どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム143 『天からの匂い辛夷』

2016-12-11 00:00:17 | ポエム

 

     タムシバ(匂い辛夷)

    (城跡ほっつき歩記)より

 

  

あの夜空の星をとって欲しい

幼子が母親にねだったという話をしたら

いまどきそんな事を言う子供はいないだろうと

イクメン仲間に笑われた

 

だけど小林一茶には

名月をとってくれろと泣く子かなの一句があり

それなりに可笑しみのある名句として

評価されているではないかと反論した

 

月ならでっかいから

子供の目に留まるかもしれないが

星は星屑と呼ばれるように一様だから

星が欲しいなどとはリアリティーに欠ける話だ、と

 

しかし宵の明星なら明るく光るじゃないか

負け惜しみを言ううちに虚しくなった

ぼくらの頭上では宇宙ゴミがブンブンまわり

観測衛星との衝突が現実のものとなっている

 

あと十年もすれば

掃除専用の衛星が打ち上げられ

釣り糸のようなワイヤーを放出してゴミを捉え

減速して大気圏で燃やしてしまう計画が進むそうだ

 

ほうら坊よ見てごらん

いま夜空では漁師が投網を打っているところだよ

坊の頭上では季節ごとの魚が泳いでいて

今夜はホタルイカが燐光を放っているんだ

 

こうした新しい話を聞かせられればいいのだが  

夜空もずいぶん味気なくなったものだ

幼子が月や星を欲しがることもないし

イクメン仲間にもそうした想像力を働かす素地はない

 

翌日幼子を抱いて散歩していたら

道端に星が落ちていた

流れ星となった匂い辛夷の花が

こっそりと地球に降り立ったという話はどうだろうか

 

 


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4 コメント

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そうか、詩とはそういうものか (tadaox)
2016-12-16 18:44:23
(知恵熱おやじ)さま、コメントを読んで「詩とはそういうものか」と気づかせていただきました。
テーマの重みとか、鋭さとかに意を砕いてきましたが、知らず知らずに自己模倣に陥っているところがあったような気がします。

いつも新しい発見が出来るわけではありませんが、それを詩作の原点として意識していくことを肝に銘じたしだいです。
いろいろありがとうございました。
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楽しんだアー!!! (知恵熱おやじ)
2016-12-15 21:37:07
星を取ってほしいと子供の眼から

宇宙ゴミを釣り糸か投網で回収とイメージの飛躍がたのしいね

そして幼子を抱いて散歩していたら道端に星屑が落ちていていた・・・・

宇宙と日常が一画面に同居していて、なんてチャーミングなんだ

最近の窪庭さんの詩では、もっとも楽しかったで~す
秀逸とは、これまでに読んだことのないような、こういうものを言うのではないでしょうか
返信する
「慶次の月見台」偲ばれます (tadaox)
2016-12-11 22:21:04
(塚越和夫)さま、眺望のいい「慶次の月見台」に立って、過ぎし日の武将たちの思いをあれこれ偲んだのではないでしょうか。
その山中で出会ったタムシバの幼木に、夢のように美しい花を見つけたときの喜びは、ひとしおではなかったかと想像致します。

そうした画像の数々を、いつも提供していただき感謝しております。
以前にも申し上げたかと思いますが、これらの画像には背景に様々の物語が秘められていて、見る者を刺激してやみません。

これからも楽しみにしています。
ありがとうございました。
返信する
星が見えました (塚越和夫)
2016-12-11 02:27:01
こんばんは。

このタムシバもコブシもハクモクレンも全て、同じモクレン科のモクレン属なので、遠目にはよく似ています。
特にタムシバとコブシはさらに近縁種らしく、見分けがつきにくいことが多いようです。
たまたまこのタムシバについては、花芽の薄緑色をした付属物が残っていたことからなんとか識別できました。
高さ2mほどの幼木でしたが、それでも3輪ほどの花芽をつけていました。

なおこの画像は、近年ではかの有名な前田慶次郎(前田利家の甥とも)が晩年に隠棲したとされる米沢市内の山中にて撮影したものです。

また、今年慶次郎の屋敷跡も学術調査によりさらに明確になったようですが、その屋敷から散策で赴くことのできる通称「慶次の月見台」とも呼ばれているなかなか眺望のよい場所でありました。

「星」と「月」の違いこそありますが、タムシバを「星」に譬えたていただいた作品への不思議な繋がりを感じました。

今回もご利用、ご紹介を感謝申し上げます。
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