オバマ米金融機関バッシング嫌気、ＮＹダウ216ドル安（学校で教えてくれない経済学）

オバマ米大統領は米オハイオ州で22日開かれたタウンミーティングで「銀行の詐欺的取引（deceptive trading）は許せない。銀行は儲けを納税者に戻すべきだ。国民皆保険法成立の努力を続ける」と演説した。ＮＹダウは演説のあと下げ足を加速、前日比216ドル安、10,172ドルで取引を終了した。S&P500平均、ナスダックとも2%以上値下がりした。

オバマ大統領が前日発表した米金融規制案を受けて、アジアはじめ欧州、南米、ロシアなど世界中の株価が大幅に値下がりした。世界の資金の流れが止るとの懸念から一斉に売りシグナルを出した。中国が利上げに動くとの観測も世界同時株安を助長した。

株価予測に使われるヴォラティリティ指数がある。人間の体でいえば血圧のようなものである。それが21日から22日にかけて25％以上一気に上がった。人間なら血圧降下剤投与に走るところである。ところがこの日の午後行われたオバマ演説で不安人気がさらに高まり金融株が急落、ろうばい売りから、株価は全面安の展開となった。

ＮＹ商品取引所では原油、金、プラチナその他商品相場が軒並み下落した。ＮＹ外国為替市場では、米金融機関への資金の流れにブレーキがかかるとの思惑からドルが売られ、1ドル＝89.87～90円、1ユーロ＝1.4178ドル前後で取引された。ドルはここ数週間買われていたことの反動もあり、この先ドルの手じまい売りが出ると見られている。

一昨年9月のリーマン破たん以降、米国バ―ナンキ議長の音頭とりで、各国中央銀行揃い踏みで貨幣増刷、ゼロ水準までの利下げを同時に実施、世界大恐慌の二の舞阻止に動いた。中国も欧米金融機関に足並みを揃え、大型景気対策、金融緩和政策を実践した。その成果の一つが中国の2009年GDP8.9％増につながった。

21日付けのＷＳＪ紙は、ピーク時5,830億ドルだった米ＦＲＢのイングランド銀行、ＥＣＢ（欧州中央銀行）はじめ海外金融機関への貸出残高が昨年9月から減り始めた。ついに今年2月1日に一連の海外金融機関への資金供給オペレーションを終了すると書いていた。

海外の金融機関は米国でお金を借り、その資金で地元の金融機関へ供給してきた。欧州がギリシャ財政危機に神経質になっている。ＥＣＢによる資金供給が減ることから、ギリシャに留まらず、東欧諸国での連鎖的な資金繰り悪化懸念が背景にある。その意味からも27日に発表予定の次回米ＦＯＭＣ（米連邦公開市場員会）でのＦＲＢの見解が注目される。

お金は人間のからだにたとえれば血液の様なものである。米銀行の詐欺行為が世界的な金融危機を生んだのも事実である。しかし、金融機関バッシングが行き過ぎれば世界の金融市場は機能マヒを起こすだろう。血液の循環が悪くなればからだと同じで病気になる。（了）