メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ニッポン経済を救う!? 中国"爆買い"1兆円@週刊ニュース深読み

2015-11-17 20:22:53 | テレビ・動画配信
ニッポン経済を救う!? 中国"爆買い"1兆円@週刊ニュース深読み

 

こうしていろいろ事情を聞くと、かつての日本人とまったく同じだ。とくに団塊世代のバブル期。
日本製品が“安かろう悪かろう”と言われていた時代もあったし、
日本人がハワイをはじめ、そこらじゅうの海外に買い物に行って、
写真を撮りまくったり、たくさん迷惑かけてきたことも思い出さないとね。

 
1隻に5000人以上乗ってくる

 


3つの壁がなくなった


「反日」
騒いでいるのはメディアの影響が大きい。中国の一般市民は、日本人がハワイなどでたくさん買い物してしまう感覚と一緒。
母親は子どものために、より安全なモノを求めるし、「日本人は嫌い」という人は少ない。

「円高」
円安のため、国内で関税がかかる輸入品を買うより安い。

「消費税」
昨年10月から免税品目が一気に増えた


購買層の変化~中間層が増加
 

以前は、来日したまま行方不明となって不法労働する人が多かったため、
富裕層に限られていたが、今は中間層が増え、観光客として受け入れるようになった。


売れ筋商品の変化~人気商品はコロコロ変わる


以前の定番は「炊飯器」「温水洗浄便座」などが主流だったが、
今は薬、オムツなど、直接肌に触れるモノ。日本製の安全性が高く評価されている。

例:


「南部鉄器」
アフタヌーンティーにオシャレ。鉄分が摂れるという健康志向。

「ランドセル」
品質が良く丈夫、オシャレなバッグとして使用。「ちびまる子ちゃん」や「ドラえもん」などのアニメを見た子どもたちから人気が高まった。


「人間ドック」~ツアーにセットされている「メディカルツーリズム」

病院のスタッフが親切、最新医療が受けられる

「投機目的の不動産」

山手線内のマンションを、オリンピックを見越して買っている人が384万人(1兆円超え
自分は住まずに、地価が上がるだろうという投機が目的(どこかで聞いた話だ


SNSの影響


今、中国では6億人がスマホなどを使っている。
SNSで「日本はキレイ」「サービスが素晴らしい」「日本人は親切」「この商品便利だよ」などの口コミが拡散。
友人などに頼まれて、代表して買うため「爆買い」になってしまう。


中国人のマナーが心配
飛行場をゴミだらけにしてしまうのは、日本のパッケージが過剰なせいも要因の1つ。
1つでも多く詰め込みたいため、箱、包装などを捨てていく。

初めての海外旅行者が多い
列に割り込んだりする悪いマナーも、リピーターが増えれば、徐々に改善される。
日本人もかつて、五つ星ホテルのロビーで、腹巻きから万札を出して閉口されてたりしていた。
(ホテルの廊下をスリッパのまま歩いたりね。挙句の果ては「フィリピンに売春ツアー」とかまであったじゃん


国民性の違いを理解することも重要
中国人の声は高くて大きい。それは、日本に長く住む中国人もウルサイと感じるほど。
土地が広いために、自然とそういう話し方になった。
「大阪のおばちゃんに似てる」てコメント笑えたw


“もっと売る”ならコレはダメ!~爆買い戦略
観光客は「純消費者」(住むわけじゃないから福利厚生などは必要ない)のため、
日本はこれから「観光業」にもっと力を入れるべき時。

戦略の勘違い:

日本に向かう飛行機内に雑誌やフリーペーパーがあるが、キチンと作りこまれ過ぎていて逆に分かりづらいため、誰も見ない。
みんなスマホなどを見たり、家で買い物リストを作ってきてから来る。


せっかく観光に来たのに、パッケージが中国語だとお土産にならない(納得
看板や案内に中国語を使うのはいい戦略。


重い。飛行機内への持込制限は46kgですぐに重量オーバーになってしまう。
スーツケースにめ一杯詰め込むため、潰れやすいモノもダメ。


人から頼まれたモノの写真を見ながら買っていると、日本製品のパッケージは3ヶ月ごと位で変わってしまうため、
間違ったモノを買ってしまわないために、写メって確認したい。
(LABIでは商品撮影OKだって言われたな。日本人だって同じ商品ならより安く買いたい


中国人の「爆買い」はどれくらい続く?


専門家:
中国人の「爆買い」はこれからも数年~10年くらいは続く見込み。
その中身は、より身近なモノなどに変わる可能性はある。
逆に、中国政府から突然止められる可能性もある。
円安傾向もいつまで続くか分からない。円高になっても来てくれるか分からない。


中国以外の国にもアピール
「マレーシア」


マレーシア人は花が好き。日本の桜、ラベンダーなど。
それぞれの開花時期が書かれた旅行パンフレットがあるほど/驚

「ロシア」


ロシア人は海が好き。寒い土地柄のため、太陽、ビーチが好き
沖縄ばかりでなく、新潟も人気/驚


これからの課題

1.他国語が喋れる日本人ガイドや店員
日本に来ても、中国語が喋れる人が少ないため、中華レストランに入れば、お金は中国に戻ることになる。
現地のガイドも、多様な観光客に対応して、他国語が喋れるようになる必要が出てくる。

2.投機目的の土地の買い占めや、乱開発の規制なども必要。


日本には、全国に満遍なく観光資源がある。そんな国は、フランスと日本だけと言われている。
これまでの大阪⇔東京だけでなく、沖縄から北海道まで広く知ってもらう必要がある。
それには、実際に来てもらい、リアクションを見て、改善点はなにか、求められているものはなにかを探って、試行錯誤するしかない。


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topics~スマホの画像流出 ほか

2015-11-17 20:09:35 | 日記
最近の気になるトピックス。

スマホの画像流出
 



 

 

専門家:
「Facebookとかアップルに類似した偽サイトがある。見ただけでは正規かニセモノか見極めるのが非常に困難」



スマホの電話帳に個人情報を登録している場合、
[音声認識機能」と連動して、画面に個人情報が出るため、拾った人にすべて分かってしまう。




悲願の国産旅客機「MRJ」半世紀ぶりに初飛行
 


航空距離(東京を出発した場合

国産旅客機のたどった歴史~空白の7年間

飛行機生産を禁止されて、技術が世界から大幅に遅れた事情なんて知らなかった。「航空学科」すらなくなったそう

「YS-11」昭和48年生産終了
 
国産飛行機をつくるには大金がかかるため、回収に時間がかかる。赤字累積となり、生産終了となった。

「ホンダジェット」

ビジネスジェット機

MRJ開発開始
 
「YS-11」製作に携わった伊藤さんも感慨無量で飛行を見つめた

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図書館で借りたCDシリーズ~米米CLUB その2

2015-11-17 19:56:29 | 音楽&ライブ
米米CLUB その1はこちら。

こうしてアルバムを通して聴くと、てっぺーちゃんは、ずぅっとラヴソングを歌い続けているんだな

K2C/米米CLUB(1991)
通算6枚目のアルバム。

 


米米CLUB/米米CLUB(1991)
通算7枚目のアルバム。
てっぺーちゃん&J.O.のアカペラで始まって、2人の下ネタコントもいっぱい入ってるww ライヴ盤じゃない?


なんだかとっても懐かしい8cm CD付き


8枚目のアルバム「Octave」は図書館になし。残念。ここに♪君がいるだけで が入ってるのね。


聖米夜/米米CLUB(1992)
“1992年に発売されたアルバムとしては通算9枚目となる、カールスモーキー石井プロデュースによるクリスマス・アルバム。”

やけにぶ厚いブックレット付きだなと思ったら、「わすれかたおしえます」てタイトルのイラスト入り物語だった。



Phi/米米CLUB(1993)
通算10枚目のアルバム。

  


実は「Phi II」も予約してたけど、1日早めの期限切れで間に合わず
やっぱり、私の中の米米は、初期の5枚目くらいだな。

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どう思う? 選択的夫婦別姓@あさイチ

2015-11-16 14:53:54 | テレビ・動画配信
【どうなのヤナギー】どう思う? 選択的夫婦別姓@あさイチ

夫婦別姓問題は平成8年からずっと国会で議論しているが進んでいない。


現状は、戸籍上と会社で使い分けている人も多いが、
給料の支払いに手違いが起きたり、郵便物や電話が間違ってきたり、
税金の手続きが面倒などの問題も多い。

※手続きしないで放っておくと、子どもは戸籍上、母親の姓になるってゆってた?




「結婚したら夫の姓に当然すべき」ていう“これまでそうだった論”、
「結婚したら夫に変わるのが夢だったていう“乙女心?論”も根強い。
どっちかに決める、じゃなくて、なんでも選択肢があったほうがいいと思うなあ。

 

例:長男と長女の結婚で別姓に“せざるを得なかった”
長男:自営業の看板を継いで欲しいという親の思いをくんだ。
長女:姉妹で男子がいない。代々続く家の名を絶やさないで欲しいという親の思いをくんだ。

結果、「事実婚」(この言葉も古いなあ)でずっといるため、
緊急時に連絡が来ない、様々な手続きが面倒、受けられない福祉制度があるなどで困っている。

(まだ、結婚=家同士の結びつきって考えが強いんだな




FAX「別姓同士で結婚したりしたら、家の中が複雑になるのでは?」
イノッチ「それを言ったら、これまでも複雑だったけどね。それでもうまくいってる家族もいると思うし」

FAX:
「結婚して20年経っても、夫の姓に馴染めない」
「うちは名字をミックスさせた」
「イタリアでは、結婚すると女性はそのまま、男性は女性の姓が足される」
「いっそのこと2人共、新しい姓にしてはどうか?」

ヤナギー:
明治時代に作った民法をそのままっていうのもいかがかと思う。
最高裁判所で審議されて、16日に判決が出る国会で議論される。
(となると、まだまだ、あと数十年はかかりそうだね

これからバツイチ同士とか、同性婚とか、いろんなカップルの形も増えるだろうから、
時代に合わせて法律も柔軟かつ早急に変えていかないと、
いつまで経っても明治維新や戦前戦後のままで、変化に全然おいついていないルールがまだまだたくさんあるんだ。

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topics~劇場版『MOZU』にたけしさんも出演! ほか

2015-11-16 14:29:14 | 日記
ツイッタの「YO-KING bot」でとてもいい言葉を見つけたから貼っておく。

「仕事というのはここ2~300年の話だからね。その前は遊んでばっかりいたんだから….
 産業革命以降だからね、労働は。洗脳だからね。
 「勤労こそ美徳也」というのは支配者が都合が良いから言っているだけで。
 「せーの」で皆が遊び出したらもう世界平和ですよ。

「“明日からやらなくていいぞ”と言われても好きで農家をやったり、魚を獲ったりする人もいるんですよ。
 明日からギター弾かなくていいぞと言われても弾いちゃう人はいるんですよ。
 そういう価値の対価で世の中はいけちゃうんだよね。

私も同感。
みんなやりたいことをやって生きるのがほんとうの世界。
それを、みんなに分け合えばいい。とてもシンプル。

せーの、でできればいいんだけど、いろんな価値観があって、
「不安」を煽って「貨幣制度こそすべてなり」「男女はこうあるべし」などといろいろ洗脳されて、
結局いくら働けど、儲けるのは世界中でたった1%たらずの資産家だけという不均衡なシステムを無意識に受け入れている。

IMAGINE
君は僕が夢見がちだって言うかもしれないけど
僕だけじゃないんだよ
君にもいつか判ってほしいな
そしたら、世界はひとつになれる


最近の気になるトピックス。

『あさが来た』に長塚圭史さん出演/驚

旦那さんがトラウマになった事件の人かなあ?


羽生結弦、フリーで”陰陽師”を演じる深い理由とは
なるほど、これであのペンダントの理由が分かったv


修造さん&土屋太鳳ちゃんがベストスマイル

いつものファイティングポーズで太鳳ちゃんにすごい寄ってたww

太鳳「笑顔の人の周りには、笑顔の人が寄ってくる」
修造「周りの気持ちっていうのは、変わってきますよね」

2人が街の人の悩みにアドバイス:

「第一印象が良くなる笑顔の仕方を教えてください」

太鳳「よくやるのは、自分がステキだなって思う方の笑顔をたくさん見ます。それでイメージトレーニングできるから」
修造「笑顔も訓練ですから」



太鳳「“緊張しますよね”って自分から言ってしまう。緊張してる人にも“緊張するね!”て言って励ます」
修造「緊張してるってことは、良い話をしようとしてるわけ」

 
タオちゃんの素晴らしいアドバイスをなぜか祝う修造さん/爆

修造「苦しい時ほど大事なことがあるよ、笑ってごらん♪」

タオちゃんもノリがイイなww


阿部サダヲ出演新作映画『殿、利息でござる!』2016年5月14日公開

竹内結子さんが時代劇映画初挑戦て意外。
ずぅっと正座してなきゃならなかったのが辛くて、本番が終わると皆四つん這いになってたとかww

 
「正座させられて“ツラい!”って言っているのがすごく面白かったです」


劇場版『MOZU』にたけしさんも出演!!2015年11月7日公開


『MOZU』Season1 ~百舌の叫ぶ夜~(全10話) #1~5
『MOZU』Season1 ~百舌の叫ぶ夜~(全10話) #6~10
『MOZU Season2 ~幻の翼』(2014)

西島さん×よう子さんの本格アクションはもちろん、たけしさん、伊勢谷さんまで出るのかあ、豪華!
長谷川さんのトリッキーな演技が楽しみでもある。

 


仲間由紀恵さん、舞台『放浪記』千秋楽
こないだ始まったと思ったら、もう千秋楽かあ!

