身長160cm、体重35kgの拒食症の高校生赤猪子が母親とのマレーシア旅行中に元留学生の友人ゾーイーとツアーを抜け出してゾーイーの兄の別荘に行き、そこでゾーイーのお抱え運転手アブドゥルやゾーイーの友人鉱一と過ごすが、接待をかいくぐって拒食を貫こうとしてトラブるという小説。
ものを食べると腹の膨満感に耐えられず、そのカロリーを消費するために身体運動を続けるという主人公の体質・性行は、拒食の継続によって形作られ肉体が受け付けなくなっているのか、太るという強迫観念がなせる技なのか読んでいてよくわかりません。
赤猪子が何故にこの計画に踏み出したのか、親の手を逃れれば食べずにいられると思ったのか、その後どうするつもりだったのか、今どきの高校生という設定にしては無思慮に過ぎる感じがしますし、そもそもものを食べたくないというだけの動機でそういうことを思いつくものか。行動パターンの大半で、この赤猪子という主人公には理解も共感もできませんでした。ゾーイーも鉱一も行動が突飛ですし、人物としてよくわからないというか、よくわかるほどに人物造形が描かれていないように思えます。ストーリーも収まりがない感じで、娯楽読み物として読むべきものではありません。
安住の地かと思えばまた地獄がある「乗越駅の刑罰」(筒井康隆)を高く評価する向きやジュンブンガクの雰囲気・香りの好きな人向けの作品かなと思いました。
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高尾長良 新潮社 2013年2月25日発行
新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作
ものを食べると腹の膨満感に耐えられず、そのカロリーを消費するために身体運動を続けるという主人公の体質・性行は、拒食の継続によって形作られ肉体が受け付けなくなっているのか、太るという強迫観念がなせる技なのか読んでいてよくわかりません。
赤猪子が何故にこの計画に踏み出したのか、親の手を逃れれば食べずにいられると思ったのか、その後どうするつもりだったのか、今どきの高校生という設定にしては無思慮に過ぎる感じがしますし、そもそもものを食べたくないというだけの動機でそういうことを思いつくものか。行動パターンの大半で、この赤猪子という主人公には理解も共感もできませんでした。ゾーイーも鉱一も行動が突飛ですし、人物としてよくわからないというか、よくわかるほどに人物造形が描かれていないように思えます。ストーリーも収まりがない感じで、娯楽読み物として読むべきものではありません。
安住の地かと思えばまた地獄がある「乗越駅の刑罰」(筒井康隆)を高く評価する向きやジュンブンガクの雰囲気・香りの好きな人向けの作品かなと思いました。
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高尾長良 新潮社 2013年2月25日発行
新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作