0.2mg,
Cl-:10.6mg(11.45mval%), SO4--:89.9mg(71.37mval%), HCO3-:25.9mg(16.03mval%),
H2SiO3:39.7mg,

新潟県魚沼市栃尾又温泉
025-795-2211
ホームページ

私の好み:★★★

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栃尾又温泉 自在館 その4(うさぎの湯・たぬきの湯)

2015年08月09日 | 新潟県
前回記事の続きです。

栃尾又温泉「自在館」には宿泊客専用貸切風呂が3室あり、2つは内湯、1つは露天風呂と多彩なラインナップ。前回および前々回記事で取り上げた2つの共同浴場を含め、5つのお風呂を楽しめちゃうんですね。連泊する場合でも、今日はこっちで明日はあっち、なんて感じでお風呂を変えれば、退屈せずに過ごせることでしょう。そんな多様な貸切風呂を1泊で全て回ってしまった私は、貧乏性丸出しで無粋極まりないのですが、そんな貪欲過多な湯めぐりの結果として利用できた内湯の貸切風呂「うさぎの湯」と「たぬきの湯」について、今回の記事で触れてまいります。



貸切風呂を利用する場合は、帳場前に貼り出されている台帳に、予め自分で、利用したい時間帯に名前を記載しておきます。なお利用可能時間は1組40分。早い者勝ちですが、明後日分まで予約可能ですから、連泊なさる方はさほど慌てることもないかと思います。予約の時間になったら、台帳の下に掛けられている鍵を手に取り、浴室へと向かいます(利用後は鍵をここへ戻します)。


●うさぎの湯
 
エレベータで地下1階へ下り、掲示に従って更に階段を下りると、その突き当たりに2つの貸切風呂の出入口が向かい合っていました。右が「うさぎの湯」で、左は「たぬきの湯」。この2つの浴室は男女別の内湯として開放される時間帯があり、その場合は「うさぎの湯」が女湯、「たぬきの湯」は男湯となるようです。ウサギとタヌキという組み合わせは「かちかち山」を連想させますね。「かちかち山」におけるウサギを若くて怜悧な女、タヌキを醜く間抜けなオジサンとして捉えたのは太宰治の『お伽草紙』ですが、このお風呂の男女区分は太宰の解釈に倣っているのかもしれません。通常、男女別内湯として開放されるのは22:30~翌朝8:00までなのですが、宿泊した日は混雑していたために、17:00~19:00の2時間のみが男女別内湯として開放された以外は、ほとんどの時間が貸切風呂として設定されていました。利用状況によってフレキシブルに対応しているのでしょう。


 
まずは「うさぎの湯」から入ってみることに。扉の右にぶら下がっている札を裏返して「入浴中」にしておきます。


 
室内の置物や壁飾りなどはウサギで統一されていました。


 
壁にはお湯に関して説明されており、曰く蛇口から加温されたお湯を投入し、加水循環消毒無しの放流式で提供しているとのこと。なお加温せず完全放流式で入浴できる「うえの湯」や「したの湯」の源泉と異なり、「うさぎの湯」を含めた3つの貸切風呂では、沢の対岸で湧く30℃未満の源泉(栃尾又自在館1号)を引いているため、加温が必須なんだそうです。こうした細かな説明によって温泉の情報を開示しているお宿の誠実さに感心します。


 
開放感をもたらす大きな窓、そして若草色とホワイトのチェック柄が印象的な浴室は、現代的且つ実用的な造りです。窓からは谷を見下ろせ、高度感のある気持ちのよいロケーションです。洗い場にはシャワー付きカランが3つ並んでいました。家族みんなで一緒にシャンプするなんてことも、このお風呂ではできちゃうんですね。


 
五角形の浴槽は、最も長い辺で3mほど。槽内には小さく丸いタイルが敷き詰められていますが、縁には木材が用いられ、柔らかで温かみのある雰囲気を生み出していました。壁際に木箱の湯口があるのですが、こちらは現在使われておらず…


 
壁から突き出ている水栓よりお湯が投入されていました。この水栓は析出と思しき白いもので覆われています。湯船のお湯は洗い場へ溢れず、底から立ち上がっているオーバーフロー管から排湯されていました。
ちょうど良い湯加減がキープされており、とても気持ちが良かったので、ついつい時間をオーバーしそうになってしまいました。


