伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

流転の細胞

2014-10-20 23:11:21 | 小説
 名古屋支社社会部で評価され次は東京本社と思っていたら支局長と2人体制の北埼玉支局に配属されてむくれ、北埼玉から抜け出すべく全国版に配信される記事を狙い続ける大日本新聞6年目の記者長谷部友美が、全国2番目の「赤ちゃんポスト」を開設した地元の病院を張り込み、赤ちゃんポストに赤ちゃんを預けに来た母親のインタビューを狙っていたところ、記者仲間が溜まり場にしているバーに以前勤めていたアルバイトの女性石葉宏子が赤ちゃんポスト近くに佇むのを見て仰天し、逃げ去った石葉の消息と過去を調査するうち意外な過去がわかり…というミステリー風の新聞記者成長物語。
 新人から一人前の記者になろうとする長谷部友美の記者としてとともに人間的な成長がテーマですが、長谷部とともに石葉宏子を探すバーのマスター中島の石葉に寄せる思いがサイドストーリーになっています。長谷部サイドでは、元経済紙記者という作者の経歴もあってでしょう、新聞記者と新聞社の行動と発想のパターンにリアリティが感じられます。典型的にいい人と描かれている中島の思いが、石葉と単純なラブストーリーにつながっていかないところに物語としての膨らみ・含みを感じさせます。男性読者としては切なく思えるところですが。


仙川環 新潮社 2014年6月20日発行
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