経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-08-05 07:08:50 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪44≫ 結婚 = 朝からそわそわしているが、気持ちはきょうの秋空のように澄み切っている。いま、ぼくは薄黄色のローブ、隣のマーヤは薄桃色のローブに身を包み、例の完全自動車に乗っている。でも高速道路で遠くに行くわけではない。街なかを時速10キロぐらいで、ゆっくりと走っている。

道路の両側には多くの人とロボットが集まり、何か叫びながら手を振っている。この街には約1万人の人間とほぼ同数のロボットが暮らしているが、その半分以上が沿道を埋めている感じ。マーヤも興奮して言い返しているが、その意味は解らない。そう、まるで優勝したスポーツ選手の凱旋パレードのようだ。

あれから物事が、どんどん進捗した。賢人会のウラノス議長から、次々とマーヤに連絡が入る。まず地球に帰る宇宙船は11月11日に発射される。賢人会は近く「人間とロボットの結婚を正式に認める」ことになった。君たちさえよければ、その第1号として結婚しないか。9月になったらすべてを公表するから、その直後に披露のパレードをやってほしい・・・・。

この国には、宗教と呼べるものがない。昔はあったのだそうだが、いまは消滅してしまった。だから教会や寺のようなものもない。たしかに神仏の前で「健康でありますように」とか「合格しますように」と祈る必要もない社会だ。したがって結婚式もなく、新郎新婦はただ町内を巡ってお披露目するだけ。考えてみれば、親族や親しい友人だけで行う結婚式よりも、ずっとオープンで効率的かもしれない。

1時間ほどでパレードが終わると、マーヤが解説してくれた。
「みんなが喜んで興奮していました。まるで私たちが、人間とロボットの結婚に道を拓いたように受け取られたようですね。みんなが『おめでとう』『ありがとう』と祝福してくれたので、とても感激しています」

ぼくも嬉しかった。でも同時に、結婚とはなんだろうと考え込んでもいた。男性と男性、女性と女性、そして人間とロボットの結婚。大昔の人類は、子孫を残すために結婚した。だが、いまは違っている。子どもを産んでも産まなくても、結婚は結婚だ。人間の男女が結婚しても、セックスレスが少なくないという。結局、結婚は単なる一つの絆に過ぎないのだろうか。

                                (続きは来週日曜日)

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