「改めて、森さんのこのお芝居に対するパワー、エネルギー、、、



『古墳ギャルのコフィー』@TOKYO-MX
ダニエルの背中に犬猫を捨てる人が増え、希少動物まで棲みついてしまう(ドードーもいる!

 

『ドードーを知っていますか』(ベネッセ)

在来種と外来種のことが真面目?に取り上げられていて、蛙男さんをまたまた尊敬してしまった。

 

【ブログ内関連記事】
『なぜハクビシン・アライグマは急にふえたの?』(農山漁村文化協会)
なるほどデータブック3『ペットの幸福度』(大月書店)


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大河ドラマ『花燃ゆ』 第44回「運命の糸つなげて」

2015-11-16 14:13:14 | ドラマ
大河ドラマ『花燃ゆ』
脚本:大島里美、宮村優子
出演:井上真央、大沢たかお、東山紀之、原田泰造、優香、鈴木杏、檀ふみ、三田佳子、江守徹 ほか


第44回「運命の糸つなげて」あらすじ(ネタバレあり
楫取は、阿久沢になんとしても教育の重要性を認めてもらおうと苦心する。

楫取「将来を担うのは子どもたちです」
阿久沢「私らにとって重要なのは、目先の利益。鉄道建設を早く進めて欲しい」

会合を開いても、周りは皆、阿久沢の取り巻きばかり。

美和も、工場の女性に文字を教えようと何度も通うが、
せいは「必要ない。女たちにはその分もっと働いてもらわないと」と取り合わない。

 

そこに、塾生だった神奈川県令・野村靖がやって来て、
寅次郎が獄中にいた際、牢名主(二朗さん再び登場!)に『留魂録』を預けていたという。

 

久坂とともに京で燃えた1冊だけと思っていた『留魂録』がもう1冊あり、牢名主が島流しの間も着物の襟に隠し持っていた。
17年ぶりに戻ってきた寅次郎の手記に、楫取と美和は感慨至極。再び、決意を新たにする。


楫取は阿久沢らに「群馬を生糸と教育で日本一にします」と宣言。

阿久沢「すべての子に教育などムダ。農家の子が学問をしたら、誰が畑を耕すんです?」

楫取は、商人を説得する代わりに村々を自分の足で視察して回ると、現状は思ったより深刻だと分かる。

農民「子どもが学校に行ってる間、誰が鍬を運ぶんです?」

楫取「商人は潤っていても、百姓たちはまだまだ貧しい。学校は遠すぎて通えない。
   寺でもいい。まずは始めることじゃ」



美和は工場に「いつでも読んでください」と本を置くが、
「学問に興味はあっても今更ねぇ」「できる人がやりゃあいい」と誰も見ようとしない。

美和「母親がそうだから子どもに学ばせようとしないんです」と寿にこぼすと、

寿「そうやって上からものを言うのはよくない。
  皆、それぞれの暮らしで精一杯やっとるんです。
  あんたは、頑張り過ぎると周りが見えなくなる」と諭す。


楫取は「やっと東京に名医を見つけたから、寿を行かせる。久米次郎もいることだし」
女中に身の回りの世話をさせるというのが寿の案と聞いて、美和は自分が行くと言う。

寿「志を遂げられるよう夫を支えるのが妻としての一番の願い。
  私の代わりに旦那様を側で支えてさしあげて」

美和「では、せめてこの家を出ます。通いでもお手伝いはできます」

寿「そんな心遣いは無用です」



楫取は寿を東京に送る。

寿「私は最初から幸せやったんですね。もう一度、一緒に暮らせるよう早うよくなります」
(本当は、余命少ないと分かっているんじゃないかな。夫を心配させないよう言った気がする


「西南戦争」の気配が漂い、木戸と楫取は銀行頭取となった毛利元徳を訪ねる。
元徳「必要とあらばいつでも手を貸そう」(まだ周りは“殿”なんて呼んでるのね



木戸「もし万一私に何かあれば、あとはお願いします」と楫取に頼む。
(木戸さんも結核?!

美和は辰路にずっと仕送りをしていて、そのお陰で秀治郎が学校に行けているということは安子の耳にも入っている。

辰路「きっちり学ばせないと」



博打好きのトメの夫が、借金の担保に娘を奉公に出すという証文にサインしてしまい、
また工場に取り立てが来て、せいが金を払って解決したのを見て、怒る美和。

せい「また働いて返してくれればいいんさ」

美和「本当にそれでええんですか? 同じことの繰り返しで。
   せいさんのお陰で解決しないんじゃないですか?
   自分から何かを変えようとしない限りダメなんです。
   これからは、誰でも自由に生きていけるんです。誰でも夢見ていいんです。
   そのために学んで、考えるのが、生きる力になります」

せい「気に入った! 自分で学び、考える。その通りだ、お手伝いさん。いや、美和さん」

 

 


楫取は、村のあちこちに学校を開く。阿久沢は様子をみようと言う。



 

 
楫取はココロの教育にも力を入れた

「ウサギとカメ」の教科書は、全国各地でも採用された


 
医学校は、その後、女学校としても使われた


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サリンジャー選集2 若者たち<短編集Ⅰ>(荒地出版社)

2015-11-15 15:58:45 | 
サリンジャー選集2 若者たち<短編集Ⅰ>(荒地出版社)
J.D.サリンジャー/著 刈田元司、渥美昭夫/訳

「作家別」カテゴリーに追加しました。


サリンジャーを読むのも久しぶりなら、2段組みの本を読むのも久しぶり!

サリンジャー全集といえば、この荒地出版社のシンプルな装幀しか知らない。
そして、サリンジャーの顔写真とえば、この表紙の、顔半分のものしか見たことがない。
快活で、機知に富む青年といった風。

サリンジャーが大好きだと公言してきたというのに、このたった6冊のうち、
本作を含め、2冊をこれまでずっと読まずにきたことに自分で驚いている。

最初は『ライ麦畑』で知り、次に『フラニー~』、『ナイン~』、『ハプワース~』で
すっかりグラース家が分かったと思い込んだことで、それ以外を忘れてしまったようだ。

でも、本書にまさかホールデンのストーリーが入っているなんて
名前が同じで奇妙な偶然か、作者のユーモアかと思っていたら、訳者のあとがきで決定的となった。

訳者が取り上げている評論家の的外れっぷりは、素人の私ですらあきれてしまった
その上、訳者までもが、「これは習作だが、これは頂けない」などと辛口なのもどうか。
私にとっては、時空を超えて、やっと手許に届いた宝石みたいな短編ばかりだ

表題の「若者たち」がデビュー作だということにもビックリだが、
雑誌に一度載せたきりで、作者が気に入らなかったために、どこにも載せなかったなんて、作者の心情やいかに
それが1人の日本人の協力によって、日本語に訳されて、今の私が読むことができるなんて奇跡

サリンジャーがこれほど戦争について、あらゆる側面(家族との別れ、前線での悲劇、帰還しても永久に病み、荒廃した若者たち)から
書いていたことにも驚いた。

そして、ホールデンと兄の悲劇。
学校に馴染めず、ココロを病んでしまうような純粋そのものの少年が、戦場ですることなど何ひとつなかっただろう。

サリンジャーは、このベーブ3部作で、戦争に正義などなく、ただただ愚かさを心底憎んでいたことが伝わってくる。

それにしても、全部合わせても5巻にまとまってしまうほどの寡作な作家だったんだな。
その後、2010年に亡くなるまで、ほんとうに何も書かなかったのだろうか?

ものを書くことが好きな人間が、まったく何も書かずにいられるものか。
それとも、あと数十年もしたら、彼の親族か、誰か身近な人間によって、
大量の名作原稿が発見されることもあり得るかもしれない。

そんな妄想の前に、まず、もう1冊読めることに感謝×∞
この長年の空白の反省も含めて。


【内容抜粋メモ】

「若者たち」
ルシールは、パーティで壁の花となっている女友だちエドナを、冴えないウィリアムと引き合わせる。
彼はずっと、BFの取り巻きと笑い合っているブロンド娘のドリスに釘付けだが、エドナはそれを知りつつも、会話を続ける。
ウィリアムは「月曜までにレポートを書かなきゃならないんだ」と素っ気ない返答をバカみたいに繰り返すばかり。

エドナは、自分の肖像画を描きたいと言った青年の話をする。
「君は一般的な標準からすれば美人じゃない。でも君の顔には僕が捉えてみたいと思う何かがあるんだ」と言われたことを。

ウィリアムは早々逃げ出したが、エドナはまったく気にしていない。
ルシールは残念がるが、「私はまだ大丈夫よ。ただね、あの人、私の傍に来させないで」と言い、
ラジオをもっと踊れる曲に変えるように呼びかける。

(自立した女性の話だねv エドナがとてもステキに思える


「エディーに会いな」
兄ボビーが妹ヘレンのもとにやって来て、しきりにエディのショーに出るよう言い聞かせるが、
「もうコーラス・ガールは嫌なのよ」と全然乗り気じゃない。

兄は妹が女房持ちの男フィルと付き合っているのを止めさせたい。
おまけに、ハンソンという男との汚い噂にもうんざりしていた。

ヘレンは彼とは話したこともないという。
兄が部屋を出た後、フィルに電話して別れ話をしてから、ハンソンに電話をかけるヘレン



「じき要領をおぼえます」
息子ハリーと、1919年のボビーが似ていると思う父。

もっとも恐れられていたグローガン軍曹のもと、ボビーは何をやらせてもダメで、
バカにされるたびに「じき要領をおぼえます。ほんとうに僕、軍隊が大好きなんです」と言った。

ハリーもまた駐屯地で軍曹にいじめられていることを妻には内緒にしている。
息子がパレードで歩調を乱したり、銃を落としたりしている様子を見て、
「せがれはなんとかなりそうかね、軍曹」
「とってもダメですね、大佐どの」



できそこないのラヴ・ロマンス
ラヴ・ロマンスを書くなら、まず男女が会わなければならない、とその出会い方に悩む作者w
週給30ドルの印刷屋店員ジャスティンがひと目惚れしたのは、シャーリー。

「男たらし」には2種類ある。
あらゆる意味での「男たらし」と、あらゆる意味での「男たらし」ではない「男たらし」である(意味が分からないな

いろいろ考えた挙句、ジャスティンがやけを起こして、シャーリーのバッグをひったくって逮捕され、
裁判で彼女の住所を知り、奇妙な手紙のやりとりが妄想される。

ジャスティンは、その後、脱獄計画に参加させられ、撃たれて即死。
やさしく思い出にのこるようなラヴ・ロマンスを書こうという私の計画は、わが主人公の不慮の死によって挫折してしまう。

作者は獄中から男がこう書けばよかったのにと思う。

「愛とは、性と結婚と6時のキスと子どもたちだと考えている人もいます。おそらく、そうなんでしょう。
 でも、僕は愛とは触れようとして触れ得ぬことだと思います。」

実際は、女は5・6丁目の停留所でバスを降り、男は32丁目で降りた
その夜、シャーリーは彼氏と映画に行った。でも、2人の関係はそこまでしか進まず、
ジャスティンは、ある日、ドリスを紹介された。ちょうどドリスが夫を得られないのではと心配しはじめた頃だった。



ルイス・タゲットのデビュー
両親は娘ルイスをそろそろ社交界に打って出るべき時と考えた。
その冬、ルイスはもっとハンサムな連中と遊び回るのに精を出した。
春には応接係として働いた。女の子が「なにか仕事に就く」のが流行りだした年だった。

リオ・デ・ジャネイロが面白いと噂を聞き、仕事を辞めて、出かけて、秋に戻った。
春には恋をして、タゲット家の財産目当ての男ビルの夫人となった。

ビルは、これまでに見たことがないほど醜く見えるルイスの寝顔を見て、突然自分が「すごく幸福だ」ということに自信がもてた。
ルイスに向かって「金目当てで結婚したけど、なんて幸福なんだろう!」などとまさか本人に言うわけにもいかなかったが。

ある時、ビルは火のついたタバコでルイスの手の上に円を描いた。ルイスは怒ってバスから出なかった
その1週間後、ビルはゴルフクラブをルイスの裸足に振り下ろした。

ルイスは実家に戻って犬を買った。子犬はエレベーターの中でおもらしをして、ルイスは数日後に子犬を捨てた。

リーノ(離婚裁判所で有名な都市)に行くのを春まで延ばすのは意味がないと出かけ、ビルと再会した。
「僕、精神分析をしてもらったんだ。お医者さんは治るっていうんだよ。電話してもいい?」
「ダメよ」

ルイスは、いつも白いソックスを履いているカールと出会い、春に結婚した
1ヵ月たたないうちにカールは白いソックスを履くのを止めた。
ルイスは午前11時から映画館通いを始めた

息子トミーが生まれ、2人とも夢中になった
トミーが変な寝返りをうって毛布で窒息死して6ヶ月後、ついにルイスにも物事をふっきれる日が来た。

ある晩、ルイスが愛していない男が椅子に腰かけて絨毯の模様を眺めていた。
「白いソックスをお履きなさいな。ねえ、あなた。構わないのよ」



ある歩兵に関する個人的なおぼえがき
ある40代の男ロウラーが汗だくで部屋に入ってきて、「兵籍登録をしたい」という。
「あんたは重要な軍需工場の技師長さんだ。あんたぐらいの歳の人は、自分の持ち場にいたほうがお国のためだということを考えてみたかね?」
ロウラーは譲らない。
彼が事務室から出てすぐ、彼の妻から電話があった。検査に通れば入隊を許可するほかないと長々と話した。

ロウラーは基礎訓練も、炊事勤務もすべて素晴らしくこなした。
外地への転属の時、ロウラーは名簿から外され、私のせいではないかと訴えにきたが違うと答えた。
すると、彼は、背筋をゾッとさせるようなことを言った。

「わたしは戦争に行きたいんだ。わかんないのかい。わたしは戦争に行きたいんだよ。」

ロウラーは、その後、伍長、軍曹となり、外地に派遣された。
再びロウラーの妻から電話があり、なんと言葉をかけていいか分からず、
「僕はピートを呼びましたよ。おやじはほんとうに元気そうだった。お母さん」
ピートは私の弟で、彼は海軍少尉なのである。(このオチが分からない・・・ロウラーは父親だったってこと???



