伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

テレビ・新聞が決して報道しないシリアの真実

2016-10-23 22:28:59 | ノンフィクション
 元在シリア特命全権大使だった著者が、2006年~2010年のシリア駐在期間の経験及び2010年の外務省退官後のシリア関係者との意見交換等の情報をもとに、シリアの政治・内戦等をめぐる情報について、マスコミの報道やアメリカ政府の主張が誤っていることを論じた本。
 著者の主張の内容は、基本的には、シリア政府(アサド政権)の説明が正しく、反政府勢力やそれを支持する姿勢のアメリカ政府の主張が誤りというものです。その根拠の中心は、アサド政権側や周辺の発言者に対する著者の個人的な面識等に基づく信頼性判断です。
 シリア情勢に限らず、ネットリテラシーでも、情報発信者の信用性に関する情報は、それが正確であれば発信された情報の価値を大きく左右し、また自らの行動(情報への信頼)の基礎とすべきものとなります。その意味で、著者がこのように言うことは、理解できるし正しい行動パターンであろうと思います。しかし、そういった根拠で発言している人を第三者である私たちが信頼すべきかは、また悩ましいところです。外交官としての付き合いを通じて個人的に親しくなった人々への身内びいきなり、友人の意見への評価が甘くなるようなことは誰にでもありがちですから。
 本の構成としては、2013年4月以前の民衆蜂起とカタール・サウジアラビアを中心とするアラブ連盟・アメリカの反政府勢力支援、内戦を扱った第1章、2013年4月以降の政府軍の攻勢、化学兵器使用問題、ロシアの仲介、トルコのアサド政権批判、イスラム国の台頭などを扱った第2章が大部分を占め、その後反政府側の諸勢力を紹介する第3章、各宗派を紹介する4章、関係各国政府の思惑を説明する第5章が配置されています。第3章以降は、情報としてはそれまでとの重複が多く、内容的にも第1章と第2章が読みでがあり、その後は付録的な感じです。


国枝昌樹 朝日文庫 2016年4月30日発行(単行本は2014年8月)
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