歌川広重の「冨士三十六景」から「甲斐大月の原」。大月のそばの岩殿山付近という説もあるらしいが、「大月の原」がどこにあったかは不明とのことが解説に記載されている。
人は誰もおらず、晩秋の草花を描くことに力点が置かれている。時にススキと女郎花の色合いが引きたつ。中継のススキの黒い穂も印象的である。
広重らしさ、というよりも私は酒井抱一の秋草図を思い浮かべてしまった。最初目にしたときは、水の流れが大きな川なのか、小さな水路なのか、よくわからなかった。
大きな流れとしては、草花との釣り合いが取れずに現実感はない。
視点が低く、それも人間というよりも秋の虫の視点のように草を見上げる視点に思える。そして虫の音が聞こえてきそうである。
尾形光琳の紅白梅図屏風や、酒井抱一の夏秋草図屏風のパロディの様にも感じた。
左右対称の富士山と手前の山並み(御坂山系か)とススキの原の間には距離があり、この原の広さがかなりのものであることをうかがわせる。よく見ると草原も左右対称に近く、西洋画の構図に影響を受けたとも解釈できないだろうか。
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