ヴォリオーニ兄弟
わざわざW氏が代行で書いた記事という設定。
テーマはポピュラーの大ヒットナンバーをたくさん書いた『ソニー・ヴァリオーニは今いずこ』。

もし私が魔法を知っていたら、ヒトラー、ムッソリーニ、ヒロヒトを檻につまみ入れて、
その野獣の檻を即刻ホワイトハウスの正面階段上に置くだろう。

(サリンジャーの文章中にも、ウェストール同様WWⅡのことが所々出てくるが、
 ウェストールはあくまでも少年の目で見た事を書いているのに対して、
 サリンジャーは、当時の兵士からのリアルな目線だけに、
 敵国ドイツはもちろん、日本人に対しても容赦ないのが読んでいて哀しくなる。

ソニーはギャンブルにかなり手を出して、トラブって殺し屋に追われている、なんて噂がパーティで聞かれた。
だが、殺し屋は、間違って、弟のジョーを射殺してしまった。
その日からソニーは、まっとうな人間らしい眠りにもつかず、町をうろつきまわり、突如姿を消した。

記事には、彼の居所を知っている者がいたら無数の賛美者の1人に教えてほしいと締めくくられていて、
サラという女性から手紙が来る

まず、あの自由で、旺盛で、退廃した時代に遡らなければなりません。
 ジョーは、国語のクラスを教えていました。時々、彼は自分の書いたものについて読んでくれました。”

ジョーを愛していたサラは、ソニーの作詞など止めて、小説に取り組むべきだと何度も説いたが、
「ぼくは一生、兄貴のために作詞をするつもりはない。兄貴が成功するまでさ」と言った。

ソニーはハンサムで、不真面目で、人生に退屈していた。ピアノにかけては高度の技巧家だった。
サラのつてで、兄弟は、3曲をシカゴに売り込みに行き、テディは3曲とも買うと即決した。

サラはソニーに言った。
「あの人を放してあげなさいよ。あなたはもうチャンスを掴んだのよ。誰か他の人に作詞してもらえばいいわ」
「誰もあいつに敵う者はいないさ。及びもつかないんだよ」

兄弟はシカゴへ移り、大邸宅を買い、貧しい親戚を集め、地下室で曲を書いた。
その後、サラの父が病気になり、カリフォルニアに行かねばならなくなった。

「僕ら、今、新しい曲を作ってるんだ。僕はソニーに2週間したら止めると言っておいた」

教授「あなたは弟さんの生命の最後の最後まですり減らそうと決心してるんですね?」
ソニー「ジョーの作詞は一番です。ジャズ、トーチ(復讐、失恋などの悲しみを表すポピュラーソングの総称)でも」

教授「あの人は(作家として)天才だと思いますね」
ソニー「ラドヤード・キップリングとか、ああいった手合いのようなですか?」
教授「いや、ジョーゼフ・ヴァリオーニのようなです」

サラはダグラスに恋をして、結婚した。そして、ソニーは今、サラらが住む家に一緒に住んでいる。
教授が訪ねると、すっかり生気を失ったソニーは、弟のトランクに入っていた無数の原稿のメモをまとめているのだという。

教授「どうしてそんな仕事をやる気になったんです?」
ソニー「あいつの書いたものを読んだ時、僕は生まれて初めて音楽を聴くことができたからです」


二人で愛し合うならば
ビリーとルーシーが結婚したのは、ビリーが20歳、彼女が17歳の時。もちろん周りは皆反対した。
ルーシーは大学に行って、お医者さんになりたかった。

ある晩、いつものように、週18ドル払っている子守りの老女に子どもの世話を任せて映画を観に出かけたが、
ルーシーとビリーはスレ違ってばかり。

「あんた、わたしを愛するっていって結婚したんでしょ?
 それじゃあ、ベビーのことだって面倒をみてやる義務があるわ。
 私たち、遊びまわってばかりいないで、少しは考えなきゃ」

ルーシーはビリーが気の向いた時だけしか面倒をみないと言う。
車の中でも子どもみたいに半分シートから滑り落ちて、床の上に座り込んで泣いていた。

そして、翌日、ルーシーは実家に子どもを連れて帰ってしまった。手紙には、

「私たち、もうそろそろいろんなことを卒業してもいい頃だということが、あなたには分からないんじゃないかと思うのです。
 どう言ったら、私の言う意味が分かっていただけるかしら」

ビリーは一人、どうしていいやら分からず、映画『カサブランカ』のサムと会話をしてみたりする。
その後、親友バッドに電話すると、母親が出て耳が変になるくらい喋りまくられた挙句、バッドは留守だった。

次に、ルーシーがそこにいるようなフリをしてみる。
その夜、ルーシーは父親に車に送られて帰ってきたが、夜遅く雷が鳴っていて、
ルーシーは台所に閉じこもっていた。

ビリーは、彼女の手紙を逆さに覚えたことを話してしまう。
そしたらね、こうなんだ。本当にさ。ルーシーのやつ泣き出しちゃったんだ。
そして「私、もうなんでもいいわ!」なんて言うのさ。

(最後は鼻先がじぃーんとなった。
 こんな風に感覚で妻を心底を愛している若い夫の話を書けるのはサリンジャーだけだな。



やさしい軍曹
フィリーの妻のジャニタは、彼の嫌いな戦争ものの映画を一緒に観に行くのが好き。
戦争映画の兵士は、ハンサムで、死ぬ前に長々と思い出を語ったり、映画の意味なんかを説明したりする。
故郷では、家族はもちろん、大統領まで葬式に集まってくる。

ジャニタってのはありきたりの女じゃないからな。
ありきたりの女は、気取った足つきで踊ったりするのもいいだろう。でも女房には向かんな。
道端でネズミの死んだのを見たらげんこで殴ってくるような女を見つけるんだな。

話は醜男バークさんにうつる。
入営したその日に彼に会った。

バークさんてのは偉いことのできる人だった。
2本の声が出る、頭のデカすぎる、ぐるぐる目玉のほんものの醜男を探すがいい。
偉いことができるのは、そういう男なんだ。

16歳の子どものまま、本物のタフガイしかいない部隊に入ったフィリーは、毎日寝台で泣いてばかりいた。

奴らの体の弾痕や毒ガスのヤケドときたら、それこそ数えきれたもんじゃなかった。
フランスで散々辛い思いをしてきた連中だった。

当時、見習い曹長だったバークさんは、本当なら口も聞いてはいけない階級のフィリーに
自分の勲章の束を見せ、「下着の上につけてみなよ」と薦めた。
そして「服を着るんだ。その勲章の上からでいい」と言った。

特別に外出許可証を書いてくれて、レストランに連れて行ってくれた。
なんで何も食べないのかと聞くと、赤毛の女性のことを考えていて、彼女は結婚したと付け加えた。

その後、2人はチャップリンの映画を観るが、バークさんは途中で外に出た。理由は
「チャップリンはいいんだよ。だが、俺はおかしな顔をした小男が、
 体のデカい奴らにいつも追いかけられてばかりいるのを見たくはないのさ。一生そうと決まってるみたいにね」

バークさんみたいに生涯偉い人は、せいぜい20人か30人くらいの男しか、そのことに気がつかないんだ。
女ときたら、なおさらさ。

勲章をしばらく着けていいと言われ、フィリーは3週間も着けたままでいた。
バークさんが曹長になった日、返しに行くと、赤毛の女性の絵を上手に描いているところだった。
「おまえを航空隊のほうに回しといたからな。大人になって、やさしい人間になるんだぞ
それ以来、バークさんに二度と会うことはなかった。

バークさん自身、航空隊に転属になり、パール・ハーバーで死んだ。
日本軍が爆撃し、辛うじて防空壕にたどり着くと、後から来た兵士が、
炊事勤務の3人の新兵が冷蔵庫に隠れたのを見たと言った。

バークさんは、そいつの顔を30回もビンタし、冷蔵庫に新兵を置き去りにするなんて馬鹿か!となじったそうだ。
そして壕の外に飛び出し、新兵無事助け出したが、その場でくたばってしまった。
両肩に4つも孔があき、顎は半分吹き飛ばされていた。

バークさんはたった1人で死んだ。合衆国で盛大な葬式が行われもしなかった。
ジャニタに話してやったら泣き出した。それが唯一の葬式みたいなもんだった。

ありきたりの女の女なんか女房にするなよ。
バークさんみたいな人のために泣ける女を見つけることだな。



最後の休暇の最後の日(ベーブ3部作の1作目
技術軍曹ジョンは、戦地に行く前に実家に帰った。親には経つ直前の列車で言えばいいと思っていた。
母に友人コールフィールドが来ることを話す。ラジオ番組を3つ担当していて、母もその1つを聞いたことがあるという。

ジョンは、歳の離れた10歳の妹マティーが大好きで、マティーも兄が戻ると体中で喜んだ。
橇に誘うが、スプリング通りはダメだと言う。その先のローカスト通りは交通が激しくて、
去年、ボビーが遊びの最中に事故死したのだ。

ジョンは橇を止め、マティーにコールフィールドを紹介した。
彼はジョンの母に自分があのラジオのパーソナリティだったのだ、などと始終冗談ばかり言って楽しませる。

しかし、ジョンと2人きりになった時、「弟のホールデンが行方不明になったって公電が来たのさ」と打ち明ける。
(ホールデン・コールフィールドって!? と私は今更気づいた

「あいつ、まだ20にもなってなかったんだ、ベーブ。
 ああ、殺して殺して殺しまくりたい。変じゃないか。僕は臆病で評判なんだぜ。
 ところが今じゃあ、奴らを撃ちまくってやりたいんだ」

「娑婆の奴らと一緒にいても話にならんよ。奴らには僕らの気持ちが分からんし、こちらも奴らの考えてることが分からない」

父も帰ってきて、コールフィールドも加えて一家団欒の夕食になり、父はWWⅠの話をすると、ジョンは居心地が悪くなる。

嫌味を言うつもりはないけど、でも第一次大戦に行った人たちは、戦争は地獄だなんて口では言うけど、
 なんだかみんなちょっと自慢してるみたいに思うんだ。きっとドイツでも同じだろうと思うんだ。
 だからヒトラーが戦争を始めた時、ドイツの青年たちは、父親に負けないとか、それ以上だとかいうことを証明したくなったんじゃないのかな?

