児童養護施設で育ち生みの親を知らない境遇が同じことを知り親友となった相田晴美から励ましのために教えられたエピソードをもとに書いた絵本「あおぞらリボン」で絵本大賞新人賞を受賞して時の人となった高倉陽子と、新聞記者となりその陽子にインタビューをしている晴美の前を、陽子の息子裕太のスイミングスクールの方を見ながら歩く不審な女性が通り過ぎ、その日裕太が行方不明となり、脅迫状が届き、陽子は韓国へ出張中の夫の親友岩崎と晴美とともに裕太を探し犯人の要求と真相を追うが…というミステリー小説。
読者を引っ張り続ける筆力はさすがだと思います。しかし、ラストの大逆転は、プロットとしては必然だとは思うのですが、人間ドラマとしてはどうでしょうか。私は、むしろ最後の大逆転がない方が、人間像として深みを感じるのですが。生まれ・血縁や、さらには育ち・環境も合わせた境遇を乗り越え、解き放たれて人格形成することを、作者自身が信じていない/そこにリアリティを感じられない、制約があるのでしょうか。
最後の大逆転を置いたことで、その前後で急速に毒が抜けてしまい、さらにはその後にとどめのような蛇足ともいえる小さな逆転がつけられ、真っ白なエンディングにつながります。高倉陽子をあまりにも世間知らずの善人に構築してしまったために、作品全体が漂白されてしまったような気がします。
おかげで暗くならずに読め、後味が悪くはない、のですが…

湊かなえ 双葉文庫 2015年10月18日発行(単行本は2011年10月)
読者を引っ張り続ける筆力はさすがだと思います。しかし、ラストの大逆転は、プロットとしては必然だとは思うのですが、人間ドラマとしてはどうでしょうか。私は、むしろ最後の大逆転がない方が、人間像として深みを感じるのですが。生まれ・血縁や、さらには育ち・環境も合わせた境遇を乗り越え、解き放たれて人格形成することを、作者自身が信じていない/そこにリアリティを感じられない、制約があるのでしょうか。
最後の大逆転を置いたことで、その前後で急速に毒が抜けてしまい、さらにはその後にとどめのような蛇足ともいえる小さな逆転がつけられ、真っ白なエンディングにつながります。高倉陽子をあまりにも世間知らずの善人に構築してしまったために、作品全体が漂白されてしまったような気がします。
おかげで暗くならずに読め、後味が悪くはない、のですが…

湊かなえ 双葉文庫 2015年10月18日発行(単行本は2011年10月)