どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

<おれ>という獣への鎮魂歌 (1)

2006-02-09 17:24:51 | 連載小説
 夏草の生い茂ったなだらかな丘のふもとに、いつの時代のものか、発かれた石棺が陽に曝されているのを見たことがある。  型枠のように草根を支えた石室の奥に、濃い暗闇が潜んでいた。伊豆の下田から石廊崎に向かうバスの中であった。  丘は一筋に延びる舗装道路を境にして、二つの盛り上がる量感となり、前部の座席にいたおれを呼び寄せるように輝いていた。  変わりやすいこのあたりの天候が、一刻の驟雨の後にもたらした . . . 本文を読む
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