これからお話しするのは、私の青春に訪れた悲しい事実の物語です。
私は、学生時代痔持ちでした。症状は「脱肛」。
時折イボのようなものが外に顔を出し痛みます。
指で中に押し込むと、平常に戻り痛みもありません。
そんなことを何度か繰り返していましたが、深酒が過ぎ、銭湯にも行かず、不摂生が続くと、てきめんに大きな顔を出し、なかなか戻らなくなります。
いよいよ駄目かなと観念したのは大学3年の終わりの春で、意を決して病院に行くことにしました。
世田谷区の総合病院に行くのに経堂のアパートからバスに乗らなければなりませんでした。
歩くたびにズキズキ痛むので、階段を下りるのにも冷や汗が出ます。
バスに乗るにもゆっくり慎重です。
バスが揺れるたび、おしりに緊張が走り、キューッと筋肉が収縮し激痛が走ります。
他の乗客には気づかれないように表情には出しませんが、自分の中では頭とおしりの闘いが続いていました。
バスを降りる時もゆっくり慎重にしなければなりませんが、運転手と乗客は「早く降りろ」という目で責め立てます。「分かっているよ!、少しは老人の気持ちになってみろ!」という、訳の分からない怒りが満ちていました。
どうにか、病院にたどり着き、これで救われたと思ったのは、つかの間で、それは悲劇の序章でしかありませんでした。