パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(←おとうさんと呼んで欲しい)を、娘(27)「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

かなわない(天才その3)

2015年12月08日 | 本・マンガ・テレビ・映画
12月8日(火)曇り

今、お坊さんが流行ってるの!?
昨夜帰宅した娘がテレビをつけたら歌唱力選手権てのをやってて、お坊さんが歌ってた。
で、チャンネル切り替えると「超豪華!ぶっちゃけ寺~」てのをやってて、
「またお坊さんだよっ!」と言いながらチャンネル替えた娘がブッと吹き出す。
見ると、山pの「5→9私に恋したお坊さん~」でした・・・

と、それはさておき・・・
シリーズ最終回の今日は、宮本輝氏です。
娘が大学生になった時、これは今読むべきよ!と「青が散る」を薦めたらどっぷりとハマり、今では母の許しなく「テル」と呼ぶまでに。
百年早いわっ!

先日、久々に彼の(大人な母は、テルなんて馴れ馴れしく呼ばない)「いのちの姿」というエッセイを読む。
どの話をとっても、彼は神から書くことを運命付けられた選ばれし人なんだということを思わされる。
なかでも二つのエピソードは鳥肌がたった。
「ガラスの向こう」という章と「殺し馬券」という章。
ここでは「殺し馬券」について少し語りましょう。
「ガラスの向こう」について気になったら本屋さんで立ち読みしてください。
彼の数多い名長編小説の中に「優駿」という競馬の世界の話がある。
映画化もされた。
今は亡き緒形拳氏と、息子直人氏の親子共演も話題になり、今でいう枯れ専だった友人祥子さんは「見た!?あの父子、ご飯の食べ方がそっくりなのよっ!」と泣いていた。
この話を書くために、宮本輝氏は馬主になったのだ。
すっ・・すごい・・・この時点で「この人にはかなわない・・・」と思う。
で、大損したらしいが、「優駿」をこの世に生み出し読み継がれていることだけを歓びとしようとおっしゃっておる。
馬主になった彼は、Fさんという馬主やK調教師らと知り合う。
そして、K調教師が世話しているダービーの本命とされる馬のオーナーに好感を抱く。
本命とはいえ何があるかわからないのがレースの世界。
そんな時、彼は、Fさんから『殺し馬券』なるものを教えられる。
「自分が勝たせたい馬以外のすべての単勝を買う」
ただし、これをやるのは生涯に一回切りと決めて買わねば魔力は失われる。
宮本輝氏は、生涯に一度の『殺し馬券』を買い、この馬は危なげなく勝ったのであった。
それからしばらくして・・・このダービー馬のオーナーが自殺。
それも、少しスキャンダラスというか不可解な死をとげる。
笑い話にするつもりだった「殺し馬券」は、話題にもできず、かといって処分も出来ずずっと持ち続ける。
そして、Fさんが亡くなった時、やっと殺し馬券に火をつけた。
そして、その炎の中に、地味なFさんの背広姿を見る。
「殺し馬券」を教えてくれた時、一瞬Fさんの目の中に見えた博徒を思う。

宮本輝氏自身の生い立ちとか、父親のこととか、ご自身の病のこととか、いろいろなことが絡み合って、彼の作品には常に死が見え隠れする。
「死」が恐いワタクシは、「死」を扱ったもの(映画、ドラマ、本etc.)は極力避けて通る。
現実世界でも、不義理覚悟で避けて通る。
そんなワタクシが、唯一拒絶しないのが「宮本輝氏が扱う死」である。
なぜなんだろ?
わからないけど、彼の書く死の先には細いけれども確かに光が見える気がするのだ。
コメント (2)
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