 僕は今度の戦争は正しいと思うよ。ただ、戦争が済んだら口を閉ざして、二度とそんな話をするべきじゃないと信じているんだ。
 僕らが帰還して、絵や映画にしたら、次のジェネレーションは、また未来のヒトラーに従うことになるだろう」

食卓の空気が変わったことで、ジョンは自分が言ったことを後悔する。
コールフィールドは気をきかせて、恋人に紹介したいと母が乗り気なジャッキーの話を持ち出す。

ジョンは、フランシスに夢中で、コールフィールドは彼女があまり賢くないと思っているのは誤解だと思う。
“彼女は僕を理解してくれない”

まったく眠れず、マティーのことを考える。

君はまだ小さな少女さ。でも少年でも少女でも、いつまでも小さいままではいられないんだよ。
 子どもでいられる時間なんて短いんだ。マティー、もし僕の言うことに意味があるとすれば、こんなことさ。
 君のもっている最上のものを生かしなさいってことなんだ。
 大学で、もし間の抜けた子と同室になったら、その子が少しでも利口になれるようにしてやりなさい。
 お婆さんが劇場でガムを売りに来たら、1ドル持っていたら、それをあげなさい。”

でも、部屋に行き、マティーに言ったのは「いいい子になるようにって言いたかったんだよ」
「いい子になるわ、ベーブ。兄さん、戦争に行くんでしょ? 怪我なんかしないでね」
「大丈夫さ、さあ、寝るんだよ」

まだ眠れずにいると、母が部屋に入ってきて
「あんた、戦争に行くのね。あんたはちゃんと義務を果して帰ってくるわ。そんな予感がするのよ」

(サリンジャーが兄妹の話を書けば、目頭が熱くなる。
 どうしてこんなに純粋に、シンプルに、描けるものか。



週一回なら参らない
翌日から戦地に行く若い男は、妻のヴァージニアに、「叔母を週に一度映画に連れて行ってくれ」としつこいほど頼む。
少し認知症気味の叔母のことを妻は心配するが、引き受ける。

叔母の部屋に行くと、2人で母の思い出話を始める。

「大学で、古い蓄音機のレコードをかけていると、ベッシー・スミスやティーガーデンなんかがあって、
 そのうちの1曲にビックリしたのなんのって。母がいつも歯の間から口笛を吹いていた曲だったんですから。
 ♪わたし日曜日にお行儀よくできない、1週7日悪いんだから て名前だった。

母は父と舟に乗り、それきり。

男は、立ち上がり、自分の砂時計を軽くテーブルの上に置いた。

叔母は、「あんたのために紹介状がありますよ」と言って、1917年の中尉への手紙を渡した。
男は下の踊り場で、封筒を八つに切り裂いた。そして、また妻に叔母を週に1回映画に連れていくことを頼んだ。



フランスのアメリカ兵(ベーブ3部作の2作目
少年兵(ベーブ)は、仲間のイーヴズに「様子が変になったら、起こしてくれ」と頼み、
ドイツ兵が掘ったたこつぼに入った。

1つ目にはアメリカ兵の汚れた軍服がきちんとたたまれて置かれてあるのを見て、
彼は身も心もほとんど泣き出したくなり、前進した。

2つ目の穴には、たぶん死んだと思われるドイツ兵の血のついた毛布があった。
そこで眠ることにして、横になりしばらくすると、赤い蟻に足を容赦なく噛まれた。
そいつを殺そうとして、その日の朝、1本指の爪をなくしたことを思い出し、急に痛みだした。

彼は、戦時中のアメリカ兵がよくやるおまじないを唱えた。

「この手をこの毛布の下から出したら、爪はまた元に戻りきれいになっているだろう。
 きれいなパンツ、白いワイシャツを着よう。家に帰り、ドアにかんぬきをかけよう
 ストーヴにコーヒーを乗せ、蓄音機にレコードをかけ、ドアにかんぬきをかけよう。
 ステキなおとなしい娘をひきいれて、ドアにかんぬきをかけよう」

少年は手を急に毛布から出したが、魔法はかからなかった。
ポケットからぐしゃぐしゃになった新聞の切り抜きを出し、薄明かりの中で読み始めた。

“そうね”と美女は野獣に言った。“汽車の中で私決心したわ。本物の真っ正直なG・Iとデートするって・・・”

切り抜きをくしゃくしゃに丸めて、穴の脇に置き、今度は、三十何回目に読む母からの手紙を読み始める

ダディはあんたがまだイギリスにいると言うけれど、フランスにいるの?
 ジャッキーはあんたにとても好意を持っています。婦人部隊に入るかもしれないようです。
 レスターは、日本軍のいるところで戦死しました。
 ダイアナは軍人と結婚して、1週間ほどカリフォルニアへ行っていたけれど、彼は今はいなくなり、
 彼女は海岸でひとりで横になっています。
 あんたはフランスにいますか?
 あんたがいなくてとても淋しい。早く帰ってきてください。 愛をこめて マチルダ”

穴の中で少し体を起こすと、呼んだ、「おーい、イーヴズ! ここにいるよ!」
向こうからイーヴズが彼の姿を見て、うなずき返した。



イレーヌ
デニス・クーニーは室内蚤のサーカスで急死したため、あとに残されたのは妻のイヴェリンと、娘のイレーヌだった。
イレーヌは6歳で、美少女コンテストで2回優勝したことがある。
イヴェリンは、夫の保険金で、カフェの出納係りをしていた母を呼び寄せることができた。
3人の暮らすアパートの管理人は、フリードランダー氏だった。

イレーヌの担当教師は、彼女を「やや発達の遅い」1年A4組に入れた。
その後、教師は校長に「あの子は、1級下げねばいけないと思います」と提案した。

イレーヌに「4年A4でためしてみたいの」と話すと、「私4年B4よ」と言い張ったが、最後は「はい」と答えた。
イレーヌは8学年を卒業するのに、9年半かかり、グラマースクールを卒業したのは16歳だった。

フリードランダー氏は、イレーヌ、母、祖母が映画を観ている間じゅう、自分の足をイレーヌの足にくっつけていたが、
イレーヌは相手の馴れ馴れしさに気づかず、離そうともしなかった。

男の子たちは彼女を見て口笛を吹いたり「ヘイ、美人!」と呼びかけたりした。
別に男の子たちと出かけるのが嫌ではなかったが、未知の、避けようと思えば避けられる問題に巻き込まれたくなかった。

イレーヌ、母、祖母が歩いている時、イレーヌは数世紀来のジュリエットか、オフィリアか、ヘレンのようだった。
妖精のような召し使いと、美しい女主人。

ハイスクールが始まる直前、映画館の案内係りのやさ形の少年テディが、日曜日に海岸へ行かないかと誘い、イレーヌは承諾した。
母は「明日、誰にもイチャイチャさせちゃダメよ」と母親らしい忠告を与えた。

フランクが運転し、その彼女モニー、イレーヌとテディで海に行き、その後、2人きりになるとイレーヌは急に不安になった。
テディは、これは簡単だ、うまくいきそうだと知っていた。

1ヵ月後、17歳の誕生日の2週間前、イレーヌはテディと結婚式を挙げた
そこでイヴェリンはテディの母と口論となり「あんな女、殺してやる」と凶暴な声で脅した。

イレーヌがテディと式場から出ようとした時、ミセス・クーニーは、「どこへも行っちゃいけません!」と言った。
「帰ってきなさい、きれいな娘。こんな弱虫とどこへも行っちゃいけません」
「さよなら、テディ」とイレーヌは肩ごしに親しみをこめて言った。

3人はまた通りを歩いて映画館に向かって歩いた。
「おばあちゃん、トロック館には誰が出ている?」
「ヘンリー・フォンダよ」
「まあ、かれ大好きよ」とイレーヌは言って、夢中になって跳びはねた。



マヨネーズぬきのサンドイッチ(ベーブ3部作の最後
ヴィンセント軍曹は、血気盛んでフラストレーションがピークになっている若い兵士をダンスパーティに連れて行くが、
34人いるうち“4人はいなくならねばならない”ことは伏せている。
中尉を待つ間、彼らのたあいもない会話に入りながら、頭の中は行方不明になってしまった弟のことでいっぱいだった。

ファージーいわく
「家内は自分も飛んでいると思っているらしく、航空隊から出なくちゃと手紙を書いてくる。
 クラーク・ゲーブルの記事を読んで、自分を爆撃機の砲手か何かに決めているんだ。
 自分のやっていることが名ばかりのくだらない仕事だって、とても言ってやれませんよ」

話はマイアミの風呂がどれほどいいかという話になる。

弟のホールデンはどこにいるのか?
あの行方不明中っていうのはどういうわけだ? 僕は信じない。
合衆国政府は嘘つきだ。政府は僕にも家族にも嘘をついている。

どうしてこういう重大なことについて嘘をつくのか?
こんな嘘をついて、どういう利益があるというのか?

(兵士の会話の中に妹フィービー、ジョーイーという犬が出てくるのも、後に書くグラース家との面白い共通点
 その父母は芝居に出ている、なんて、まるで同じじゃないか/驚

中尉が来て「多すぎる」と言い、軍曹は初耳だというフリをする。
「ミズ・ジャクソンは、ちょうど30人だけ来て欲しいというんだ。悪いが、4人に部隊へ帰ってもらわなくちゃね」

「お前たちの中でこのダンスにサインしなかったものは何人いるか?」
「代わりに基地の映画を観たいものは?」

ファージーは「では既婚者は今夜は手紙を書くことにしましょう」とトラックから降りた。
「左側の最後の2人、さあ出てくれ。誰だかは分からない。ちぇ!」

18歳くらいの兵士が「自分が一番にサインしたことはオストランダーが知っている」とねばる。
中尉と軍曹は電話をかけに出て、ミズ・ジャクソンのところに電話し、セアラに雨の中悪いがパーティに来て欲しいと頼む。
2人は、骨まで、孤独の骨、沈黙の骨までずぶ濡れになって、とぼとぼとトラックに戻った。

ホールデン、今どこにいるのか?
行方不明じゃない、死んでなんかいるんじゃなくて、ここにいると言ってくれ。
冗談はやめてくれ。僕の外衣を着て海岸へ行くのはやめてくれ。
テニスコートの僕の側で球を打つのはやめてくれ。
口笛をやめてくれ。さあテーブルに座りなおして・・・



他人行儀(あれ?3部作と言っていたな。少年兵はベーブじゃなかったのか?
星章を5つもらって帰還したベーブは妹マティを連れて、ミセス・ポークに会いにくる。
ヴィンセントの元彼女で、もう結婚しているヘレンに、ヴィンセントの戦死のしらせを伝えるが、
ヴィンセントの父がすぐ電話でしらせてきたという。

「ヒュルトゲン森でした。突然、白砲が落ちて、ひゅうとも何ともいわないで、
 ヴィンセントと他の3人に当たったんです。3分もたたないうちに、軍医隊長のテントで死にました」

彼女がどんなにヴィンセントを愛していたとしても、彼のことで自分を欺かせたくない。
一番手近の、一番大きな嘘を一目で理解するようにするんだ。
それが君の戻って来た理由で、誰の気分をも滅入らせたくない。

「あなた方の別れたのは誰の責任でもないという気がしました。誰の責任でしょう?」

「ヴィンセントは何も信じなかったのです。夏であれば、それを信じないし、冬であれば、それを信じませんでした。
 ケネス・コールフィールド少年が死んだ時から、何1つ信じなくなったのです。彼の弟です

「これは彼の書いた詩です。冗談でなく。よかったら差し上げます」
「まあ、私のことをミス・ビーバーズだなんて!」

ベーブは「さよなら、ヘレン」と言って、彼女が電話をかけてとか、夕食に来てという申し出に首を振った。

下の通りでは、太ったアパートの玄関番が犬を歩かせていた。
ベーブは、「ドイツ大反攻(1944年12月16日~翌1月)の間中、毎日この通りをあの犬を歩かせていたのではないかと想像した。
彼には信じられなかった。信じることができたにしても、あり得ないことだった。

マティ「もどれてうれしい?」
ベーブ「ああ、うれしいよ」
「わたし箸で食べられるわ」
「それは見たいね」

彼女はふち石から道へ軽く跳んで、また戻った。
それがどうしてこんなに美しい眺めなんだろうか?



気ちがいのぼく (後に『ライ麦畑』に入った短編
ホールデンは、寄宿学校に別れを告げる。

僕は自分にさよならを言い続けた。
「さよなら、コールフィールド。さよなら、きみ」

その後、スペンサー先生の家に着くと、流感でベッドにいた。
60歳くらいで、半分ぼけながらも、結構生活は楽しんでいた。
先生のことを考えると、いったい何のために生きているんだろうと、あらゆることが不思議になってくる。

「サーマー先生はなんとおっしゃったのかね、きみ」
「人生は競技のようなものだとおっしゃいました。だからルールやなんかに従って生きなければならない、というようなお話でした」

「君は今学期は何課目とったんだね?」
「4課目です」
「で、何課目落としたかね?」
「4課目です」

スペンサー氏は、ホールデンが論文のためにエジプト人について書くことを“選んだ”と言って、読み始める。

「いろんな理由で、退学するのは残念です」と言った。
ほんとに全部を分からせることはできないだろう。

「学校が懐かしくなるよ、君」
いい人だった。冗談でなしに。

とにかく、僕は自分の言いたいことをあまり言っていたわけではない。けっして言いはしない。
僕は変わり者だ。冗談でなしに。

「大学へ行く計画があるのかい、君?」
「ぼくは1日1日を生きていきます」
インチキ臭く聞こえたが、自分でもインチキらしい気持ちがしはじめた。

その後、ホールデンは、夜中、妹フィービーの部屋に忍び込んで起こす。

「ホールデン! 家で何をしてるの?」
「またおんだされたんだ」
「ホールデン! お父さんに殺されちまうわ」
「仕方がなかったんだよ。いつも試験やなんかでいじめ、勉強時間とかなんとかしょっちゅう強制してるんだからね。
 気が違ってきたんだ。ただ嫌いなんだ」

ホールデンは、父母が来る音を聞いて、妹の部屋をいったん出て、彼らがいってしまってから、
妹に頼まれていた、女中にとられたドナルド・ダックを寝台に戻し、彼女の好物のオリーブを並べた。

僕は、長い間眠れなかった。
他の人はみな正しくて、僕だけが間違っているということは分かっていた。
自分が成功者にはなれないだろうということ。

セントラルパークの池に一面氷が張ったら、アヒルたちはどこへ行くのかと考え始めて、
そのうちに眠りこんでしまった。

(今、読んでも、私は彼の心情に心から寄り添うことができる。
 彼は社会に馴染めなかったかもしれないが、社会のほうが間違ってるかもしれないじゃないか



[初期の短編について 刈田元司、渥美昭夫 内容抜粋メモ]
『ナインストーリーズ』の他に21の中編、短編をいくつかの雑誌に発表していた。
これらは今日はなかば闇に埋もれて、本国でもなかなか手に入れることが難しい。
本書の翻訳も、すべて最初に発表された雑誌からコピーしたものをテキストにした。
テキストを丹念に集めて、今回快く提供してくださった繁尾久氏の絶大な御好意に心から御礼を申し上げる。

