なあむ

やどかり和尚の考えたこと

吉野弘「生命は」

2014年04月14日 20時58分25秒 | ふと、考えた

4月1日の山形新聞に吉野弘さんの詩が載りました。

吉野弘は酒田市生まれで、今年1月に87歳で他界されました。

「祝婚歌」が有名ですね。

新聞に載ったのは「生命は」と題された詩。

自分が以前からボンヤリ感じてきた思いを、そのまま表現してくれたようでうれしく読みました。

全ては縁によって成り立っている、とは釈尊の教えですが、それと通じる真理を、こんなにも平易な言葉で簡潔に表現してくれた詩に感動を覚えます。

以下です。

生命は

自分自身だけでは完結できないように

つくられているらしい

花も

めしべとおしべが揃っているだけでは

不充分で

虫や風が訪れて

めしべとおしべを仲立ちする

生命は

その中に欠如を抱き

それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分

他者の総和

しかし

互いに欠如を満たすなどとは

知りもせず

知らされもせず

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに

うとましく思うことさえも許されている間柄

そのように

世界がゆるやかに構成されているのは

なぜ?

花が咲いている

すぐ近くまで

虻の姿をした他者が

光をまとって飛んできている

私も あるとき

誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき

私のための風だったかもしれない