愛国党政権の下、ネオナチが幅をきかせ、同性愛者が少子化の元凶とされて迫害され秘密警察によって拘束され秘密の収容所に送り込まれる近未来の日本で、ネオナチの脅迫に抗して最愛の主演女優稲葉久美子と伝説になる迫真の舞台を演じきった後の事故のため記憶を失ってさまよう劇作家兼俳優の王子ミチルが、愛国党・ネオナチへのレジスタンスを展開する尼僧や新女性党の政治家らと連帯しつつ、巡礼の旅の過程で記憶を取り戻していくという筋立ての小説。
安倍政権の下、転がり落ちるように人権の状況が悪化していっている現在の日本では、この小説の舞台にいやなリアリティを感じてしまいます。作者のあとがきで「憲法改正を声高に叫ぶ我が国の現政権を見ても、遠からず本当にこんな社会が到来してしまうのではないかという危惧を拭いきれません。それは決して小説のなかの絵空事ではないと、一人のマイノリティであるわたしは日々リアルな恐怖感を覚えているのです。」(430~431ページ)と書かれているのを見ると、安倍政権のような政権が誕生してしまい国民の支持を受けていることを見るに付け自分が少数派・異端者なのだと感じ続けている身には、悲しい連帯感とわずかばかりの安堵を覚えます。
私と同い年の作者が、あとがきで「遺作になっても悔いはないように、すべてを捧げて書きました」と述べていますが、もう「遺作」を意識する年齢というべきなのか、そういう社会の到来を嘆くべきなのか。
中山可穂 角川書店 2014年2月28日発行
安倍政権の下、転がり落ちるように人権の状況が悪化していっている現在の日本では、この小説の舞台にいやなリアリティを感じてしまいます。作者のあとがきで「憲法改正を声高に叫ぶ我が国の現政権を見ても、遠からず本当にこんな社会が到来してしまうのではないかという危惧を拭いきれません。それは決して小説のなかの絵空事ではないと、一人のマイノリティであるわたしは日々リアルな恐怖感を覚えているのです。」(430~431ページ)と書かれているのを見ると、安倍政権のような政権が誕生してしまい国民の支持を受けていることを見るに付け自分が少数派・異端者なのだと感じ続けている身には、悲しい連帯感とわずかばかりの安堵を覚えます。
私と同い年の作者が、あとがきで「遺作になっても悔いはないように、すべてを捧げて書きました」と述べていますが、もう「遺作」を意識する年齢というべきなのか、そういう社会の到来を嘆くべきなのか。
中山可穂 角川書店 2014年2月28日発行