生真面目で自信家で他人に忖度しない空気を読まない基本タメ口の成瀬あかりの膳所高校3年生の10月から京都大学1回生の年末までの様子を、近所の小学4年生北川みらい、父親成瀬慶彦、バイト先のスーパーのクレーマー客呉間言実、同時に「びわ湖大津観光大使」になった大学生篠原かれん、コンビを組んだが東京の大学に行った島崎みゆきの視点で語る短編連作。2024年本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りに行く」の続編。
成瀬のキャラで読ませる作品なのですが、成瀬自身は、大きな夢を口にするものの、たくさん言っていくつか叶えばいいという考えで、自分が変わった人物とは考えていないし実際困った人でもなく、ちょっと言葉遣いがふつうでない(RPGの村人のような by西浦航一郎)まじめに考えすぎる空気を読まないというだけで、言ってみれば女子高生/女子大生なのにおっさんキャラというくらいで、おっさんの読者からすればごくふつうの思考じゃないのと思えるのに、これで小説にできるのだから不思議なものです。一度見た顔と名前は忘れないとか、けん玉の腕が超一流とかはふつうのおっさんでは届きませんが。
成瀬が、200歳まで生きるという小学校卒業文集での将来の夢に向けて、朝食を「急激な血糖値の上昇を抑えるため三十回は噛むようにしている」(41ページ)、毎日9時に就寝している(44ページ)という健康的な生活をしている姿が微笑ましく思えます。
「成瀬は天下を取りにいく」で、2023年3月の発売時にはまだ高1のはずの成瀬の高3の夏(したがって2024年8月)までの話を書いてしまったため、本作ではすべてが発売時より「未来」の成瀬を描いているという不思議なことになっています。第4話と第5話(いずれも成瀬が大学1回生の春から暮れ)では作者が開き直ってか、2025年とはっきり書いています(151ページ、183ページ等)。やっぱり、ちょっと読んでいてぎょっとしました。
宮島未奈 新潮社 2024年1月25日発行
成瀬のキャラで読ませる作品なのですが、成瀬自身は、大きな夢を口にするものの、たくさん言っていくつか叶えばいいという考えで、自分が変わった人物とは考えていないし実際困った人でもなく、ちょっと言葉遣いがふつうでない(RPGの村人のような by西浦航一郎)まじめに考えすぎる空気を読まないというだけで、言ってみれば女子高生/女子大生なのにおっさんキャラというくらいで、おっさんの読者からすればごくふつうの思考じゃないのと思えるのに、これで小説にできるのだから不思議なものです。一度見た顔と名前は忘れないとか、けん玉の腕が超一流とかはふつうのおっさんでは届きませんが。
成瀬が、200歳まで生きるという小学校卒業文集での将来の夢に向けて、朝食を「急激な血糖値の上昇を抑えるため三十回は噛むようにしている」(41ページ)、毎日9時に就寝している(44ページ)という健康的な生活をしている姿が微笑ましく思えます。
「成瀬は天下を取りにいく」で、2023年3月の発売時にはまだ高1のはずの成瀬の高3の夏(したがって2024年8月)までの話を書いてしまったため、本作ではすべてが発売時より「未来」の成瀬を描いているという不思議なことになっています。第4話と第5話(いずれも成瀬が大学1回生の春から暮れ)では作者が開き直ってか、2025年とはっきり書いています(151ページ、183ページ等)。やっぱり、ちょっと読んでいてぎょっとしました。
宮島未奈 新潮社 2024年1月25日発行