本日は「日本霊異記の世界」の第6講「盗みという罪悪」と第7講「悩ましき邪淫」を読み終えた。
仏教が伝来してくるとともに、これまでの社会のあり様に大きな変革をもたらしたことが説話に反映されているという視点が提示されている。その中で仏教の不偸盗と不邪淫という五戒のうちの二つについて取り上げている。
「親子のあいだの金銭や財物の貸借が揉め事に発展するというのは現代社会でも起こりうることだが、財物が個人のものとして認識され、経済活動が優先されるような社会が現れてきた・・。人びとがいちばん敏感に感じている不安に入り込みながら、仏教は日本列島に暮らす人びとの心をつかんでいった・・。・・・八世紀のひとつの姿が象徴化されている。母系的な性格を持つ年老いた母が、律令制度の中で男系的な性格を強める息子とのあいだに軋轢を生じさせるという関係性が読み取れる・・。」(第6講)
「(説話にある)母は「生まれつき多淫多情な女で、むやみに男と交わるという性癖をもっていた」とその性格が語られている。この価値観の奥に、母系的な論理が息づいていたとすれば、女が複数の男と関係を結ぶことは、必ずしも糾弾される行動とは言えない・・。律令的な論理によって日本列島全体が均質化されてしまう以前の男女関係が、浮き上がっている。」(第7講)
列島の社会が母系から男系的な社会に、律令と仏教によって政治権力によって変容させられる大きな軋轢が反映しているのであろう。平安時代まで母系的な社会は続いていることに社会の高い壁が見える。
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