彼は人も知る気難しい作家で(ウィキの見解は違ってたな)、サリンジャーがこれらの作品を「気に入らない」と言った。

(以下、それぞれの作品についての批評が書いてある

1.処女作とは思えないよく出来た短編。

2.小説より劇作に関心があったことが十分うなづける。

3.いわゆるショート・ショートに属する。大体1000字以内で、O・ヘンリー式のオチ(surprise-ending)をもつストーリー。

7.“純粋なものとまやかし”“子どもの世界と大人の世界”という相対立する世界を扱い、その緊張をテーマにする著者から当然、期待されるべきテーマであろう。

9.サリンジャーはいろいろな意味できわめてセンチメンタルな作家だ。

10.この時代の青年たちの代弁者ともいうべきサリンジャーとしては当然のテーマ。
  今作で初めてホールデンの兄にあたるヴィンセントが登場する。

12.ベーブを主人公とした第2作目。

13.サリンジャー作品では、人生に欲求不満を感じた人物がもっとも手近な逃避手段として、しばしば映画館通いをする。(なるほど

14.サリンジャーが3人の青年たちを次々に主人公に仕立てて作品を書いて、最後に『ライ麦畑』に落ち着いた。
  三人称小説から一人称に変わっていったことは興味のあるところ。

16.『ライ麦畑』の前身で、のちに書き直されてエピソードに使われた。

全体を通してひと言するなら、これらがそれぞれ異なった文体で書かれているということ。
都会っ子らしい会話、タフな文体等々。これら文体の妙を翻訳で伝えることなど、とても訳者の力では及びもつかぬところだった。
サリンジャーという作家はきわめて器用なことばの手品師(魔術師というより)だとつくづく感じた。



『サリンジャー選集』広告より抜粋メモ
1.フラニー ズーイー
2.若者たち:雑誌に一度掲載されて以来、読者の目に触れる機会をもたなかった表題のデビュー作ほか16編を発表順に網羅した。
3.倒錯の森:『ナインストーリーズ』と発表時期が重なるため、作風、その他多くの点で関連性を持つ(!
4.ナインストーリーズ:著者が気に入りの作品を選んだ。
5.別巻 ハプワース16 一九二四:以後二十数年に及ぶ沈黙は何を意味するのか? この問いに重要な手がかりを与える最後(?)の作品。

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浅田真央ちゃん&羽生結弦くん特集

2015-11-15 15:35:06 | フィギュアスケート
なんと、フィギュアのフランス杯が中止されてしまった。

パリのテロでフランス杯中止…宇野、初ファイナル濃厚

なんてことだ・・・とにかく選手やスタッフが無事に国外に移動できますように。
亡くなられた方、その家族、友人のことを考えるとやりきれない。

【ブログ内関連記事】
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シリーズ格差を考える『教育格差』(ほるぷ出版)



順序が逆になってしまったが、「フィギュアGPシリーズ名場面集」、
浅田舞ちゃんによるGPシリーズ番宣などをまとめてアップ。

舞ちゃんは長野に行ってきたのね。長野のりんごは世界一!
 

休養中に東日本大震災の被災地を訪問した真央ちゃん
 
逆にファンに背中を押されたという


ゆづくんも同じことを言って「和」のプログラムを選んだんだよね

 
「今は、良い事も、悪い事も受け入れる体勢が整っている」


[フィギュアGPシリーズ名場面集]

これまでの様々なトップ選手の最高の演技がまとめて観れたv

 

4回転、トリプルアクセルを2回入れたプログラムはノーミス!!
すでに先の先の未来まで感じさせる演技だった。

パトリック・チャン(カナダ)


エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)
 
エリザベス・テイラーのような妖艶さ



舞ちゃんが善光寺へ! この参道も懐かしい・・・
 

この回ではゆづくんを取り上げた。

 

 

狂言師・野村萬斎氏との対談もまた取り上げられていた。


羽生結弦x野村萬斎 能舞台で念願の対談@news every.(2015/9/22)



羽生「僕は人一倍音を気にするタイプなんです」

野村「西洋人は、音を全部体現しようとして、リズムをすべて刻んで振りが多くなる。
   狂言は省略の文化。リズムに支配されず、その人自身がリズムを支配する。
   観ている人が“観てよかった!”“生きててよかった!”という感動を与えること」

 





「ZIP!」では2日連続で真央ちゃんを取り上げた。

中国人が熱狂するワケとは?


 
「中国ではフィギュアスケート選手の中で一番有名」

 


浅田選手の魅力は?
 
「とくに連続3回転ジャンプが力強くとてもよかった!」

 
「スポーツ選手は女性らしいイメージがないけど、彼女は顔もとても可愛い」


「猫と発音が同じなんです」


「この人を嫌いな人はいません。ソチでみんな注目して、一気に有名になった」

スポーツ記者:
 

今年、北京が2022年冬季オリンピック開催地に決まり、大きな関心をもっていることも関係している。
浅田選手は、アジアを代表する選手で、演技力も高く、性格も魅力的なので大人気です。



知られざる空白の1年とは?
 

記者会見にて:
「ソチ五輪のシーズンが終わってからは、気持ちも心も疲れていて、私はもうスケートはしないのかなと思いました」

Q:復帰のきっかけは?
「いくつかあって、私は(5歳からスケートを始めて)今までスケート靴を持たないで旅行に行ったことがないので、それができたこと」

本田武史さん:
スケート靴を持たないで旅行に行くことは、選手にとっては勇気が必要。
選手は肌身離さずずっと持っているものなので。


「もう1つの復帰の理由は、選手だったら怪我をしてはいけないので、これまでできなかったバンジージャンプや、バナナボートをしました」
(本当に制限されたストイックな世界に住んでいるんだな・・・

 
日本舞踊にも挑戦した

被災地や、名古屋のスケート教室で子どもたちに教えた
 


記者会見にて:
「3回世界チャンピオンになったんですけど、まだまだ自分のやりたい演技や、目指すものがあるので、
 これからも上を目指して頑張っていけたらなと思っています」

柔らかい仕草、お茶目な反面、この強い意志、これも真央ちゃんが世界から愛される理由の1つだな。



コメント

トルーマン・カポーティ『カメレオンのための音楽』(早川書房)

2015-11-14 20:00:20 | 
ハヤカワepi文庫『カメレオンのための音楽』(早川書房)
トルーマン・カポーティ/著 翻訳/野坂昭如

「作家別」カテゴリーに追加しました。


野坂さんは戸川純ちゃんがカバーした♪バージンブルース を書いたり、
『青いオウムと痩せた男の子の話』などの戦争童話集を書いたり、多才な人だなあ!
その野坂さんがカポーティを翻訳してるっていうのにビックリ。

前回読んだ『叶えられた祈り』(新潮社)が最後だと思っていたら、その後、短編を書いてたのか。
本書が生前出版された最後の著作なんだ。

未完になった『叶えられた祈り』の第2章になるはずだった「モハーベ砂漠」が収録されている。


冒頭には、著者がどのように作家の道を歩んできたかが完結に書かれているのがとても興味深い。
天才肌のように見えて、実は、さまざまな手法を幼い頃から書き続けて、挑戦、模索しつづけて、
それらの文体などをいち読者のように客観視しているのもスゴイ。

その結果、自分の作品のほとんどにダメ出ししちゃうのは、厳しすぎると思うけど、
それだけの本を読む目を持っているという自負の裏返しでもあり、同時に意外な謙虚さも感じた。

『叶えられた祈り』では、主人公だけがP.B.ジョーンズという名で出て来て、
他は実名だったり、名前を変えたりしていたのが斬新だったけれども、
この短編ではさらに進めて、自分と周りを日記のようにさらけ出して、かつ文学として成立させる試みをしているってことなのかな。


あらすじ(ネタバレ注意

Ⅰ カメレオンのための音楽

序:
あの頃、私の興味は4つ。読書、映画鑑賞、タップダンス、絵を描くこと。
文章を書き始めたのは8歳の時。
だが、書いたものの、出来不出来の差がいかにもはなはだしいと気づいて興味を失った。

若いうちは、日に4、5時間ペンでの修行をした。
音楽を聴く、絵画を観る、日常に眼を配る。
実のところ、当時の文の中で最も面白いものは日記。

『遠い声 遠い部屋』(1948)が好評で、ブックカバーに載せたエキゾチックな写真のせいで、
その後ずっと私についてまわるある種の名声のきっかけにもなった。
この本の商業的成功は写真のせいだという人は多い(驚

1948~1958の10年間、私はあらゆる小説作法を試みた。
成功して得るものより失敗して得るもののほうが多いという見込みは真実である。

本質的には1つの芸術形態と見なしているジャーナリズムに、以前より魅かれていた。
これまで紀行文か、自叙伝に限られていたという単純な理由で。
ジャーナリスティックな小説。

ヘンリー・ジェイムズ著『ザ・ミドル・イヤーズ』
「われわれは今暗闇にいる、できることはし尽した。あとは狂気の文学しかない」
自らをそこに投げ入れて「観る」しかない。

6年間神経をすり減らしながら体験をまとめた“ノンフィクション・ノヴェル”は、後にノーマン・メイラーらも取り入れた。

1968~1972までは、自分や他人の手紙、日記を改めて読んだり、整理することに費やした。

1972。まず最後の章から始めた『叶えられた祈り』は、事実を虚構らしく装う常套手段の、
ありふれた実話小説ではない。正反対、嘘いつわりを可能な限り排除した。
論争は文芸作品の価値と無関係な、社会的利害を巻き込むことでしかない。
もとより社会非難は覚悟。

しかし、私は1977に中断した。私は創作上の行き詰まりと私生活上の行き詰まりに悩んでいた。
事実と本当の真実との相違についての理解のしかたなどに新たな視界が開いた。

『冷血』も手抜き、鈍い、すべてを注ぎ込んでいないとよく判った。

私は書き続ける。
映画脚本、戯曲、ルポタージュ、詩歌、短篇小説、中篇小説、長篇小説。

『叶えられた祈り』に戻り、章を1つ削除し、2つ書き改めた。私は初心に戻らなければならなかった。

『冷血』で最も困難だったのは、私自身を完全に消し去ることだった。

後に、ノンフィクション中篇小説、短篇小説を書いた結果が本書である。


******************

「カメレオンのための音楽」
カポーティは夫人の部屋で知的な会話をしている。
夫人がピアノを弾くとカメレオンが大勢集まるってフシギ。

「カリブ海で蚊のいない島はマルティニーク島だけ。しかも、誰にもその説明がつかないの」(素晴らしい島だなあ!

カポーティの親友はここでポルトガル船員2人に撲り殺された。
マルティニークのカーニバルはケタ違いでひっちゃかめっちゃか。


「ジョーンズ氏」
1945。ブルックリンの下宿屋で数ヶ月暮らしていた時、隣りのジョーンズ氏は一風変わっていた。
ウォール街のオフィス勤めといった姿で、下宿から一歩も出ず、お客はなにかしら相談をして、彼はそれで生計を立てている。
そのジョーンズ氏が消えた。

10年後、モスクワの冬。地下鉄の前に座る男がジョーンズ氏だと気づく。
下宿では脚が悪かったのに、その足取りはしっかりした大股だった。
(眉村さんの書くSFみたい


「窓辺のランプ」
結婚式に招待され、酔った挙句、ケンカしてクルマを木にぶつけた時点で、
乗せてもらっていたTC(カポーティ)は慌てて降りた。

冬、やっと田舎家を見つけて、事情を話すと、白髪のお婆さんは快く泊めてくれた。
40年間連れ添った仲が良かった彼女の夫は、酔っ払い運転の車に轢かれて亡くなった。

とても話が合って、猫の話になり、見せてくれたのは、冷凍庫の中に冷凍され保存された数十匹の猫。
「私、いなくなってしまうのが耐えられなくて。少し、おかしいってお思いになってるんじゃありません?」
たしかに少し狂っている。いや輝いてる。あの闇の中の窓辺のランプのように。


「モハーベ砂漠」(これが『叶えられた祈り』の1つの章だとは思えないなあ・・・
精神分析医ベンツェンは、患者のサラと一線を越えた関係。

サラの友人で美容師のハイメイは、恋人カルロスが去ってしまい「カルロスを殺してしまおうと思ってるんです」と明かす。
「彼は従妹アンジェリータと結婚して普通の家庭を望んでるんです」しかも、アンジェリータは3人一緒に住もうという。

サラは、ベンツェンにメアリーがひどい夫をもったことを言う。
夫が子どもをつくってほしいと言い始めてからギクシャクしだした。
メアリーは子どもの頃から子どもが怖くて、1人産んだ後、精神に異常をきたした。
2番目は中絶したいと言ったが、離婚すると言われ、出産時、母子ともに生死をさまよい、それきり夫と疎遠になった。

サラは、去り際にベンツェンとの別れをサラっと言う。
「ぼくの踵、毛深くなんかないぜ」
「いいえ、そうなの。そこらの駄馬はみんな、踵に毛が生えてるの。奥さまにくれぐれもよろしく」

サラは、夫ジョージが、銃で自殺した父親似であることに惹かれていた。
ジョージは、アイヴォリー・ハンターの話をする。

モハーベ砂漠をカラカラになって歩いていた時、盲目の老人シュミットに会った。
妻のアイヴォリーに砂漠に置き去りにされたという。妻はメキシコ人の季節労働者フレディとグルだった。
クラブで女給をしているハルガは、2人の関係をシュミットにぶちまけた。

