メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『雲のむこう、約束の場所』(2004)

2009-11-29 16:39:37 | マンガ&アニメ
『雲のむこう、約束の場所』(2004)
原作・脚本・監督:新海誠 キャラクターデザイン・総作画監督:田澤潮、
美術:丹治匠・新海誠 音楽:天門
声の出演:吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香、石塚運昇、井上和彦、水野理紗 ほか

「アニメまとめ」カテゴリー参照



「わたしだけが、ぼくだけが、世界にひとりきり とり残されている、そんな気がした」


trailer

日本のアニメ映画は実写に劣らない、むしろ超えるほどの感動を与えるクオリティと力があるなあ。
『銀河鉄道の夜』を観た時の郷愁感、『ナウシカ』を観た時の壮大なテーマ感、
『時をかける少女』を観た時の異次元世界感がよみがえってきた。
SFであっても人間のあったかみがあって、現実のようでもあり、夢のようでもある。
正直、「平行宇宙」とか、日本が南北に分かれてたりとか、時代設定などの詳細が語られないだけに
ついていけない単語もたくさんあったけど、中学最後の夏の甘酸っぱい恋の思い出や、
純粋で、透明な、誰にでも1つはココロのどこかに大事にしまっていそうな部分にリンクする感動がのこる。


story
戦後、南北に分かれた日本。ユニオンに支配された蝦夷には、遠くは東京からでも見えるほどの高いタワーがそびえ立っている。
中学3年生の藤沢浩紀と白川拓也は、夏休みの間、部品工場でバイトをしながら密かにヴェラシーラ(白い翼の意)と名付けた飛行機を製作し、その飛行機で塔の向こうの世界を見ようと夢を見ていた。
同級生の沢渡佐由理に憧れていた2人はふとその夢を話してしまい、夏休みに彼女に飛行機を見せ、
いつか一緒に塔まで飛ぼうと約束をする。

それから3年後。約束した日から沢渡は突然姿を消し、2人は飛行機製作を止めてしまった。
拓也は塔と平行宇宙の関係を研究するチームで活躍する一方、浩紀は東京で無為に過ごしていた。
沢渡が3年間謎の眠りに落ち、塔と平行宇宙ともつながっていると分かり、2人は再会する。
部品工場の岡部は実はテロ組織のリーダーで、拓也はその活動に関わっていた。

沢渡は1人きりで別次元にいて夢を見続けている。時々浩紀ともつながることから、
浩紀はあの日の約束を果たせば、沢渡が目を覚ますのではないかと思い、飛行機を飛ばすことを決意。
浩紀は沢渡を乗せて塔へ向かい、蝦夷の大地を滑空する。。


吉岡秀隆がからんでる仕事をチェックしていてアニメの声優にも挑戦してると知って借りてみた。
近所のビデオ屋のスタッフが書いたと思われるポップには、ひとしきり作品を褒めた最後に
「一つだけ欲を言えば、吉岡秀隆の声じゃないほうがよかった」と書いてあった
それを確かめるためにも余計観たくなったワケだけど、全然違和感はなかったけどなあ。
たしかに彼の声質や朴訥な喋り方にはクセがあって、アニメに自分なりの先入観がある人なんかには邪魔かもだけど。
それにしても、どんだけ北海道にからむんだ、この人はw
拓也の声は萩原聖人。けっこういろいろな作品で共演してる縁のある2人。フシギ。


少年の夢や冒険はいつも、その成功を待ち、共に喜んでくれる女性の存在によって完成する。
幼い頃の絶対的な孤独感、焦燥感が根底にあって、わたしたちはそこに共鳴して感動するのかもしれない。
優しい音楽とともに、いつまでもこの優しい郷愁感に浸っていたい余韻が残った。

新海誠が脚光を浴びるきっかけになった「ほしのこえ」も観てみたい。


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『天平の甍』(1980)

2009-11-29 12:53:35 | 映画
『天平の甍(いらか)』(1980)
監督:熊井啓 原作:井上靖
出演:中村嘉葎雄(普照), 大門正明(栄叡), 浜田光夫(玄朗), 草野大悟(戒融), 井川比佐志(業行), 常田富士男(景雲),藤真利子(平郡郎女), 高峰三枝子(与呂志女),吉田日出子(小芳), 梅野泰靖(吉備真備),高橋幸治(阿倍仲麻呂) ほか

MKさんおススメの1本が近所のビデオ屋の100円VHSコーナーに見つけたので早速借りてみたv
第九次遣唐使で大陸に渡った留学僧たち。高僧を招くという命を受け、後に鑑真和上と会う。
普照と栄叡を軸とした若い留学僧たちの運命を描く。

この頃の船旅は旅なんてもんじゃなく、難破船もいいとこだ/驚
帆船で風に任せて大陸に向けて出発し、4艘行って1艘どっかの陸地にたどり着ければ運がいい(少なっ!
毎回とんでもない嵐に出遭って、積んだ荷物を全部捨てなきゃならないなら積む意味あるのかな???
船内で熱病にかかったり、中国にわたってからはホームシックにかかったり。
同じ船で渡った仲間もちりぢりになって、そのつど胸が引き裂かれるような別れがある。
歴史本では「○×年にだれだれさんが渡来しました」てひと言で書かれてる裏に、
実はこんなに人間臭い壮絶なドラマがあるなんてなかなか想像できないものだ。
どこまでも、どこまでも壮大に拡がる中国の大地、自然もみどころのひとつ。

story(概略)
師匠を請じて、日本に戒律を施行したいとゆう願いを持って、留学僧が遣唐使として派遣される。
蘇州から洛陽へ。戒融は「この国には何かがある。それを見極めたい」と1人旅立つ。
唐に30年もいる景雲は飲んだくれで、やっと日本へ帰れる船に乗ったのに嵐に遭って沈没。
「あんな無為に過ごしていた者のことなどどうでもいい」と言った僧を叱りつける業行
「誰も無為に過ごしたかったわけじゃない。どうしていいか分からずにただただ時間だけが過ぎていったのだ」
そういう業行もまた正しい経典を日本に広めたいために写経を続けて30年あまり経っていた。

栄叡、普照、玄朗は高僧鑑真に伝戒の師僧を紹介してもらうべく揚州へ行く。
希望者を募っても誰も行くと言わないので、和上自身が行くと決意。すると弟子も次々と続いた。
唐は和上が国外に出ることを禁じたため、密航を何度も試みるが、弟子が密告したり、嵐に遭ったりして失敗。
5度目あたりで漂流した後に海南島にたどり着く。その間、和上は失明し、栄叡は病死。
普照は、還俗し妻子もいる玄朗と再会し喜びあう。

待ちに待った遣唐使船が来て、許可ももらったのに直前になって密航の手助けはできないと乗船を断られる。
警備?の者たちに訴えて熱意が通じ、一行は出発するが玄朗は妻子とともに中国に残る。
ついに九州沖に着いた一行は奈良に到着。さまざまな文化、薬、技術も伝えられ、和上は大和の地で生涯を終えた。


今作の中心人物といえる普照役の中村嘉葎雄さんを調べてみたら、なんと!『20世紀少年』の神様役の人だった!
戒融役の草野大悟もギラギラした眼をして印象的。その後、戒融はインドまで行ったのだろうか?

陰陽師で有名な安倍晴明は、阿部仲麻呂の一族の子孫だと書いてあったのも興味深い。
百人一首にも選ばれた一句がのこっている。

「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」
(大空を見渡すと、東の空に美しい月が出ている。あの月は故郷の奈良、春日の山に出たあの月なのだなあ)

百人一首タイピング大会


▼photo:
唐招提寺展 国宝 鑑真和上像。日本最古の肖像彫刻とされている。
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