Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

実千両

2020年01月12日 11時36分52秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 一時太陽が顔を出したが、すぐに隠れてしまった。再び顔を出すような雲ではない。これほどまでに雲の多い冬の空は記憶にはない。

 時々戸建ての家の庭の片隅に千両の赤い実が目を惹きつける。常緑樹の緑の葉に小さな赤い実が映えて美しい。冬枯れの庭の数少ない色彩を添えて目立つ。しかし赤い実は花ではないために強い自己主張はちがちがう。どちらかというと静的なたたずまいの印象を持つ。
 しかし次の二句はこの実千両に動きを添えている。



★山より日ほとばしりきぬ実千両     永田耕一郎
★いくたびも病みいくたび癒えき実千両  石田波郷

 第1句、低い太陽の光線による影はあっという間にこちらに迫ってくる。まさに「ほとばしる」ように進んでくる。そして眩しい。この冬の太陽の光線がセンリョウの赤い実を照らす。この太陽の「ほとばしり」を受けとめてセンリョウ自身も光に共鳴し振動する。

 第2句、病み、癒えを長い周期で繰り返す。そのサイクルの中でしみじみと赤い実千両を認識したのであろう。退院が冬なのか、入院が冬だったのかは不明である。しかしその様が希望と安堵の赤に見えたのであろう。静かなたたずまいのセンリョウが時間を超えて目の前に再生する。過去と現在を行き来している。
 

 



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