●たぬきの湯
 
つづいて「たぬきの湯」にも入ってみました。上述のように「うさぎの湯」の反対側に暖簾が掛かっています。レイアウトこそ若干違うものの、両浴室の脱衣室は基本的に同じような造りであり、2つの浴室が対になるように設けられたことがわかります。


 
浴室名に即してたぬきのタペストリー等が飾られていました。


 
タイル貼りで明るい「うさぎの湯」に対し、こちらはウッディな壁や緑色凝灰岩の床など、シックで落ち着きある佇まいです。大きな窓のすぐ外側では雪がこんもり盛り上がっていたのですが、これは「したの湯」へ下ってゆく廊下の屋根に積もっていた雪のようです。浴室のレイアウトは「うさぎの湯」とほぼシンメトリで、洗い場に並んでいるシャワー付きカランが3基である点も同様でした。


 
浴槽内は淡い緑色の小さな丸いタイルが敷き詰められていますが、縁には岩が並べられており、男性的で岩風呂のような風情です。浴槽の大きさは「うさぎの湯」とほぼ同じなのですが、真ん中に沈められている長方形の岩は「たぬきの湯」だけにしかなく、これに寄りかかって湯浴みすると、体がフィットして姿勢が安定する点が実に素晴らしい。お湯から上がって一息入れたい場合も、この上に腰掛ければ良いのですから何かと便利です。寛いで入浴できるように細かな配慮がなされているのでした。


 
こちらのお風呂も木組みの投入口は使用されず、壁から突き出ている水栓よりお湯が投入されていました。水栓に白い析出が付着しているのも同様です。

先述したように「うさぎの湯」「たぬきの湯」とも、同じ源泉(栃尾又自在館1号)を加温した上で掛け流されており、無色透明でほぼ無味無臭の大変クリアなお湯です。柔らかくてマイルドなのですが、気泡の付着等は見られず、良く言えば癖のなくて優しい、悪く言えば掴みどころが無くて浴感に乏しいお湯でした。お湯のフィーリング、神秘性、長湯の楽しみを味わいたいなら、霊泉を完全掛け流しにしている「うえの湯」か「したの湯」が断然おすすめ。もっとも「うさぎ」「たぬき」の両浴室を貸切利用する場合は40分しか入浴できませんから、長湯できるわけもなく、むしろ実用的な入浴でしたら「うさぎ」や「たぬき」の方が使い勝手ははるかに良好です。お風呂の個性に合わせて使い分けることにより、一層充実した湯浴みが楽しめるのかと思います。


栃尾又自在館1号
単純弱放射能温泉 28.5℃ pH7.9 77L/min(自然湧出) 131×10^-10Ci/kg(35.9マッヘ) 溶存物質226.6mg/kg 成分総計227.1mg/kg
Na+:24.6mg(37.95mval%), Ca++:33.4mg(59.22mval%), Sr++:0.2mg,
Cl-:10.6mg(11.45mval%), SO4--:89.9mg(71.37mval%), HCO3-:25.9mg(16.03mval%),
H2SiO3:39.7mg,

その5へつづく
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栃尾又温泉 自在館 その3(したの湯)

2015年08月07日 | 新潟県
前回記事の続編です。

 
 
続きましては、栃尾又温泉の象徴的存在である共同浴場「したの湯」へ入らせていただきました。鈎状にクネクネと曲がる館内の通路を進みながら、谷の底へ向かってどんどん下ってゆきます。総木造の廊下はなかなか趣きがあり、歩くだけでも気分が高揚するのですが、結構な高低差があるためお年寄りや足腰の弱い方のために、踊り場には休憩用の腰掛けが用意されていました。こうした小さな気遣いからお宿の真心が伝わってきますね。廊下の窓から外を見ると、深い雪に埋もれながら湯気抜きだけ姿を覗かせている「したの湯」が見えました。



 
下りきると芥子色の暖簾がお出迎え。当世の日本旅館らしい民芸調の内装で、土壁が懐かしく温かいムードを与えています。前回取り上げた「うえの湯」と同様に、この「したの湯」も栃尾又温泉の各旅館に宿泊する客が利用する共同浴場ですが、モダン和風な内装は「自在館」の離れとしての印象を強く受けます。脱衣室に付帯しているトイレは、いまや日本人の日常生活に必須となっている洗浄機能付き便座でした。


 
暖簾の手前には飲泉処があったので、実際に飲んでみました。このぬるいお湯は浴場で使われているものと同じ源泉らしく、まろやかで癖のない口当たり。飲泉した時点では特にこれといったインパクトが無いように思われたのですが、この飲泉の影響なのか、その後利尿作用が強く働き、霊泉のパワーに驚かされました。


