■『ソーネチカ』(新潮社)
リュドミラ・ウリツカヤ/著 沼野恭子/訳
図書館でなにげに見かけた雪の中を歩く少女の赤い帽子の表紙絵と、わたしの好きなお手頃サイズが気に入って、
「本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカ」という設定にも共感を持ち、借りてみた。
本の裏には柴田元幸さんの紹介文もある。この人の名前よく見かけるなあ!
ロシアってゆう、あまりに日本とは文化も歴史もかけ離れた異国の地から生まれた文学、映画などに触れるにつけ、
なんとなく理解したようでいて、きっと根底に流れる心情、政情などにはちっとも近づけない気がして、それが余計に興味をそそる。
▼あらすじ
子どもの頃から本ばかり読んでいて、虚構の物語も現実と同じように魂を捕えてやまなかったソーネチカ。
図書館員となって、地下倉庫で本分発揮し満足していたが、ロベルト・ヴィクトロヴィチが図書館を訪れ、
ほとんど電撃的に伴侶だと見極め、求婚してから、彼女の人生は一変する。
芸術家に囲まれて絵を描いたり、政治的な活動から拘留され、
保護観察のもと引越しを繰り返しているようなロベルトとともに、
ソーネチカはすっかり本のことを忘れ、一人娘ターニャを産んで、毎日が幸せの絶頂で、
「なんてこと、なんてこと、こんなに幸せでいいのかしら・・・」とつぶやいていた。
ターニャは母親にまるで似ることなく自由奔放で早熟に育ち、興味があるのは男の子ばかり。
勉強もせずにヘタなフルートを吹く彼女の周りには、後に著名となる音楽家ほか取り巻きができる。
ターニャの通う夜間学校の物置に住みながら掃除をして授業を受けているヤーシャに憧れる。
ヤーシャは孤児院を抜け出し、女優を目指していたが、その白い肌、神秘的な性格にロベルトは魅了される。
ソーネチカの家に居候することになったヤーシャは、孤児院時代の生きる術だった幼児売春の流れで
ロベルトと付き合いだし、男性観を変える。ロベルトも触発され絵を描きはじめる。
アトリエでの2人の密会にソーネチカも気づくが、、、
p.107
「人生ってなんてうまくできてるんだろう! 老年にさしかかったあの人にこんな奇跡がおとずれて、
あの人のなかの一番大事なもの、絵の仕事にもう一度立ち戻らせてくれたなんて」
ソーネチカは「足ることを知る」女性だ。世間的にどう思われようとも、
愛する者の幸せを考えることが自身の幸せでもあることを疑わない。
彼女が愛して止まない本を1冊読み終えたかのような、女性の一生を終え、
読者もなんだか夢から覚めたような深い感動に包まれた。
登場人物には実在する人も含まれているようだ。
風変わりなヒロインとその家族を描いている著者ウリツカヤの文体もまた特異で、とても魅力的だった。
最後に広告が載っていた『花粉の部屋』ゾエ・イェニー/著 平野卿子/翻訳 もきっとステキなんじゃないだろうかと期待大。
<気になった単語>
・カバラ=ユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想。
・光輝の書=カバラ思想の根本経典。13世紀にスペインでカバラ研究活動をしていた「モーセス・デ・レオン」(Moses de Leon 1250~1305)が編纂したものと推測されている。
・エピケイレス=自由にものを考える人間
・主知主義=しゅちしゅぎ。感情や意志よりも知性・理性の働きに優位を認める立場。主知説。⇔主意主義/主情主義。
・ウラジーミル・ヴィソツキー
・ワットマン紙=純白の厚地の水彩画用紙。1760年に英国のワットマンJ.Whatmanが麻のぼろ布から漉(す)き始めたもの。
・枡(ます)織り=表面に枡形の凹凸を織り出した織物。木綿の敷布などに用いられる。蜂巣織り。
リュドミラ・ウリツカヤ/著 沼野恭子/訳
図書館でなにげに見かけた雪の中を歩く少女の赤い帽子の表紙絵と、わたしの好きなお手頃サイズが気に入って、
「本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカ」という設定にも共感を持ち、借りてみた。
本の裏には柴田元幸さんの紹介文もある。この人の名前よく見かけるなあ!
ロシアってゆう、あまりに日本とは文化も歴史もかけ離れた異国の地から生まれた文学、映画などに触れるにつけ、
なんとなく理解したようでいて、きっと根底に流れる心情、政情などにはちっとも近づけない気がして、それが余計に興味をそそる。
▼あらすじ
子どもの頃から本ばかり読んでいて、虚構の物語も現実と同じように魂を捕えてやまなかったソーネチカ。
図書館員となって、地下倉庫で本分発揮し満足していたが、ロベルト・ヴィクトロヴィチが図書館を訪れ、
ほとんど電撃的に伴侶だと見極め、求婚してから、彼女の人生は一変する。
芸術家に囲まれて絵を描いたり、政治的な活動から拘留され、
保護観察のもと引越しを繰り返しているようなロベルトとともに、
ソーネチカはすっかり本のことを忘れ、一人娘ターニャを産んで、毎日が幸せの絶頂で、
「なんてこと、なんてこと、こんなに幸せでいいのかしら・・・」とつぶやいていた。
ターニャは母親にまるで似ることなく自由奔放で早熟に育ち、興味があるのは男の子ばかり。
勉強もせずにヘタなフルートを吹く彼女の周りには、後に著名となる音楽家ほか取り巻きができる。
ターニャの通う夜間学校の物置に住みながら掃除をして授業を受けているヤーシャに憧れる。
ヤーシャは孤児院を抜け出し、女優を目指していたが、その白い肌、神秘的な性格にロベルトは魅了される。
ソーネチカの家に居候することになったヤーシャは、孤児院時代の生きる術だった幼児売春の流れで
ロベルトと付き合いだし、男性観を変える。ロベルトも触発され絵を描きはじめる。
アトリエでの2人の密会にソーネチカも気づくが、、、
p.107
「人生ってなんてうまくできてるんだろう! 老年にさしかかったあの人にこんな奇跡がおとずれて、
あの人のなかの一番大事なもの、絵の仕事にもう一度立ち戻らせてくれたなんて」
ソーネチカは「足ることを知る」女性だ。世間的にどう思われようとも、
愛する者の幸せを考えることが自身の幸せでもあることを疑わない。
彼女が愛して止まない本を1冊読み終えたかのような、女性の一生を終え、
読者もなんだか夢から覚めたような深い感動に包まれた。
登場人物には実在する人も含まれているようだ。
風変わりなヒロインとその家族を描いている著者ウリツカヤの文体もまた特異で、とても魅力的だった。
最後に広告が載っていた『花粉の部屋』ゾエ・イェニー/著 平野卿子/翻訳 もきっとステキなんじゃないだろうかと期待大。
<気になった単語>
・カバラ=ユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想。
・光輝の書=カバラ思想の根本経典。13世紀にスペインでカバラ研究活動をしていた「モーセス・デ・レオン」(Moses de Leon 1250~1305)が編纂したものと推測されている。
・エピケイレス=自由にものを考える人間
・主知主義=しゅちしゅぎ。感情や意志よりも知性・理性の働きに優位を認める立場。主知説。⇔主意主義/主情主義。
・ウラジーミル・ヴィソツキー
・ワットマン紙=純白の厚地の水彩画用紙。1760年に英国のワットマンJ.Whatmanが麻のぼろ布から漉(す)き始めたもの。
・枡(ます)織り=表面に枡形の凹凸を織り出した織物。木綿の敷布などに用いられる。蜂巣織り。