伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ハードラック

2012-08-14 20:33:41 | 小説
 派遣切りで職場と寮から追い出されてネットカフェ難民となった上、類似の境遇という者を信じて話に乗ったためになけなしの貯金を騙し取られてその日の生活費もなくなり、闇サイトの求人にアクセスし、違法な仕事に手を染めた相沢仁が、一発逆転を狙って闇サイトに求人記事を書き込んで人を集め、結局は軽井沢の別荘地に住む裕福な老夫婦を襲う計画を立てたところ、途中で相沢は殴られて気絶し、気がつくと老夫婦は殺されて別荘は放火され、ナイフには相沢の指紋があり、相沢の手元には血に汚れた札束が残されていた。相沢は指名手配を受けて逃走しながら真犯人を捜すが・・・というミステリー。
 ミステリーとしては、布石は十分に回収され(気になるとしたら、神楽坂駅で舞はボストンバッグをどうしたのかとか、真犯人は声をどうごまかしていたのかとかくらいかな)、いい線かと思います。さすがに終わりの方に行けば真犯人は読めますから、明かされてビックリというわけには行きませんが。
 派遣切りや日雇い派遣をめぐる搾取構造、振り込め詐欺やその被害者を何重にも毟ろうとする連中によって生活苦や不幸のどん底に落とされた人々の境遇が、バックボーンとして示されています。そういう中で、自分は気をつけているつもりでも何度も裏切られていく主人公と、冷徹ではあるもののそこに至る過程には同情するしかない真犯人という設定が、ほろ苦さを残す、いろいろと考えさせられる作品です。


薬丸岳 徳間書店 2011年9月30日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする