風に揺れる南側の5本の欅の音を聞きながら、部屋の片づけを少々した。欅は風に枝が大きくしなり、独特の音を立てる。
今吹いているくらいの風のときは、不気味で私たちの不安を掻き立てるように聞こえる。もう少し強い風になると、自ら枝を落して風の抵抗を少なくしようとする。その音は、自らの枝を落すときの悲しみのように聞こえる。悲鳴というのとは違う。音というも適切ではないかもしれない。すすり泣くような切ない欅の「声」である。
微風ならば不気味さはない。逆に風に枝と葉を遊ばせて、楽しんでいるような音である。枝を落すことはまずないからであろう。
今吹いている風で欅は警告を私たちに発しているといえる。10mを超える風なると、すすり泣きになり、20mを超えると今度は、風自体の音が大きくなり、葉擦れの音や枝が震える音、すすり泣きのような声はかき消されてしまう。
この次に欅が発する音は、自らの枝を落すときの気合に満ちた叫び声である。
いつもは台風のあとは団地の欅の枝を集めるのが大変である。今回はこれ以上風が強まらなければ、いいのだが。
不思議なのは、ツクツクホウシの声が聞こえないこと。昨日聞いたツクツクホウシは一匹か二匹、しかも弱々しく鳴いていた。この団地の今年最後のツクツクホウシだったのではないか、という想像もできる。確実に秋が深まっているのだろう。果たして明日はツクツクホウシが鳴くのだろうか。