居酒屋でアルバイトをする三浪生徳山が、バイト先の先輩に連れられて行ったキャバクラのキャバ嬢初美に言い寄られて同棲し、放蕩な性生活を続けながら周囲との関係を断ち切り2人して涸れていく様子を描いた小説。
序盤での初美の残虐物語嗜好の性的趣味、中盤でのネットワークビジネス幹部との対決、終盤のバイト先の先輩片岡の長メールと徳山への好意、タイトルの「死にたくなったら電話して」いずれもが、作者が描きたかったパーツであり見せ場なのだとは思いますが、これが全体とのつながりを持たず、浮いている印象です。連載で書いているうちに気持ちと構想がずれて行ったというのならわかりますが、一気に掲載された作品としては、まとまりのなさ、物語の行方と構想の頼りなさを感じます。
序盤で、圧倒的な教養・博学と経済力、心理的自立性を感じさせる初美に対して、イケメンでモテるが中身のなさと主体性のなさが際立つ徳山が、相手が女性であること、あるいはキャバ嬢であることから低く見ている様子が、不愉快に感じられ、それが最後まで尾を引きました。率直に言って、徳山がなぜ人間としてのレベルの違いを痛感し、初美に畏れなり敗北感を持たないのか、薄っぺらな徳山になぜ初美が、全てを捨ててもいいなどと従属的な意識で接するのか、まったく理解できませんでした。イケメンの前には女なぞひれ伏すものだという意識なのでしょうか。
そして、初美を博学で度胸がある女と描きながら、その初美の内面を描くことなく、徳山の/男の視点/外面だけを捉えた視点から、最後まで「不思議ちゃん」レベルでしか捉えられずに終わるのも、キャラ設定としてもったいない思いが残ります。
ほとんど内面的な魅力を感じられない、無内容な主人公の視点から、美貌で性的に奔放な嗜好の知的で教養と経済力を持つ女性が、一方的に自分を好きになり慕い従属を誓っている様子を描くという、男性作者/男性読者の自己満足的な傾向が顕著な(でも、「イケメンに限る」なので、通常の男性読者が素直に浸れるかは疑問がある)作品に思えました。
李龍徳 河出書房新社 2014年11月30日発行
第51回文藝賞受賞作
序盤での初美の残虐物語嗜好の性的趣味、中盤でのネットワークビジネス幹部との対決、終盤のバイト先の先輩片岡の長メールと徳山への好意、タイトルの「死にたくなったら電話して」いずれもが、作者が描きたかったパーツであり見せ場なのだとは思いますが、これが全体とのつながりを持たず、浮いている印象です。連載で書いているうちに気持ちと構想がずれて行ったというのならわかりますが、一気に掲載された作品としては、まとまりのなさ、物語の行方と構想の頼りなさを感じます。
序盤で、圧倒的な教養・博学と経済力、心理的自立性を感じさせる初美に対して、イケメンでモテるが中身のなさと主体性のなさが際立つ徳山が、相手が女性であること、あるいはキャバ嬢であることから低く見ている様子が、不愉快に感じられ、それが最後まで尾を引きました。率直に言って、徳山がなぜ人間としてのレベルの違いを痛感し、初美に畏れなり敗北感を持たないのか、薄っぺらな徳山になぜ初美が、全てを捨ててもいいなどと従属的な意識で接するのか、まったく理解できませんでした。イケメンの前には女なぞひれ伏すものだという意識なのでしょうか。
そして、初美を博学で度胸がある女と描きながら、その初美の内面を描くことなく、徳山の/男の視点/外面だけを捉えた視点から、最後まで「不思議ちゃん」レベルでしか捉えられずに終わるのも、キャラ設定としてもったいない思いが残ります。
ほとんど内面的な魅力を感じられない、無内容な主人公の視点から、美貌で性的に奔放な嗜好の知的で教養と経済力を持つ女性が、一方的に自分を好きになり慕い従属を誓っている様子を描くという、男性作者/男性読者の自己満足的な傾向が顕著な(でも、「イケメンに限る」なので、通常の男性読者が素直に浸れるかは疑問がある)作品に思えました。
李龍徳 河出書房新社 2014年11月30日発行
第51回文藝賞受賞作