経済なんでも研究会

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曲がり角に来た 中国経済 (上)

2018-08-16 07:31:29 | 中国
◇ 投資と消費がともに勢い失う = 拡大を続けてきた中国経済が、曲がり角にさしかかっている。統計局が発表した1-7月の固定資産投資額は前年比5.5%の増加。1-6月の6.0%増から大きく鈍化した。この統計を発表し始めた1995年以来で、最低の伸び率となっている。また小売り売上高も7月は前年比8.8%の増加にとどまった。6月の9.0%増加を下回り、小売り大手50社では、前年比3.9%の減少となっている。こうした発表を受けて15日の上海市場では株価が大幅安に。この影響で日経平均も150円下げた。

固定資産投資のうち、道路や空港などのインフラ投資は1-7月で5.7%増、1-6月の7.3%増から目立って鈍化した。これは習政権が地方政府や国営企業の過剰債務を抑制するため、政策的にブレーキをかけた結果だ。また小売り部門では、携帯電話の販売台数が15か月連続で前年割れ。新車の販売台数も、7月から減税されたにもかかわらず前年比4.0%減少した。

中国政府はリーマン・ショック後の不況を乗り切るため、4兆元(57兆円)という巨額のインフラ投資を断行。おかげで不況は回避された。しかし地方政府の債務は膨張、国営企業の過大投資という副作用を招いている。習政権はこのひずみを是正するために、財政・金融政策を引き締め気味に運営した。ことし4-6月期の実質成長率が6.7%に鈍化したのも、その結果だとみられている。

そんなときにアメリカとの間で、貿易戦争が勃発した。これに対する不安が、個人消費の縮小につながっている。このままにしておけば、経済成長率は低下の速度を速める危険性が出てきた。このため中国共産党は緊急の政治局会議を開催。財政・金融政策を再び景気刺激の方向に転換する方針を決めた。その副作用が出ても仕方がない。指導者たちが「中国経済は曲がり角に来た」と判断したからに他ならない。

                                (続きは明日)

       ≪15日の日経平均 = 下げ -151.86円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

日米貿易協議の 真相は?

2018-08-15 08:05:36 | 貿易
◇ 双方の政治日程がカギ = 閣僚級による日米貿易協議は先週10-11日、ワシントンで開かれた。終了後の記者会見で、茂木財政経済相は「個別の問題で何か決定したものはない」と述べ、次回は9月に開催することを明らかにしている。ライトハイザーUSTR(通商代表部)代表は2国間の貿易協定を求め、日本側はアメリカのTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰を要請。アメリカの輸入自動車に対する追加関税も、日本が反対意見を述べただけで、アメリカ側は反論もしなかったという。

この会議が、なぜ予想に反して平穏無事だったのだろう。これまで中国やEU、あるいはカナダなどに見せつけた厳しいアメリカの姿勢はどこへ行ったのだろう。そのナゾを解くカギは、次の会合を9月に設定した点にある。いま両国が夏休みをとる理由は、全くない。にもかかわらず次回の会合を9月にしたのは、自民党の総裁選挙を考慮したためではないだろうか。

つまり日本政府は、牛肉や小麦などの農畜産物、LNG(液化天然ガス)の輸入増加。それに防衛装備品の調達増加を、すでにアメリカ側に伝えてある。だが総裁選挙の前に発表すると、地方票が反安倍に回る危険もないではない。トランプ大統領としても、言うことを聞いてくれる安倍首相の続投が望ましい。だから発表は総裁選後の9月になった。

一方、アメリカの中間選挙は11月。その直前に日本の輸入増加が発表されれば、農業・エネルギー・防衛産業の票が確保できる。これなら、双方めでたしめでたし。もちろん、こういう推論が確認されたわけではない。だが第1回の閣僚協議が実にあっさりと終わったことから、いろいろ想像力を働かせてみたしだい。

       ≪14日の日経平均 = 上げ +498.65円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

こんどは トルコ です : 通貨不安

2018-08-14 07:48:27 | 新興国
◇ リラ暴落が東京市場にも波及 = 日経平均は先週末の300円に続いて、きのうも440円の大幅安を演じた。その大きな要因がトルコの通貨リラの暴落だった。トルコ・リラの対ドル・レートは、10日だけで20%もの下落。年初に比べると4割も下がって、過去最低値に落ち込んでいる。アメリカの高金利で資金が引き揚げられていたところへ、トランプ大統領がトルコの鉄鋼製品に50%の追加関税をかけたことが原因。

トルコ政府は、クーデターに関与した疑いでアメリカ人牧師を拘束している。トランプ大統領が鉄鋼製品に高関税をかけたのは、これに対する抗議で、特にリラを下落させるほどの経済的な影響はない。しかしアメリカとの関係がますます悪化したことが、資金の流出を加速させることになった。

