10月24日(月)晴れ
大学の同級生でサークル仲間だったpから久々に連絡が来たのは半月ほど前だったか。
「新潟の映画館でマサラ上映やるから行くんだけど、来ない?
アイ川君、インド好きで映画好きだったよね!」
pは、女子だがさばさばしてて昔から付き合いやすいヤツだった。
押しの強いところも変わらないな。
オレ、午前中仕事だし、東京都出身のヤツにはわかりづらいかもしれんが、新潟って縦に長いんだぜ。
オレの住む街からその映画館の街まで車で一時間半はかかる・・・って言う間もなく
「マサラ上映の時、あたし達はインドの衣装を着るの。映画代が割引になるのよ。
あなたもサムエルパンツくらい穿いてきなさいよ。
インド旅行した人だもの、それくらい持ってるでしょ。」
何年前の話だよ!オレがインド行ったの学生の時だぜ。
「オレ、仮装はしないからな!」
それだけ言うのが精一杯。
ま、今、そんな仕事も忙しくないし、あの映画おもしろいし、久々にpと会って同窓生達の話を聞くのも悪くないか。
インド音楽をガンガン流して気分を高めながら車を走らせる。
あ、あと、言い忘れてけど『サムエルパンツ』じゃなくて『サルエルパンツ』だぞ、p!
古びた映画館は、なんと明治44年設立とある。
なかなかいい感じの映画館だ。と、味わう間もなくpが手を振る。
ぎょっとするオレ。
だって、だって・・・言っていいか?いいよな。こういうこと言えるの同級生だけだと思うから言うぞ。
お前、美川憲一みたいだぞ。
インド衣装って・・・おまえ、そりゃ何か間違ってるぞ。
と言う間もなく、pの後ろから同じようなド派手な衣装の女達が3人「初めまして〜〜」
「ブログ仲間なのよ、あたしより若いのよぉ〜」ってpは言うけど、赤い女はオレたちと同じくらいだろ?
後の二人だってアラフォーだよな。
やっぱお前達間違ってるって!でも一番間違ってるのは、p!お前だ!オレたち今年55だぞ。
先輩は知ってるのか?妻のお前がこんな格好してるってこと。
動揺し過ぎて無口になってるオレだが館内に入ってさすがにコイツらとは並んで座れん!
コイツら、遠目には華になるから中央の前の席へと案内されとる。
オレはそっと後ずさる。
映画はおもしろかった。やっぱインド映画はいいなあ。劇中劇ってのもおもしろいし、インドのスター大集合ってのも見応えあったなあ。
でも、それよりおもしろかったのはやっぱあの女達だ。
pよ!オレ、次の同期会絶対出席するよ。こんなおもろい光景、オレだけの胸に秘めてはおけない。
画面さえ映り込まなければ写真撮っていいってここの支配人が言ってたから、オレ、こっそりお前達のダンシングシーン、カメラにおさめたから。
紙吹雪に風船、館内はもうエラいことになっておる。
観客皆で掃除して綺麗になったら今度は写真撮影会が始まる。
カメラを渡され「フラッシュは焚かないで撮って!」だの、「スクリーンをバックに!」だの「何枚か続けて撮って!」だのうるさいうるさい。
えぇ〜い、動画撮ってやる!
pが「あたしたちこんな格好だし、車で送ってよ!」って言うから車をとってくると
真っ暗な闇の中に真っ黒に金色のラメがめらめら浮かび上がる衣装の美川憲一、いや、pだけしかいない。
「りいさんだけ今日帰るんだけどちょっと時間が厳しいの。新幹線に乗る駅まで送ってくれない?