ある時、妻はトレーラーでもっと涼しいところに移ろうと言い出した。
そのトレーラーにフレディが隠れていた。

サラとジョージは、互いの不倫を全部話しあう仲で、夫の相手は妻がお膳立ていていた。


「もてなし」
TCの叔母メアリー・カーター夫人は、誰にでももてなす女性だった。
家に泊めた宣教師は、食べ物をあるだけ食べて、食人族の話などして、叔母は1ヵ月ほど具合が悪かった
囚人をもてなしたこともある。その2日後、その男は“二連発銃のバンクロフト”と呼ばれるお尋ね者だと判明。
次は、ジラという娘。夫が違う女と家を出て、子どもと一緒に探して歩いているという。
なかなか夫は見つからず、近所のやもめスミス氏を紹介し、2人は結婚した。


「くらくらして」
ファーガソン夫人には魔力があると噂があった。
夫人は6人の子連れの未婚女性。長男スキーターの父親は黒人だったため、父は公の場で娘に酷いお仕置きをした。
そんな下女であるにも関わらず、その魔力のおかげで、誰もが夫人を尊敬していた。

8歳のTCには、どんな人にでも言ってしまったらおしまいの秘密があって、相談したくてたまらなかったが、夫人には無視されていた。
TCの祖母は、若くして寡婦となり、3人の子を育て、TCをこよなく可愛がっていた。
夫人は、祖母がいつも肌身離さず身につけているなんてことない宝石に目をつけ、
スキーターがやって来て、TCに祖母の宝石を盗んできたら、母親に会わせると言った。

TCは迷った挙句に宝石を盗み、夫人宅に行き「男の子なんて嫌なの。女の子になりたいんです」と明かした。

私は、奇妙な性癖や風変わりな好みに蝕まれた中年となった。
祖母の葬式に出なかったことで、父に罵倒された。
「この愚か者。お前の写真を手にして亡くなったんだぞ」




Ⅱ 手彫りの柩
「手彫りの柩~アメリカ的犯罪のノンフィクション解釈」
(極上のミステリーなのにも関わらず、ノンフィクションであり、著者は明智探偵でもないため、終わり方がなんだかモヤモヤした。

1975年3月。TCは「プレーリー・モーテル」に滞在し、州捜査局の刑事ジェイクが知らせてきた事件に関わり始めた。

事件が起こる前、かならず本人のもとに手彫りの柩が送られてくる。中には、その人の日常のスナップ写真が入っている。
最初の被害者は、ジョージ&アメリカ・ロバーツ夫妻。クルマから飛び出してきたたくさんのガラガラ蛇に全身を噛まれて、
ハロウィンのような姿で発見された。ヘビにはアンフェタミンが注射されていた。

2番目の被害者は、その3ヶ月後。バクスター夫妻とホーガン夫妻。
地下室に閉じ込められて放火され、焼け死んだ。ホーガン夫妻は事件とは関係なく巻き込まれた。

3番目は、ジェイクの旧友クレム。クルマで自宅に戻る途中、首と胴体が真っ二つに切れた。
その死体の第一発見者は、彼の息子だった(涙
クレムは、事件の相互関係で「川が関わっているのではないか」と言った2日後のことだった。
自宅のそばには、ちょっと見分からないような針金がとぎすまされて張られていたという。

その4ヶ月後、パースンズという検視官は自殺と断定された。彼の妻は、夫によってモルヒネ中毒にされていた。
パースンズの飲んだのは液状のニコチン。非常に純度の高い、速効性のある、無色無臭の強力な毒物。

ジェイクは、書棚からマーク・トウェインを取り出して、引用した。

神によって創造されたすべての生物のうちで、人間こそはもっとも忌むべき存在である。
 すべての生物のうちで、悪意を有しているのはただただ人間のみである。
 そしてそれは、あまたある本能、感情、悪徳のうちでもっとも醜悪なものである。
 人間は、意識的に苦痛を与えることのできる唯一の生物である。
 同時に、自然界で卑劣な心をもつのは人間だけである」(残念ながら、ある意味真実だな

ジェイクは、犯人がクウィンだという。
蛇を売るスネーク・ファームの1つの女主人に写真を見せたら、クウィンだとハッキリ答え、
蛇にアンフェタミンを注射する方法を教えたのも彼女だった。

ジェイクは、小学校教師アデレイド・メイスンに心底夢中で、2人は来年の夏に結婚する約束をしている。

アディいわく
1年生を教えるということは、人生の第一歩を踏み出すのを見守ること。
 全教科を教えることができるし、その中にはしつけも入る。
 いまどき家でちゃんとしつけを学ぶ子はほとんどおりませんしね」(同感

そのアディのところにも柩が来たが、もう5ヶ月が経つ。
アディは、未亡人の姉メアリリーと同居していて、姉だけでなく、地域のほとんどはクウィンを尊敬している。
クウィンは、第二次世界大戦中、海兵隊の大佐で、広島に落ちた原爆犠牲者よりも多くの日本人を殺害した。
その戦時の手柄のために英雄だった(なんて英雄だ・・・

終戦直後、クウィンは所有するBQ牧場に入って牛を盗もうとした2人組を射殺。
だが、2人は牛泥棒ではなく、ギャンブラーで、クウィンは莫大な借金をしていた。

ジェイクは、TCをアディに紹介する。アディもクウィンが犯人だと確信している。

殺害動機は、ブルー・リヴァーという川。
支流には川に頼っている多くの牧場経営者がいて、ブルー・リヴァーに分水路を設けるべきだと言い、クウィンは猛烈に反対した
その後、2年間、干ばつに襲われ、町議会で票決を下した。被害者は全員そのメンバーで、川の方向転換を決議した者だった。
反対したのはトム・ヘンリーだけ。まだ殺されていないのは、アディ、トム、郵便局員のオリヴァー・ジェイガーの3人。
オリヴァーはクウィンの又従兄にあたる。

ジェイクは今では、クウィンと仲良しのようにチェスをやったりしているが、
事件の糸口を探し、必死にアディを守っている。
アディに長い船旅をすすめたこともあったが、「鮫を捕まえるためには、餌がなくちゃ」と言われたという。

TCは、ジェイクとともにクウィンの屋敷にチェスに招かれる。
クウィンを見たTCは遠い昔に一度会っている気がした。
クウィンは従妹のアニタと結婚したが、遠くに愛人がいて子どもが4人もいることが後で分かる。
チェスの最中の会話で、クウィンがライカでスナップを撮るのが趣味だと分かる。

TCは、5歳の時、ボビー・ジョー・スノーという牧師に無理やり川に投げ込まれて洗礼されたことを思い出し、
その男がクウィンにソックリだと分かり身震いする。

その後、TCは各国を渡り歩くうちに、ジェイクとアディの結婚式に出るのを忘れていたことに気づき、電報を打った。
やっとNYに戻って、ジェイクからの手紙を受け取り、8月にアディが死んだことを知る。
姉妹でブルー・リヴァーで泳いでいて溺死したという

姉は「祖母は絶対に“死”という言葉を使いませんでした。いつも“呼び戻された”と言っていた。
人は永遠に消えてしまうのではなく、幸せな幼少時代の王国へ呼び戻されるのだと」

ジェイクは、TCにとうとうジェイガーのもとにも柩が届いたと知らせる。
そして、アディの事件が起きた場所は、クウィンの所有地を通ることも。

TCは、推理をたてる。姉妹が川へ向かうのを見たクウィンは後を追った。
姉が本を読んでいる間、アディが滝のほうに1人で行ったのを幸いに、銃で脅し、そのまま川に沈めた。

“いかなる高級な精神科医も言うように、精神的な不安というものは心理的な抑圧によって引き起こされる。
 が、2度目の診察の際、追加料金を払えば、同じ医者が教えてくれるように、
 心理的な抑圧というものは、精神的な不安によって引き起こされる。”

このような問題を抱え込んだ時の唯一の解決策は、ジタバタしないこと。
不安を受け入れ、心理的な抑圧に抗わず、リラックスした気分で、
波が自分を運んでくれるところへ運ばれていくことである。

後にジェイクと会った時、ジェイガーに届いた写真はクウィンが撮ったものだと分かった
しかし、後に、ジェイガーは長年の夢だった世界への放浪の旅に出て、ジェイクは事件からおろされた。
メアリリーはサラソタに引っ越して穏やかに暮らしている。実質的に捜査は打ち切られた。

アニタ・クウィンが亡くなった。
葬儀・埋葬は行われず、火葬した後、灰をブルー・リヴァーに撒いてほしいとの遺言だったという。
その後、クウィンは子連れの愛人と再婚し、これには保守的な道徳観を持つ地域住民も眉をひそめた。

TCとジェイクは仲たがいをしてしまうが、最初にジェイクを紹介してくれたフレッドの話だと肺気腫ができて、近々退職するという。

TCは再びクウィン家を訪ねると、末娘が迎えに来た。
ジェイクがオレゴン州で息子家族と暮らすと聞いて残念がるクウィン。アディについては
「あれは神の御手のなし給うわざ、神の思し召しだったんだよ」

(何も解決しない『X-FILES』みたいな余韻が残る



Ⅲ 会話によるポートレート

「一日の仕事」
時給5ドルの掃除婦メアリーに1日くっついていくことにしたTC(プライバシーもへったくれもないね/怖
メアリー「ブラックと呼ばれて喜ぶ人はあまりいないね。一部の若いコや、過激な連中はどうか知らないけどさ。
でも、なぜニグロじゃいけないの? あたしはそのことをすごく誇りに思っている」

最初は、トラスク氏のアパート。酒の飲みすぎで妻に逃げられ、家の中はメチャクチャで汚れ放題。
これでパイロットって・・・ で、失業中(そりゃそーだ

次は週刊誌編集者のエディス。堕胎した時から親しくなった。メアリーは堕胎に反対。
何度もメアリーからマリワナタバコを勧められて断れず、妄想世界に浸るTC。

TCの母が昔住んでいた部屋を過ぎる。
美しくて、聡明な人だったけど、ただ、絶えず死にたがっていた。義父のことで苦しんでたみたいだ。
 ギャンブルで借金して、シンシン州立刑務所にほうりこまれてしまったんだ」
「うちの息子もそう」
「母は正装してパーティを催し、終わるとセコナールを30錠飲んで、二度と目を覚まさなかったんだ」

次はメアリーがもう辞めようと思っているパーコウィッツ家。オウムがひっきりなしに喋っている。
2人はマリワナを吸って、冷蔵庫の豊富な食材を食べて、音楽を聴いて踊っているところに、
夫妻が帰ってきて激怒し、メアリーを解雇する。

TCはタクシーを拾うというが断るメアリー。
「タクシーの運ちゃんたちは黒人(カラード)を嫌がるんだよ。あたしは地下鉄で帰るわ」

彼女は、教会に寄り、トラスク氏や、エディス、息子らのことを神に祈る。
「ちゃんとお祈りしてる?」
「うん、あんたのために祈ってるんだよ」
「あたしのために祈らないで。あたしはもう救われてんだから。あんたのお母さんのために祈るのよ。
 暗闇の中で迷い子になっているすべての魂のためにも」



「見知らぬ人へ、こんにちは」
旧友ジョージからランチに誘われて行ってみると、見る影もないほど太ってしまっていた。
彼は働き過ぎと過労で会社には行っていない。
妻は、1日中部屋に閉じこもって、窓外の景色ばかり描いているという。

きっかけは、ある日、ロングアイランド海峡で泳いでいたら、手紙の入った瓶を拾った。

見知らぬ人へ、こんにちは。あたしの名前はリンダ。年は12歳。
 もしこの手紙を見つけたら、いつどこで見つけたかを教えてください。そしたら、自家製のファッジを1箱贈ります」

ジョージはシャレで返事を出したら、本当にファッジの箱が送られてきた。
そこにはポラロイドの水着姿の写真まで入っていた。
友だちがなく、寂しさ紛れに書いて、返事をくれたのはジョージだけだと切々と返事が書かれていた。

ジョージは妻を愛していたが、ある日、その写真を見つけられて、なぜか通勤列車で一緒になる男の娘さんだとウソをついた。
その後、リンダから電話があり、“手紙に感激した。犬のジミーだけが友だちなのに親に殺されてしまう。
ラーチモントで会ってくれないか”と言われる。後にジミーはとりあげられてしまったという。

その後、妻が家に警官が来ているという。
内容は、リンダが52歳の男からいかがわしい手紙をたびたび受け取って、署に苦情を言ってきた。
事情を正直に話したが、妻は「これからも二度とウソだけはつかないで」と言い、それ以来ずっと部屋で絵ばかり描いている。

7年前の冬、警官が来て、ジョージが若い娘の前で露出狂となり、
その娘はナンバープレートを覚えていて、ジョージのクルマだという。

「あんたはおれを信じてくれるだろう?」
サングラスを外した彼の眼は、ふかい精神的苦悩が永久に彫りこまれていた。
「もちろん、あんたを信じるよ」



「秘密の花園」
ポンタルバ館内のアパートに住めるようになるのは、死亡した住民によって遺贈を受けた場合か、
アパートが空き、ニューオルリーンズ市がごくわずかな金額でそれを傑出した市民に提供した場合に限られる。

