なあむ

やどかり和尚の考えたこと

アイヌ語と地名 5 猿羽根

2008年11月11日 21時20分20秒 | アイヌ語と地名

最上地方の地蔵尊霊場として信仰を集めているのが「猿羽根山地蔵尊」だ。

「さばね」という言葉、「猿・羽・根」という当て字からも意味が読み取れない。

「猿が一跳ねで越せるような山峡の迫った場所」という説もあるようだが地形には合わない。

似たような地名は東北に散在し、岩手県の佐羽根、青森県の佐羽内、秋田県のサルハナイ(漢字が出ない)などだ。

これをアイヌ語で読めば「サル・パ・ナイ」で、「サル」や「サラ」は谷地と同じように、葦原の湿地の意味。「パ」は上手、「ナイ」は川、沢となる。「ナイ」は「ネ」に変化しやすい。直訳すれば「湿地の上手の沢」となる。

最上の猿羽根という地名は、元は今の地蔵尊がある山ではなく、麓の富田のあたりを指していたらしい。私の父などは富田の林昌院さんを「猿羽根のお寺」と呼んでいて、不思議だと思っていた。地元の人も富田を猿羽根と呼ぶらしい。

元々の湿地帯であった場所は、稲作が入ってきてからほとんど田に変わっていった。田に変わるとともに地名にも変化がおこることがあった。「富田」という地名は文政年間に改名したものという。

猿羽根山は、元猿羽根村の山ということから呼ばれたものであって、地名の原点ではないということだろう。

羽根の生えた猿がいたわけでもなさそうだ。