海
「岬の夏」
この波音にのって
きみは夜通し踊りたいというか
この岬の突端に来て
きみは思い出をすべて唄いつくしたいのか
思い思いの姿で崖下に蠢くきみたちは
二十年の希いを一気に叶えようとするのか
打ち上げ花火が夜空を染める
足下を照らす線香花火は
ふさわしくないというのか
波をさえぎる岩礁の奇形
穴の一つひとつに小生物の眠りがある
間近の浜で
きみは再び薪をくべ
きみたちの輪を固くつなぐ
燃えあがる焔の強さが青春だというか
湧き起こる合唱が若さだというのか
遠く揺らめく漁火の赤さ
風は息を吹き返す
きみたちの声は嗄れ
それでも名残りの火を囲むか
輪をすぼめ
炎を掻き立てるのか
苦しげに唄うきみたちは
半身を闇から浮かせて
みんなこの世の人じゃない
黒い風の吹く世界から
ちょっと背中を押されただけだ
それでもなお酔おうとするか
暗闇を振り向かないか
人気ないテントの集落と
崖下の静寂をみつめないのか
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