TCはビッグ・ジューンバッグ・ジョンスンと偶然再会する。
彼女は16歳になる前、エドにレイプされて、夜が明けたら髪が真っ白になっていた。
B.J.Jの酒場は評判がいいため、やっかまれていた。
TCはその当時“ジョッキー”というあだ名を付けられていた。

B.J.Jは20歳ほど年下のオライリー夫人となった。
金目当てだろうと噂もたったが、B.J.Jに惚れていた。

温和で教養ある建築家クレイ・ショーの話になる。
卑劣な郡検事ギャリスンによって、ケネディ暗殺計画の中心人物だと告発され、
2度も法廷で争い、無罪放免になったが文無しになり、数年前、病死した。

TCはヴェニスを描写する。
このような町の包装をといて中味を見るためには、人はその町で生まれなければならない。
ヴェニスはそういう町だ。

入り組んだ血縁関係のゆえに、この町には従兄弟姉妹が百人以上も住んでいる。
それを守るために編み出された建築様式なのだ。



「命の綱渡り」
ロスの空港でNY行きの飛行機に乗ろうとしているTCを、刑事が逮捕状を持ってゲート入り口で待ち伏せている。
ロバート・Mという聡明な精神病者が、他人に話さない約束で、人生観、犯罪観をインタビューで聞かせてくれたことで、
大量殺人犯の調査をしている警察に追われているTC。

法的な手続きの理由で、連邦政府裁判所はロバートの判決を取り下げたことで、
刑事はTCに、彼の検察側の証人として出廷するよう召喚令状を持ってきてTCは激怒した

カリフォルニアを離れれば、法廷侮辱罪による引渡し処分は適用されない。
その代わり、もう二度とカリフォルニアには戻れない。
警察はTCを全州に指名手配した。

さびれた村を隠れ場所に選び、ベネット夫人に電話すると、NY行きの便に別名で席をとり、送ってくれるという。
だが、見張りがあるから飛行機に乗り遅れてしまうかもしれない。
その危機を救ったのは、女優のパール・ベイリーだった。

パールに事情を話すやいなや、取り巻きの1人ジミーとトイレで服を取り替えて来いという。
すると、1つのトイレに4本の脚が見えるのはワイセツ行為だから警察を呼ぶと管理人とモメる。
2人はパールの映画のエキストラで、着替え室がもらえないからここで衣装替えをしていると誤魔化す。

やっと飛行機に乗れたはいいが、遅延し、さっきの刑事が見回りに来る。
パールは病人のフリをしてもたれかかれと命令する。TCはなんとかNYに脱出成功

ロバートの再審は予想通り第一級殺人で有罪判決となったが、カリフォルニア州裁判所はTCを恨み続けた。
1年後、もう忘れてると思って用事で赴くと、5000ドルの罰金と、不定期懲役を言い渡される。
だが、逮捕令状に誤りがあると釈放された。NYの住民となっていたからだった。



「そしてすべてが廻りきたった」
カリフォルニアの独房棟で、ロバート・ボーソレーユと話すTC。
中年ミュージシャン、ゲイリーの殺害がきっかけ。

ロバートは子役としてハリウッド映画に出演し、現在31歳。チャールズ・マンソン教団に入っていて、
マンソン・ファミリーによる殺戮行為の謎を解く鍵を握る存在だった。

ロバートは青リンゴ色の小部屋を見たいという。死刑囚が桃の香りのガスで窒息死する部屋。
TCは控え部屋の隣りに、たくさんの遺留品が置いてあることを教える。

TCは絞首刑を2回見たことがある。
すぐに死なずに、15~20分くらいはもがいている様子を見て吐いたという。

RB「人をバラす人間の半分は、世間に知られたいのさ。新聞に自分の写真を出してもらえるだろうが」
TC「私は、サーハン、R.ケネディ、オズワルド、J.ケネディを知っていた。
   1人の人間がこの4人全員を知ってるだけで仰天ものですよ」

テート家で殺された5人中4人も知っていた。

TC「奇妙なんです。連続殺人を犯した数百人の男と面接したが、共通点は刺青しか見当たりませんでした。
   彼らの80%は刺青をしていた」

RBの独房にギターがあることに驚く。弦を外すと武器になり得ると持ち込みが許されない刑務所もある。

RB「何が起きようと、起きることは起きるんだ、すべて善なのさ。
   てめえ自身の正義ってものがある。世間自体が世間の法を無視してるからよ。
   行くものは帰ってくる。上がるものは下がるさ。運命の流れはそんなもので、おれはそれに従う」

「おれ達が人種戦争を始めようともくろんでいるから、事件が起きたと皆が信じるようマスコミが企てた。
 善良な白人市民を傷つけまわっているのはニガーだとね。
 オレの兄弟姉妹がやったんなら、それは善。人生の何事もすべて善だ。
 もの皆廻るのさ。すべて善きこと。すべてが音楽なのさ。殺しを善いことと思っているわけじゃない」

「君はアーリア人結社の首謀者だと言ってましたね。
 いつか仮出獄できるってことは充分考えられる。考えてるよりずっと早い時期に。

 ゲイリーをやるつもりはなかった。だけどたまたまある事態が起こった。次いでまた。
 そしてすべてが廻りきたった。そしてそれはそれはすべて善きこと」

RB「すべて善きこと」



「うつくしい子供」(この短編集の中で一番好き
英国生まれの女優で享年75歳のコンスタンス・コリアーの葬儀に来たTCは、だいぶ遅刻している友人マリリン・モンローを待っている。
マリリンは必ず遅刻する。コリアーにマリリンを紹介したのはTC。

コリアー:
「あの娘って、うつくしい子供なのよ。女優なんかじゃなく、あの存在感、聡明さ、才気煥発は、けっして舞台では表に出ないわ。
 カメラしかその趣を固定できない。なんだか、あのコ、長生きしないだろうなって思うの」

そう言っていたコリアー女史は亡い。

マリリンは黒づくめのノーメイクでやって来て、後悔した。

TC「ずいぶんと僕は間抜けだな。たった今まで本物のブロンドだって思ってた」

M「本物よ。でも、あそこまで天然ではいかないわ。やーねえ。
  私は葬式なんていらない。もし子どもがいたら、遺骨を波の上に投げてくれるだけでたくさん。
  フィリス(お手伝い)はヘップバーンさんと暮らすらしいわね。運がいいわ。
  ヘップバーンさんてすっごい女性だもの、ほんと素晴らしい人」

「みんなはあたしに演技なんてできないって言うの。エリザベス・テイラーのことも。
 わかってないのよ。『陽のあたる場所』ではたいしたものだったわ」

TCにベスが本当はどんな人って聞かれたら、どう答えるか聞くマリリン。
「君と似てるところがあるよ。率直に話して、辛らつなことを言う人だね」

式場から出たら、マスコミに見られるのを嫌がって、しばらく喋る代わりにシャンパンをおごると約束するが、
彼女はいつもお金を持たないので、エリザベス女王と同じだと言うTC。

「許されてないんだ。不浄な金が、女王の手を汚さぬよう、法かなにかで決まってるのさ」

やっと外に出ると誰もいない。

M「あたしも指輪をはめられたらいいんだけど、手を見られるのが嫌なのよね。全然ほっそりしてないもの。
  テイラーの手もそうよ。でもあの目でしょう、誰も彼女の手なんか見やしないわ。
  あたしは家を持ったことがないの。でも、もう一度結婚して、お金をたくさん稼げたら、
  車2、3台雇って、何から何まで買い漁るわ」

占い師が気になるマリリンに、新しい恋人のことを聞きたいのだろうと思ったTCは、なんとか名前を聞きだそうとする。

M「ロケは嫌ね。『ナイアガラ』なんて、あんなの最低だわ。ウッフッフ。
  あなたの知ってる人の中で一番魅力的なのは誰?」

TC「バーバラ・ペイリイさ。文句なしにね」

TCは、秘密の話をして、気に入ったら、恋人の名前を教えるよう条件を出して話し始める。
18か19の頃、エロール・フリンと一晩過ごした話。

M「そんなの、ちっともたいした話じゃないわよ。エロールとタイロンがしてることをマッサージ師が話してくれたわ」
 「ジョーは悪くなかった。今でも愛してるもの。誠実な人よ」

TCは、相手は作家アーサー・ミラーだと言い当てる。
マリリンは激怒して、トイレに行く。

彼女は化粧室に行くと象の妊娠ぐらい長い間戻って来ない。
覚せい剤を致死量飲んでいるか、手首でも切っているのではと覗きに行く。
彼女は、フェリー乗り場に行こうと言い出す。

「あそこが好きなの。外国の香りがするし、カモメに餌をあげることだってできるでしょ」

タクシーが信号で止まると、震える手で窓を拭いて駄賃を求める男を見て、我慢できないと泣き出すマリリン。

フェリー乗り場に着くと、犬を散歩させている男からサインを求められ、妻に言っても信じてもらえないだろうと言われる。

「去年、クラーク・ゲーブルにナプキンにサインしてほしいって頼んだのよ」
(この件には号泣してしまった。この憧れの大スターとの共演が、マリリンの遺作になったから。

M「あたしが本当はどんな女か聞かれたら、なんて答えるつもりなの?
  とんまだって言うんでしょ。お菓子のバナナ・スプリットみたいだって」

TC「当然ね。だけど、それに付け足して・・・」

彼女は空や雲とともに闇にまぎれ、遠ざかっていくように見えた。
私はカモメより大きな声を出して彼女を呼び戻したかった。
マリリン! 何もかもがなんで決まりきったように消えてなくなるのだろうか。
人生ってなんでこんなに忌々しく、くだらないのだろうか、と。

「えーとね、きみはうつくしい子供だとね」



「夜の曲がり角、あるいはいかにしてシャム双生児はセックスするか」
睡眠薬も酒も効かず、眠れないTCは、自分同士で喋り合う(
そこで“めちゃくちゃ嫌悪リスト”を発表し合い、やたらとビリー・グラハムが出てくる。

TC「好きな人はみんな死んじゃったよ。何人かは最近だし、何人かは何世紀も前にね。
   プルースト、サラ・ベルナール、オスカー・ワイルド、アガサ・クリスティ」

2人(?)は自己インタビューを始める。

Q:体験の中でもっとも驚いたことは?
A:裏切り。見捨てること。動物園でライオンが2匹檻から逃げた時、乳母は僕を置いてけぼりにして、身を翻し走って行った。
  僕にとって本当に恐ろしいことは、自分の心の中の廊下を歩く足音だね、それらがつくりだす煩悶、幽霊のように浮かぶもの。

Q:不得意なことは?
A:アルファベットが暗誦できない。

Q:『名探偵登場』で映画俳優デビューしましたね。どうでした?
A:僕は俳優じゃないし、おふざけでしたのさ。
  ふつうはサインするのは嫌じゃないんだ。けどね、サインをくれと頼む大人の男は例外なく、女房か娘か女友だちのためだという。
  けして自分のためだと言わないんだよ。

話は青い目のアイザック・ディネーセンというペンネームのブリクセン男爵夫人のことになる。
作家になりたいと言うと、アメリカの作家で誰が好きかと聞かれ、
「本当に好きなのは、ウィラ・キャザー」だと言うと「それを書いたの私なんですのよ」と言った。

彼女は、文学ではなく音楽が好きだった。
彼女の作品をけなす言及を聞くと、意気消沈してしまうという。

「自分にある欠点を、他人の中にも見出して、それを非難するのが世の常じゃなくて?
 私は生きてるのよ。脆い存在だわ。あたり前のことよ」

Q:自殺を考えたことは?
A:無論あるさ。誰にだってある。僕の知ってる日本の著名な作家・三島由紀夫の自決後、彼の伝記の引用で驚いた。
 “自殺についてはよく考えますね。自殺するだろうと確信している人は大勢いますよ。トルーマン・カポーティとかね”
  彼が何をもってこの結論を導いたのか想像つかない。彼はいつも愉快で、心温まる時を過ごせたものだ。
  ただ、彼は傷つきやすく、直観力があって、軽はずみに論じる人物じゃない。
  でも、彼がしたようなことをする勇気など僕にはあり得ない。
  死後の世界は信じる。生まれ変わりに賛成なんだ。

Q:死後、何に生まれ変わりたいですか。
A:鳥、ノスリがいい。格好つける必要がない。醜いし、どこでも歓迎されない。
  そのおかげで許される自由には、大いに利点がある。

Q:願い事が1つできるとしたら?
A:自分が恨み、復讐心、その他、無意味で子供っぽい感情と縁のない大人になっていたい、ということ。

たしかに神は信じていたけど、その後信じなくなった。それから聖書そのもの。
多少の常識のある奴なら信ぜよという言葉を信じられるわけがない。

フロベールの小説『聖ジュリアン伝』を例にあげる。
ジュリアンはどんな動物も大好きだったが、父が馬や弓矢を買ってやり狩猟を教えたら、殺生が嫌いじゃないことに気づいちまった。
ジュリアンは両親を殺した。その後村八分にされ、胸糞悪い不気味な人物に化けた神にテストされる。
毛布に入れてあげ、最後の頼みだといって、ただれた唇に口づけをと乞うと、ジュリアンはそれに応えた。
そのため、聖ジュリアンとなったんだ。

神は救ってくれたかい?

