年寄りの思い出話をひとくさり。
雪が氷になっている箇所がようやくほぼ解消になっている。一部幹線道路の北側の歩道などではまだツルツルの箇所もある。オフィス街でも散見される。そういうところを歩くときはふと周囲を見渡してどのような企業や商店が並んでいるか見てしまう。
住宅街で高齢者が多いところはなかなか自宅前の雪掻きもままならないことは十分理解できるが、大きな企業や繁盛している商店などがあると、「オフィスや店の前の雪掻き位やってほしい」と思う。地域や周辺への配慮に欠けている、と思ってしまう。
長年道路管理の仕事をしてきた私は、雪が降ればまずは保育園・幼稚園・小学校周辺、病院や高齢者施設周辺の雪掻きを優先することを教わって実践してきた。また橋の上、日の当たらないコンクリート舗装の急斜面、階段のついた道路なども優先で、毎年引継ぎで地図に記載していた。
突然の要望であっても、高齢化で対応が難しいという団地や商店街などもできるだけ要望に応えるよう努力をしたつもりである。中学、高校などには、雪掻きも教育の一環として生徒を巻き込んで対応してもらうことなどをお願いして理解を得た記憶もある。
それでも「家の前や店の前を早く除雪しろ」と怒鳴って電話をしてくる人で電話が鳴りっぱなしになった。断るのに時間を要し、他の機関との連絡や、本当に必要な対応に支障を来してしまうことも多かった。
作業班から無線が入り、現地で「俺の店の前を先にやれ」と食い下がられていると情報が入り、地元に急行したことも記憶している。地元のかたと私と喧嘩になりそうになった。隣の古い商店のオヤジさんがその若い店主をたしなめに来てくれなかったらどうなったか、いま思うと冷や汗ものであった。まだ30歳そこそこで私も血の気の多かった自分を思い出して今でも苦笑している。あの若い店主ももう60代半ばであろう。どうしているのだろう。
雪に埋もれた団地内の私道に接した駐車場から車が出られないと、執拗に何度も電話をしてくる人にも困ったことがある。私道は土地の所有者や団地の管理組合で管理するものであることをいくら説明しても、納得しない。その程度の雪で走行できないならば、公道に出ても危険だよと、いくら諭しても口が止まらない人であった。
私の経験では、マンションの前の雪掻きに住民の協力は得られることは少なかった。特に出入りを厳しく制限してセキュリティが厳しいマンションほどその傾向は強かったと思う。住民が地域との接触をしたがらないのであろう。清掃を請け負っているかたが時々やってくれている程度である、というのが私の感想である。むろんそうではないところもたくさんあるとは思うが‥。
緊急事態になると人間の本性が現れるね、といつも雪害対策が終わったときの打ち上げをする居酒屋で、疲れて半分眠りながら慰め合ったのもいい思い出である。
古くからある活気のある商店街、普段からさまざまなボランティア活動が盛んな住宅地の自治会、日頃から道路清掃などの活動をしてくれている企業などのある地域は、雪掻きや事前の融雪剤散布、大雨対策などを率先してこなしてくれる。地域の幼稚園や保育園・小学校の周囲の雪掻きまで手を伸ばしてくれる。それらに頼ってしまってはいけないのだが、災害時にこそ地域の力は発揮されるものだと実感してきた。