トルコ経済は最近まで順調に推移、外貨準備も1000億ドル保有している。このためアルゼンチンのように、いますぐIMF(国際通貨基金)に駆け込む状況ではない。だが政治的には、エルドアン大統領の独裁状態。たとえば中央銀行がリラ防衛のために金利を上げようとしても認めない。このため将来への不安が、必要以上に増大している。

トルコにはスペイン、イタリア、フランスなど南ヨーロッパの銀行が多額の投融資をしている。これらの銀行経営に支障が出ないかどうか。またロシア、南アフリカ、インドネシアなどからの資金流出を加速させないかどうか。このような心配が強まった結果、先進各国の株式市場でも警戒感が強まった。今週も目は離せない。

       ≪13日の日経平均 = 下げ -440.65円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2018-08-13 08:05:27 | 株価
◇ しだいに濃くなる貿易戦争の影 = トムソン・ロイター社の主要500社を対象にした調査によると、4-6月期の純利益は前年比24%の増加だった。非農業雇用者の増加数は7月も15万7000人で、景気は相変わらず好調である。本来ならば、株式市場は明るさと活況に満ち溢れているはずだ。ところが貿易戦争の影が時とともに濃くなって、市場の明るさを消している。ダウ平均は先週149ドルの値下がりだった。

日本企業の利益水準も、いぜん高い。4-6月期の純利益は20%を超す増益となった模様だ。4-6月期の実質成長率も1.9%と、プラス成長を回復した。だが日経平均は先週227円の値下がり。アメリカと中国が、互いに160億ドル相当の輸入品に25%の関税をかけ合う追加措置を発表。これが大きな重しになった。

特に日本の場合は、中国経済の動向が心配になる。景気が減速しているところへ貿易戦争が重なって、すでに上海市場の株価は大幅に下落した。7月の新車販売が、前年比4.0%減少したことも気がかりである。今週の東京市場では、企業業績のよさが見直されるのか、それとも貿易戦争の影の覆われるのか。円相場が上昇気味なのも要注意だ。

今週は15日に、7月の訪日外国人客数。16日に、7月の貿易統計。アメリカでは15日に、7月の小売り売上高と工業生産。16日に、7月の住宅着工戸数。17日に、7月のカンファレンス・ボード景気先行指数と8月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、7月の小売り売上高、鉱工業生産、固定資産投資額を発表する。

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-08-12 08:03:12 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪45≫ 帰国へ = ぼくとマーヤを乗せた宇宙船は11月11日の早朝、この島の北端にある発射場から打ち上げられた。船内は日本製の宇宙船よりやや広く、ベッドと椅子が固定されている。ダーストン星は瞬く間に見えなくなった。もう、この星に来ることはないだろう。ちょっと悲しかった。

それにしても、いい人たちだった。みんな異星人のぼくを気持ちよく受け入れ、歓迎してくれた。マーヤに淋しくないかと聞いてみると「少しは悲しい。でも私には親兄弟がいません。それより貴方と地球に行けることの方が嬉しい」という答えが返って来た。

すぐに無重力状態になったが、立ち上がったマーヤは浮き上がらずに歩いている。不思議に思っていると、マーヤがすぐ説明した。「靴底が磁石になっているんです」

ぼくもサンダルを履いて歩いてみた。少しベタつく感じで歩きにくいが、何かにつかまらなくても移動できる。サンダルを脱ぐと体が浮き上がるので、マーヤに抱き付く。来たときとは大違いで、楽しく賑やかな宇宙旅行になった。

まるで新婚旅行のよう。あっという間に1週間が過ぎた。するとマーヤが悲しそうな顔で言った。
「そろそろ貴方には、薬を飲んで眠ってもらわなければなりません」

そう、別れの挨拶に出向いたとき、病院長のブルトン博士にこう言われたのだった。
「君がこの星に来たときは、宇宙船のなかで4年間も冷凍されていた。だが冷凍だと筋肉が固まってしまうから、地上に降りたとき重力に慣れるまでが大変だ。わが国では、薬で眠る方法を採用している。動物の冬眠と同じで、これだと睡眠中も筋肉は動いていて固まらないんだ。薬は私が調合するから、安心してもらいたい。

それから胸のプレートは、下着や服には映らないようにしておいた。服の上から見えたのでは、地球に戻ってから困るだろうからね。ああ、マーヤのプレートも同じだ。だから裸にならない限り、誰にも見られないよ」
そのとき、ぼくのプレートは≪61≫に、マーヤのは≪66≫になっていた。

ぼくはいま、来たときと同じような航空自衛隊の制服を着ている。マーヤは茶色の地味なワンピース姿だ。このまま2人で手を組んで銀座通りを歩いても、誰も何とも思わないだろう。外見だけではなく、マーヤはどこから見ても中年の日本女性に変貌した。もう日本語の読み書きも万全らしい。大化改新、徳川家康、東京オリンピックも、よく理解したという。素晴らしい。

                                (続きは来週日曜日)

Zenback

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