メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『モミの手紙』

2011-12-05 21:23:12 | 
モミの手紙
作:ロバート・フロスト
絵:テッド・ランド
訳:みらい なな
出版社:童話屋


▼あらすじ
街の商人が田舎にやってきて、「お宅のモミの木をクリスマスツリーとして売りたい」と言ってきた。
売る気はなかったが、「見るだけなら」と持ち主である老人は森を案内する。
一体いくらで買うつもりか尋ねてみると「1000本で30ドル」と低く見積もられてショックを受ける。

「詩人の仕事は、生きる歓びをうたい、時代を先読みすることにある」と前書きがある。

友人に宛てた手紙という形式のXmas本 写実的で、繊細な絵。
犬や馬、猫もいて、家族がいて、薪が積まれていて、冬用の野菜が蓄えられている。
紅葉に染まった冬の近い田舎の景色と、そこに住む人々の暮らしぶりがよく分かる。

バルサムモミの木をXmasツリー用に買い叩こうとする商人。
先に読んだ『ちいさなもみのき』と奇しくも真逆な展開。

「おまえたちは、ここにいることで、大事なたくさんの仕事をしている。
 生きているからこそ美しく、立派なのだよ」

ゴミゴミした街中で、人はせめて庭や部屋に緑を置くことで、
自然とのつながりをかすかにつないで、ココロの平穏を保っている。
けれども一度大地から切り離された植物はもう生きてはいられない。

そこで田舎の老人は、自慢の木を丸ごと1本絵に描いて、友人の手紙に添えた
「メリークリスマス。モミの木を一本、同封します」と。


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