15分くらいらしいから。」
なんだか展開がめまぐるし過ぎて話に付いていけない。
どうやら、あの『赤い衣装の女』の娘さんがこの街に住んでいて、その娘さんの家にp達は泊まるらしいが、『青い衣装の女』だけが東京に帰る。
新幹線の時間が迫ってきたので駅まで車を出して欲しいってことだな。
着替えて年相応になった女達4人を乗せて駅へ向かう。
道案内役らしい『赤』が「牛角のところを右折してください」っていうから、「次の信号のとこだね」っていうと「ちがうちがう、まだ先」
いやいやいや、ここだろ、牛角あるし。とオレが言う間もなく後部座席の女達が一斉に「ここだよっ!」と総ツッコミ。
そうか、そういうことね。オレはそっとさっき入力したナビの画面に見入る。
駅に着くと『赤』が「ここらにテキトーに路駐で大丈夫ですよ。」
いやいやいや、駅の駐車場は短時間なら無料なんだからちゃんと停めようぜ。
こういう女に限って、もし駐車違反切られてもゲラゲラ笑って「捕まっちゃいましたね〜」って言うんだ。
『青』を見送り、また『赤』の娘の家まで戻ると『赤』が「呑みに行きましょうよ!」
この女、お礼は酒で返すタイプだな。
いやいやいや、オレ、帰らなきゃ。
pが「○ちゃんのおうち広いから泊まれるよ!」
いやいやいや、さっきpが着替えるまでちょっと上がらせてもらったあの家、
pは「古民家カフェみたいでしょ!」ってはしゃいでたけど、深々と寒かったぞあの家。
布団とか絶対足りないだろ。
あげく「アイ川君、コタツでいいよね」って言うだろ。
でも、せっかくだからメシくらい食ってから帰るとするか。
てくてく歩いて・・・一軒目満席。
てくてくてく・・・二軒目、入口に人が溢れとる。
てくてくてく・・・三軒目も・・・無理ですね。
つか、今日、この街、すんごい大きいお祭りがあったんだろ、予約してないと無理だろ?食事するとこ。
さすがに食べることにこうるさそうな女達ももうどこでもいいって感じになって、古びた中華屋に入っていき・・・
「あいてるよっ!入れるよ!」
『桃』が「あたしビール!」『赤』は『あたし日本酒呑んじゃお〜っと』
「あたしはグラスビールでいいや」とp。
えーーーっ!おまえ、呑むのか?
サークルの合宿で、オレとお前は一滴のアルコールで手のひら真っ赤になる同志だっただろ?
pが「ちょっと呑めるようになったのよ、あたし」って得意げなのがなんか腹立つ。
え?オレ?「ウーロン茶ください」
頼んだ料理が並びだすと、あんなにカシマシかった女達が料理の写真を撮り始める。
「あたし達、ブロガーだからさ!」
pが「三番メン」を取り分けてくれるが肉が入ってる!
「オレ、肉ダメなんだ、忘れたのかよ!オレは覚えてるぞ、お前が椎茸ダメなこと。
もういい、オレ、自分の分は自分でよそうから。」
テレビでは日本シリーズ広島VS日ハム。
『桃』は熱烈ジャイアンツファンらしい。
広島を憎々しげに見てる。
途中で「ひいっ!」とか声をあげるからびっくりするじゃないかっ!
そもそもオレは野球よりサッカーなんだよ。
アルビレックス新潟が心配で心配で・・・って、誰も話に乗ってこない・・・
店の外観とは裏腹に、そこそこ美味かったなここ。いや、歩き疲れて腹が減ってたからかもしれん。
10時だ、オレ、帰らなきゃ!と言おうとすると・・・
デザートをコンビニで調達しよう!とコンビニに向かう女達。
さんざん悩んだ挙げ句ソフトクリームを手にする女達。
新潟来たんだったらルマンドアイス食え!オレはこれにする。
ローソン出てすぐソフトクリーム食べ始める女達。
え?うちでたべるんじゃないのかよ。ここは原宿か?くれーぷ食べながら歩くティーンエージャーか?
pっ!何度も言うようだが、おまえは55だっ!
オレは三人に見送られ、ナビをセットして帰路につく。
今から一時間半かぁ〜今日中に帰り着くかなあ。
なんか今日一日すっげえ長かったなあ〜