伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

肉骨茶

2013-04-04 22:19:56 | 小説
 身長160cm、体重35kgの拒食症の高校生赤猪子が母親とのマレーシア旅行中に元留学生の友人ゾーイーとツアーを抜け出してゾーイーの兄の別荘に行き、そこでゾーイーのお抱え運転手アブドゥルやゾーイーの友人鉱一と過ごすが、接待をかいくぐって拒食を貫こうとしてトラブるという小説。
 ものを食べると腹の膨満感に耐えられず、そのカロリーを消費するために身体運動を続けるという主人公の体質・性行は、拒食の継続によって形作られ肉体が受け付けなくなっているのか、太るという強迫観念がなせる技なのか読んでいてよくわかりません。
 赤猪子が何故にこの計画に踏み出したのか、親の手を逃れれば食べずにいられると思ったのか、その後どうするつもりだったのか、今どきの高校生という設定にしては無思慮に過ぎる感じがしますし、そもそもものを食べたくないというだけの動機でそういうことを思いつくものか。行動パターンの大半で、この赤猪子という主人公には理解も共感もできませんでした。ゾーイーも鉱一も行動が突飛ですし、人物としてよくわからないというか、よくわかるほどに人物造形が描かれていないように思えます。ストーリーも収まりがない感じで、娯楽読み物として読むべきものではありません。
 安住の地かと思えばまた地獄がある「乗越駅の刑罰」(筒井康隆)を高く評価する向きやジュンブンガクの雰囲気・香りの好きな人向けの作品かなと思いました。


高尾長良 新潮社 2013年2月25日発行
新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作
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写真、撮られ術

2013-04-03 21:27:47 | 実用書・ビジネス書
 証明写真で印象をよくするためのテクニックを解説した本。
 基本は笑顔ということで、この本でもありがちな笑顔の練習、口角を上げる、そのためのマッサージとかも書いているのですが、それよりもイメージトレーニングのところが微笑ましい。ディズニーランドに入場しシンデレラ城に向かう道にミッキーとミニーがいて手を振ってくれる、走って近づき、ミッキーとミニーも走ってくる、そしてぎゅっとハグ、「やっと逢えたね…ミッキー、ミニー」(37~38ページ)…これを運転免許センターのカメラの前でもイメージしましょうって(39ページ)。なんか、これだけでも読んでみてよかったと思えるから不思議。
 この他に証明写真機は意外に実力がある、むしろヘアスタイルや服の色、姿勢(座るときはおしりを少し上げて太ももに重心を置いた前傾姿勢)などに気をつけた方が印象がいいとか、できあがった写真のきれいなカットと貼り付けで印象がだいぶ違うなど、思わぬことに気付かされます。
 絞ったワンテーマについての読みやすく見やすい本という、出版のアイディアとしても好感が持てる本でした。


永田昌徳 講談社 2012年5月19日発行
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レアケース

2013-04-01 01:06:45 | 小説
 大津市の福祉課で生活保護受給者の調査等を行うケースワーカーの石坂壮馬が、不正蓄財する金持ちから盗んで生活保護受給者に配る「ねずみ小僧」の疑いをかけられ、ねずみ小僧の正体を探るというミステリー小説。
 生活保護の実情をめぐって、正義や平等が実現されていないと論じていますが、基本は不正受給者や生活保護への甘えなどを批判する論調で、行政とタカ派マスコミ寄りの姿勢が感じられます。
 ミステリーとしては、一介の新米公務員の石坂壮馬が思いつき的に動いて解決してしまう過程がちょっと駆け足気味かなという印象を持ちました。
 それにしても、こういう作品でも人権派弁護士というのはとても嫌われているのだなと実感してしまいます。生活保護受給者に対する論調から見れば予想すべきことではありましょうけれど。


大門剛明 PHP研究所 2012年8月22日発行
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