近畿大学薬学部の松田秀秋教授によりますと、先ずヤマイモの方ですが中国原産の品種のようです。棍棒のようなナガイモや掌を開いたようなツクネイモ、そして団塊状になっているヤマトイモなど、普段トロロとして食することの多い野菜がその仲間になります。
それらに対してヤマノイモは本来は日本固有の山野に自生するもの(自然薯)を差し、現在ではそれらを畑などで栽培したものもそう呼ばれているようです。自生する自然薯は岩や石ころなどの多い堅い地面の中を縫うようにクネクネと成長するので、途中で折らずに採取するのはとても根気がいるもので、最近の方法では畑の中に竹やプラスチックの鞘を埋めて真っ直ぐに栽培されるようです。蕎麦の成分表にヤマノイモと書かれたものは大体がこの栽培されたヤマノイモでしょう。
またヤマノイモは精力が付く食物として定評がありますが、これはアルギニンというタンパク質が多く含まれており、その作用によるものと科学的にも裏付けられてきました。
芥川龍之介の有名な『芋粥』のことにも触れていて、当時の芋粥は甘味を添えた一種のデザートだったらしいのです。主人公の芋粥ごときに対する執心ぶりがようやく納得された気がします。
※ 大丸ピーコック千里山店の野菜棚には「ねっとり長芋」が、普通のナガイモとは別に売られています。説明を見ますと、どうもナガイモと自然薯の交配により作られた品種のように想われます。