なあむ

やどかり和尚の考えたこと

橋本夢道

2009年01月20日 22時21分22秒 | 今日のありがとう

朝のNHK連続テレビ小説をBS2でご覧の方も多いことだろう。実は私もその一人。その後の番組も続けてご覧の方も多いのでは・・・。

以前は四国八十八ヵ所巡礼のプログラムだったが、最近は『私の一冊、日本の百冊』という番組になっている。ついつい見ているうちに興味が湧いてきて、こちらも連続してみている。

各界の著名な人々が、それぞれ「自分の一冊」を紹介していくという内容だ。本との出会いも人との出会いのように、人生にとって大きな転換をもたらすことがある。自分も読んで感銘を受けた本の紹介がされたりすると「うん、うん」と共感しながら見ている。また、まだ読んでいない本には読んでみたい衝動に駆られる。

先日の放送で紹介されたのは、俳人金子兜太さんが選んだ「橋本夢道句集『無禮なる妻』」だった。

この番組ではじめて橋本夢道という人を知ったのだが、夢道は戦中戦後の貧しい時代を生きた俳人で、心から戦争を憎み嫌い、いわれなき投獄という目に遭いながら、貧しさの中で必死に生き、妻を愛し、貧しさを笑い飛ばすような自由律の俳句をよんだ人だ。

その中で紹介された一句。

  世の中や 金も欲しいが 一度大声で 笑いたい

確かに生きるのにお金は必要だ。それは、生きるのに必要なのであって、それ以上のものではないはず。しかし、どこまでが必要な分なのかが不明瞭となり、その範囲がとてつもなく大きく広がり、際限なく求め続けてしまった結果、かえって苦しみを増しているのが現代社会なのだろう。

大声で笑い飛ばしてしまえるぐらいの範囲で止めておかないと、生きていて決して楽しくない人生になってしまう。大声で笑っても腹がふくれるわけでもないどころか、かえって減ってしまうだろう。だけど、腹が減っても楽しく生きられる方がいい。

  無礼なる妻よ 毎日 馬鹿げたものを食わしむ

  妻よ おまえはなぜ こんなにかわいんだろうね

誰も貧乏が怖い訳じゃない。みんなが貧乏であれば何も怖くない。みんなが腹一杯食べているのに自分だけ食べられないという孤独感と、どんどん離れていって取り残されるという社会の格差が怖いのだ。

貧乏であることを笑ってしまえるようになれたらいいね。