うん、そりゃもう。でもまだ聖者じゃないけどね。
アルコール中毒だし、麻薬常習だし、同性愛だし、天才だし。



[訳者あとがきメモ]
翻訳小説を読んで、翻訳の上手下手について、僕なりに見当がついた。
引き受けたのは、自分の文体を新しくするために有効じゃないかと考えたから。

意味は判っても、日本語でどう表現すればいいかというもどかしさは少ない。
彼は彼なりに彫心鏤骨の文体を心がけていて、その迫力に気押された。

彫心鏤骨:心に彫りつけ骨に刻み込む意で、非常に苦心して詩文などを作り上げること。また、単にたいへんな苦労をすること。




以上が、約20年前に訳した本書の「訳者あとがき」。
文庫版になると知らせを受け、読み返すとなんとも具合の悪い感じがまだ残っていた。

およそ僕は、自分の作品について、くよくよすることがない。うぬぼれも、悩みもしない。

彼は喋っていない、ただそこにいる。そしてミテいる。
彼の眼を僕のものにすれば、それでいい。
カポーティはむつかしい。だが、どれほど拙劣な訳でも、カポーティはおもしろい。



[狂気を前にして文学は可能か~文芸評論家・川本三郎 抜粋メモ]
1999年の映画『オール・アバウト・マイ・マザー』に本書が登場する(驚
主人公は文学好きな息子に本書をプレゼントし、少し読んでみてと言われ、序文を読む。

「神が才能を授け給うにしろ、必ず鞭を伴う。
 いや、鞭こそ才能のうちなのだ、自らを鞭打つ」

『冷血』の成功があまり大きかったため、次作を書くのが困難になった。
それ以上のものを書かなければというプレッシャーで押し潰されそうになる。

『冷血』から14年たってようやく、この新作を発表できた。
『カメレオンのための音楽』は至高の、神技に近い集中力の産物だった。

アメリカではノンフィクションのジャンルに入っているが、
実際は、フィクションともノンフィクションともいえない領界上の作品が多い。
私小説の伝統のある日本では、間違いなく短編小説といえるもの、など。

現実のカポーティというより、脚色されたカポーティ。
現実が虚構化し、虚構が現実化する。

都会的でスマートな作家と思われがちだが、アメリカ南部の出身で、内面に潜む暗い闇に敏感な作家だ。

後年はゲイを公にしてはばからなかったが、'40~'50年代、アメリカ社会がゲイに対して非寛容だったため苦悩した。
『遠い声 遠い部屋』は、その苦しみを描いている。




追。
本の冒頭に、「日本語版翻訳権独占 早川書房」とある。
翻訳にも独占なんてのがあるのねぇ・・・

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フィギュアGPシリーズ2015 フランス大会 男女ショート

2015-11-14 19:25:39 | フィギュアスケート
フィギュアGPシリーズ2015 フランス大会@ボルドー 男女ショート

GPシリーズは早くも後半戦。ファイナルに進出できるのは6人のみ。
宇野くんは2位以上、村上くんは優勝すれば進出できる。
女子ではゴールド、トゥクタミシェワが近い。



 

あら、修造さんたち、フランスへは行かなかったの?


現地での解説は織田くん。
チラッと映るフィギュア選手のいろんな道具を使った体幹トレーニング法が気になるこの頃。




【女子ショート】

●ロベルタ・ロッデギエーロ(イタリア 25)


♪映画『プリティ・ウーマン』より うーん。初見かな? 今回最年長ながらGPシリーズ初出場。
3×3、3フリップキレイに決まった。スピンも安定。そっかコストナーみたいなトップ選手の引退で上がってくる選手もいるんだ。
ダブルアクセル、お馴染みの甘いメロディに合わせてコンビネーションスピンでフィニッシュ。
お母さんがコーチなのかな。何度も映ってた。「バランスのとれた選手ですね」(織田)PBを5点以上更新。


●今井遥(22)


♪マラゲーニャ 華やかな衣装。ダブルアクセルから、ジャンプを1から見直したという3×3は転倒、
3フリップも転倒、今回GPシリーズ初の表彰台が目標、スピンは安定、1から作り直したステップシークエンス、
ガッカリな表情。点数も伸びず。努力がなかなか結果に結びつかないのが残念だなぁ・・・

インタビュー:
滑る前は大丈夫と思っていたが、油断があったのか転倒があって、動揺して次にも響いてしまった。
ここで失敗しきったから、明日はできることをしっかり頑張りたい。


●ガブリエル・デールマン(カナダ 17)


♪ミスター・パガニーニ エラのスキャットの入った歌入り。カナダチャンピオン。3×3の着氷はどうか?
GPシリーズ2大会目。フライングキャメルスピン安定。後半、3フリップ、ダブルアクセルは回りすぎた。
カナダ選手は骨格が太い。コンビネーションスピンでフィニッシュ。


●村上佳菜子(21)
 
♪ロクサーヌのタンゴは人気の曲

 
2005年の大ちゃん、キレキレの顔!



先週誕生日を迎えたカナちゃん最初の演技。背中のシースルーがセクシー。
3フリップから、力強いスピン。3×3キレイに決まった!
絶対決めたいといったダブルアクセルがシングルに。コンビネーションスピンはイイ。
難しいというステップシークエンス、これは見応えあり。あ~あって表情。3×3は回転不足? 58.30は現2位。

インタビュー:
アクセルを課題にしてたのに失敗して悔しい。フリーでは絶対決めたい(スピン、ステップはレヴェル4v


●ユリア・リプニツカヤ(ロシア 17)
 

♪エルビス・プレスリー・メドレー シンプルな黒の衣装に変えて、ポニーテール。3×3決まった。
今シーズン苦労している3フリップはこらえた、ダブルアクセル、アメリカ大会では6位。
甘いメロディに変わって、やわらかいステップシークエンス。身長も伸びて大人びたなあ。
レイバックスピン、ビールマンスピンも軸が細い! そして、キャンドルスピン。顔はふっくらしたかな?
キス&クライへの道は、お客さんが近いから、手渡しのプレゼントで手がいっぱいになるね。
地元のメディアで一時期はスケートをやめると言っていたそう(早すぎるよっ)65.63で現1位。


●グレイシー・ゴールド(アメリカ 20)
 

♪エル・チョクロ 試合本番への入り方も美しい。シンプルな黒の衣装の裏地が情熱の赤。
3×3は強気で決めた。レイバックスピンからビールマンスピン、フライングキャメルスピン、
ステップからの3フリップ、ダブルアクセル、笑顔でステップシークエンス、コンビネーションスピン、
去年は怪我でファイナル欠場したんだっけ?! 演技後の挨拶も振りつけの一部のように美しい。
スローで見てもキレがある動き。「マイナスの要素がひとつもない」(織田)PB73.32、現1位。


●エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア 18)
 

♪カルミナ・ブラーナ 改めて見ても挑発的な衣装。前回は悔いの残る結果だったがどうか?
トリプルアクセル挑戦したが転倒。まだ成功のない3ルッツも回転不足。このプログラム合ってないのかなあ・・・?
覇気がないし。3トゥーループで2回目は間にターンが入って減点。ステップシークエンス。
コンビネーションスピンでフィニッシュ。やはり不安の残る表情。ファイナルに進んだとしても心配。
「転倒も回りきっての転倒かどうかで点数が違う。素晴らしいジャンパーだが今大会ではそれが見られない」(織田)
56.21で5位発進は前回より悪い。Oh, my god... フリーでどれほど巻き返せるか?!

女子ショートは、1位ゴールド、2位リプニツカヤ、3位ロッテギエーロ。村上佳菜子は4位、今井遥は9位。



【男子ショート】

解説は佐野さん。
氷上がものすごい煙ってるのはなぜ

 


●パトリック・チャン(カナダ 24)

「テクニックよりも演じることや、曲の解釈、自分自身の個性を発揮することにもっと挑戦したい」

♪マック・ザ・ナイフ 前半グループなんだ/驚
最初の4×3は2×2(2×2は要求されていない要素なので、1つ目は認められるそう
課題のジャンプは手をついた。後半の3ルッツは成功。
スケーティング、ステップシークエンスは自信がある。コンビネーションスピンでフィニッシュ。
苦笑で終わった。今回はライバル羽生くんがいないから余裕かと思ったけど。76.10。




後半グループ。

佐野「パトリックの結果は耳に入ってるだろうけど、変に影響しないでほしいですね」
宇野くんについては「今シーズンからシニアデビュー戦とは思えない。自信があるように見える」
村上くんについては「カナダでは戦った相手が悪すぎた。パトリックに、羽生選手がいましたから。他ならラクラク優勝できたはずだからもったいない」


●村上大介(24)
♪映画『レ・ミゼラブル』よりBring Him Home この映画を観て泣いたって、織田くんに続く泣きキャラだねw

英語力もバツグン。今年は表現をもっと意識したいそう。

4回転サルコウ成功! 安心して観ていられる。トリプルアクセルも高かった!
ジャンパーでもあるのに、繊細な表現力も持ち合わせてると思う。町田樹くんタイプ。
3×3は単独に。感情のこもったステップシークエンス、足替えコンビネーションスピンでフィニッシュ。

 
フランク・キャロルコーチは頼もしいなあ。

佐野「ループを後半にもってくるのは難しいけれども、タイミングが若干ズレた。インサイドで回るスピンはレヴェルを上げる」
80.24で現1位。よし。

インタビュー:
4回転は練習通り、3×3のミスを引きずらずにフリーを滑りたい。フリーのほうが自信がある。
インタビューでもとても丁寧な受け答えで好印象


●アレクサンドル・ペトロフ(ロシア 16)


♪La Leyenda del Beso 直前練習の時は、一度も映らなかったし、何のコメントもされなかったね
トリプルアクセルは完璧。ショート、フリーともに4回転は入れないプログラム。3×3も確実。
頬を赤く染めて、緊張の面持ち。ジュニアで宇野、山本に次いで3位に入った選手。
フライングキャメルスピン、後半3フリップも決まった。13歳からロシアのシニア大会に出場している。
コンビネーションスピンでフィニッシュ。笑顔もなく硬い表情のまま。
佐野「優等生な選手。GOEを稼ごうとするともっとスピードが欲しいかもしれない」


●マックス・アーロン(アメリカ 23)


♪誰も寝てはならぬ 4×2になり手をついた。トリプルアクセルで転倒。アメリカ大会の名演はふたたびならず。
3ルッツは成功。昨シーズンと同じ選曲。有名なメロディにのせてステップシークエンス、コンビネーションスピンでフィニッシュ。
佐野「難しいですね、フィギュアスケートってねえ! メンタルがものすごい作用する。失敗出来ないプレッシャーもある」
72.91で伸びず4位。


●宇野昌磨(17)
 
「習得するのに時間がかかる」(山田)宇野くんの小さい頃の映像はどれも可愛くてしかたないね

 
「回りすぎていたのが、回転をしていくうちに徐々に直ってきました」(宇野)

 
「ますはこの試合で全力を発揮できるよう頑張りたい」


コーチがしっかり両手を握って、言葉をかける。山田さんは来てないのね

♪Legend World イーグルからのトリプルアクセル決まった! フライングキャメルスピン、ハモニカにのせてスピン。
4回転も成功、よーーーーーし! ラストジャンプ3×3も成功。
ステップシークエンスも躍動感がある。ドライアイスの中で滑ってるみたい 難しい入り方のコンビネーションスピン。


ガッツポーズも出て、爽やかな笑顔、完璧ノーミスのショート!!

佐野「試合やるたびに上手くなってる気がする。今日4回転入ったの彼だけでしょ?」

 
なぜか、キス&クライ行く途中の通路から戻ろうとしてたw ファンの大量のプレゼントにも引いてたし、けっこう面白いww

佐野「ジャンプ降りた後の左がビシっとおりてるのがイイ。“簡単だよ、僕は”って感じですね」ほんと左脚ピーン!


PB89.56で現1位。パトリック超えた! 彼は将来、オリンピック金狙えるぞ

インタビュー:
やっと今シーズン、ショートで初めてジャンプをすべて成功出来た。やっと、という気持ちが強いです。
フリーでは、前回以上のものを練習してきたから、試合で出せるよう、ゆっくり寝て、フリーにのぞみたい(眠るの大事
1本目のジャンプをどう跳ぶか集中して頑張りたいと思います。


●デニス・テン(カザフスタン 22)


♪ミサ・タンゴ 4回転トゥーループは転倒、トリプルアクセルは高い。キャンドルスピンやわらかい。
後半、3×2に乱れた。ステップシークエンスはアメリカ大会でレヴェル4。コンビネーションスピンでフィニッシュ。
ガッカリ顔。調子が上がらないなあ。彼もフランク・キャロルコーチ。厳しそうだけど、ぬいぐるみで笑わせようとしたりして意外。
80.10で現3位。


●マキシム・コフトゥン(ロシア 20)


♪I Can't Dance GPシリーズ初戦。ギターが刺繍された衣装。4×3は両足着氷か? 
4回転トゥーループは手をついた。トリプルアクセルは回転も速かった。ハードロックなナンバーのカッコイイ曲。
佐野「曲のイメージが違ってイイですね。今まではクラシックバリバリだったけど」
ステップシークエンス、コンビネーションスピン。決めポーズもイイね。ショートに4回転2回入れたのは彼のみ。
86.82は2位。

男子ショートのトップは宇野昌磨!、2位コフトゥン、3位村上大介! フリーが楽しみ


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