 
ひっそりと佇む静寂の浴室。深く切れ込んだ谷の底に建てられており、その地形が世塵溢れる現実世界とこの浴場とを隔絶しています。窓の外は一面銀世界。雪で白く輝く外光が、立ち上ぼる湯気によって乱反射し、室内には幻想的な淡い明かりで満ちていました。


 
一応洗い場のようなスペースがあるのですが、1箇所しか無い上に狭いので、ここで体を洗うのはちょっとむずかしいかも。体の汗や垢を流したい場合は、前回取り上げた「うえの湯」や、次回取り上げる予定の貸切風呂「うさぎの湯」「たぬきの湯」など、ちゃんとした洗い場のあるお風呂を利用した方が良さそうです。壁には「心得」と題して入浴のマナーが箇条書きされていました。


 
浴槽は主と副の2つに分かれており、いずれもタイル貼りですが、和の雰囲気を醸し出すために縁を石で囲っています。主浴槽はおおよそ8人サイズ。槽内のステップは一般的なお風呂よりも幅が広くとられており、腰を下ろすといい塩梅で浸かれ、長湯しやすいような設計となっているのでした。このステップに沿って塩ビのパイプが沈められているのですが、これは前回記事の「うえの湯」でも触れた加温用の設備であり、塩ビ管の中にステンレスのフレキ管が通っていて、その中に熱いお湯を流して熱交換を行うことにより、厳冬期に低くなりがちなお湯を温めているのでしょう。


 
主浴槽のお湯は中央に積み上げられている石積みの島から注がれていました。パイプは2方向へ突き出ているのですが、それだけでは間に合わないのか、石の蓋の隙間からもお湯が漏れ出ていました。ちなみに源泉はこの真下にあるんだとか。コップが置かれており、飲泉しながら湯浴みするお客さんの姿も見られました。主浴槽は完全放流式の湯使いであり、石の隙間からふんだんに溢れ出ている他、浴槽の隅っこに設けられている目皿からも排湯されていました。


 
小さな副浴槽のお湯は加温循環されており、上がり湯として暖を取るために入るものですが、指摘されなければ循環しているとは気づかないほど、浴槽のお湯はなかなか良好な状態でした。


 
完全放流式の主浴槽から溢れ出ているのはわかりますが、加温循環されているはずの副浴槽からもしっかり溢れ出ているのが意外でした。道理でコンディションが良いわけですが、加温したお湯を放流させるだなんて、燃料代がバカにならないでしょうね。
完全放流式である主浴槽の湯加減は35~6℃という不感温度帯であり、じっくり長湯していると、肌に薄っすらと微細な気泡が付着しました。「うえの湯」と同じ源泉なのですが、直下に源泉があるこちらのお風呂の方がはるかにお湯の鮮度感やまろやかさが優れており、時間を忘れていつまでも浸かっていられます。


 
夜の「したの湯」は幻想的。まさにライティングの妙といったところでしょう。室内では湯口からお湯がトポトポと落ちる音しか聞こえません。この雰囲気に圧倒されてしまうのか、湯船に浸かった入浴客はみな一様に口を噤んで沈黙し、その場で微動だにせず、目を閉じて瞑想に耽けていました。お湯は実に軽やかで優しく、長湯しても体への負担が全く感じられません。このため夜間の入浴で私は微睡んでしまい、実際にちょっとウトウトしてしまいました。
じっくり長湯すれば、上がり湯に浸からなくても体の芯まで十分に温まるのが不思議なところ。しかも、一般的なお風呂ならば必ず発生する湯上がり後の発汗がほとんど無いので、湯上がり後の爽快感は極上です。肌のサッパリスベスベ感はもちろんのこと、モチモチ感もすごい。化粧水に浸かっているような霊泉の効果に、普段は美肌なんて意識しない無粋な男の私も驚いてしまいました。


栃尾又1号
単純弱放射能温泉 36.8℃ pH8.6 104L/min(自然湧出) 37.0×10^-10Ci/kg(10.2マッヘ) 溶存物質272.4mg/kg 成分総計272.4mg/kg
Na+:30.8mg(39.19mval%), Ca++:40.8mg(59.65mval%),
Cl-:12.4mg(10.80mval%), SO4--:117.3mg(75.30mval%), HCO3-:19.8mg(9.88mval%),
H2SiO3:46.1mg,

その4につづく
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