団栗も椎の実もむろん秋の季語である。未だこの暑さが続いていると秋の気分にはならないのだが、トンボの姿も毎日必ず見かけるようになり、確実に秋は始まっている。
★団栗の寝ん寝んころりころりかな 小林一茶
★椎の実の落ちて音なし苔の上 福田蓼汀
★分け入りで独りがたのし椎拾ふ 杉田久女
★病間や拙なく回り木実独楽 石田波郷
★団栗を拾ひ良き顔見せに来る 大串 章
第1句、語句の意味を連ねて意味が通じるように解釈しても面白くはない。「ころりころり」と口の中で17音を転がして楽しむ句であろう。
そのような団栗が明治の近代の句になると、「独りがたのし」と自意識過剰な近代人が誕生して、その感性を競うようになる。団栗も面食らったであろう。よりにもよって「団栗」から「孤独」が引き出されたのであるから。