どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム87 『水茄子を恋う』

2021-07-31 02:06:00 | ポエム

ひゃー、こうべ病むなあ

田舎のばあちゃんがしわくちゃの顔を綻ばす

 

たんぼの畦で早めの昼飯が始まったのだ

手には持ってきた曲げわっぱの弁当箱

 

今しも汲んできた清水がヤカンから注がれる

弁当箱の中はたっぷりの水とコメの飯

 

飯の上には手で割いた水茄子の浅漬けが泳ぐ

ばあちゃんは水茶漬けが大好きなのだ

 

ヒャー、おめえもこうべ病むべえ?

働き盛りの嫁ごにも感想を求める

 

んだなあ、たしかにうめえなあ

暑い時期は水茄子の茶漬けにかぎるわ

 

だけどよお、年寄りはいいけど

おらたちはもうちょっと力のつく食い物がないとな

 

息子がオヤジと顔を見合わせながらいう

茣蓙の上の重箱から何が出てくるか期待しているのだ

 

そうだろな、いくら水呑み百姓でも茶漬けだけではな

ふふふふと笑って二段重ねの重箱の蓋を取る

 

重箱の中には色とりどりの具が詰められている

早起きして嫁と共に作った煮物やゆで卵も整列だ

 

下の段には海苔を巻いた握り飯が十個ほど

古漬けのたくわんやら牛蒡漬けも少々

 

いやあ、こうべ病んだなあ

白髪の頭に指を当てて水茄子の旨みを脳に押し込む

 

水茶漬けで勢いついたから握り飯でも食うべえか

草取りがあるのでばあちゃんもシャケ握りを手に取る

 

よく食うなあ、茶漬けは味噌汁替わりか

輪切りのゆで卵を頬張りながら息子がからかう

 

和やかな昼飯風景に蛙もゲゲゲと笑う

嫁は日焼け予防の手ぬぐいを被りなおす

 

あの時の一コマが幻のように甦る

都会にあって記憶の中の水茄子をいつまでも恋うている

 

(2017/06/30より再掲)

 

    水茄子

    (泉州水なすPR画像)より

 

  

 

 

 

 

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2 コメント

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tadaoxさん、こんばんわ (たか)
2021-07-31 20:40:18
水茶漬け、美味しいんですよね~。
私の家でも暑くて食欲が無い時には
ご飯の上に色んな漬物と氷を載せて水を注いで頂きます。
孫にも食べさせましたら美味しい美味しい、また作って!とせがまれました。
ある日、友人たち4人と登山をした時に、それをやりましたら
食べさせてと言ってみるみる無くなってしまい
私は友人のおにぎりを頂く事になりました。
今年も梅雨明けして大変な暑さの時、作りましたよ。
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山で水茶漬け、いいね! (tadaox)
2021-07-31 22:57:47
〈たか〉さん、ありがとうございます。
頻繁に水茶漬けをやっているようですね。
お孫さんも「おいしい」って、うれしいですね。
山でやったら、珍しがられるでしょう。
おいしい漬物があれば、言うことなしですよ。
返信する

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