NHK土曜ドラマスペシャル『とんび』の前・後編(一昨夜)を見ました。ちょうど僕らの世代とオーバーラップして、懐かしくもありまたいろいろと想うところもありました。
高度成長期の運送労働者の父と一人息子の成長と、時代の空気が交差する物語が描かれていました。タイトルは「とんびが鷹をうむ」ということで、そういう家庭環境からでも一人息子が東京の大学に通うことができ、卒業後には雑誌社に就職して温かく幸せな結婚生活を想像させるところでドラマは終わります。
僕自身も故郷徳島の決して裕福でもない家で3人兄姉の末っ子ですが、その中でただ一人東京の大学に行かせて貰いました。しかしモラトリアムというのか何をやったら良いのか目標を失い、結局なし崩し的に勝手に大学は中退してしまいました。ドラマの息子とは違い仕送りしてくれる親の苦労も分からずに、自己中心的な気持ちの中の堂々巡りで悩んでいただけでした。その後も一時健康を害し帰郷して療養生活を送るなど、親には心配や世話を掛けどうしであったと想い返します。
デザインはその後大阪に出て堂島にある専門学校(プロダクトデザイン学科)で学び、クリエイティブ飛行船という事務所に10数年勤めてから独立し現在に至っています。
やはり僕は“鷹”にはなれませんでしたが、もちろん成功して夢を叶えた人も多かったと想います。しかしあの高度成長の時代に同じように都会に出て、親とは違う新しい人生を夢見せて貰うことができたということは幸運だったと感じます。今になりようやく親の愛情が有り難く身に染むようになりました。
さて、昭和の時代を描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』(3D)が、同じく堤真一主演で今週末21日(土)より公開されます。1964年と言えば東京オリンピックの開催された年で、その前に名神・東名の高速道路や東海道新幹線が開通し、我が国がいよいよ高度成長期に向かっていく時代です。こちらは両親も揃って平凡でも幸せな家族と、多くの愛すべき個性的な隣人たちの群像劇です。
映画の方は路面電車が走る風景などにCGが多く使われていると聞きましたが、テレビの『とんび』は実写にこだわったと解説されていました。3輪トラックなどが行き交う場面もリアルに作り込まれ想わず見入ってしまいました。