1974年初版 1975年 第2刷 田中とき子/訳 山中冬児/画
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
モンゴメリーと言えば『赤毛のアン』
とはいえ、何冊もあるから、たぶん最初の1、2冊しか読んでない気がする
(読書メモもブログになかった
アニメも見ていないし
本書も「ジュニア・ベスト・ノベルズ」の流れで借りてから気づいた/驚
いまだにプリンス・エドワード島が大人気の観光地なのに納得
自然描写が瑞々しくて、カナダの大自然を体感したくなる
本書の後半があると知って、ウィキを開いて、モンゴメリーの概略を読んでいたら
夫も自分もうつで亡くなってると知って驚いた
それだけ繊細な“センス・オブ・ワンダー”な人柄だったのではないか
・
L・M・モンゴメリ - Wikipedia
本書もアンシリーズも、自身をモデルにしている様子
主人公の少女はなによりも
“変化”を嫌い
なにより自分の生まれ育った銀の森屋敷に異常なほど執着しているのが興味深い
そういえば、『風と共に去りぬ』のスカーレットもタラの地に執着し
恋人は去っても土地は裏切らないと信じていたっけと思い出した
地上の楽園のようなプリンス・エドワード島で暮らしていても
悲喜こもごもな人生を送るのだから
どこにいてもヒトは山あり谷ありなわけだね
ちなみに、続編も読んで、ほんとうに感動して涙したので
ネタバレを読む前にぜひ読んでいただきたい1冊
【内容抜粋メモ】
登場人物
<ガーディナー家>
アレック 父
メアリー 母 体が弱い
ジョニー 長男
シドニー 次男
ウイニー 長女
パット 次女 7歳 パトリシヤ
レーチェル 末娘 チャー子
ジュディばあや
真っ黒なネコ“紳士のトム”
トム叔父 エディス叔母 バーバラ叔母
ヘーゼル叔母 夫ロバート(ボブ叔父)
フランシス叔母 入江の家に住む いとこのダン・ガウディ
メイ・ビニー 意地悪なクラスメイト
ヒラリー・ゴードン ゴードン夫婦の養子 ジングル 父は亡く、母ドリーンは遠方に住んでいる
マクギンティ ジングルの愛犬
ローレンス ジングルの養父 とてもケチ
マライア叔母 ジングルの養母
エリザベス・ウィルコックス ベッツ パットの親友
ヘレン ベッツの母
ハリス・J・ハイネス パットの初恋の人
●まえがき
「面白いことなどひとつもない
なにか小説みたいなことでも起きないかな」と考えたことはありませんか
ところが、
あなたを取り巻いているのは
小説の世界そのものなのだと言ったら驚くでしょうね
しかも、あなたが主人公なのです
この本を読むうちに「これは私のことを書いているんじゃないかしら?」と思うに違いありません
●少女パット
パットは情が深すぎると心配する家族とジュディばあや
ジュディばあやは祖母が
アイルランドの魔女だったから
自分にもその血が流れているかもしれないと話す
妖精、古い伝説などの話をよく知っていて、子どもたちも聴くのが大好き
ばあやはアイルランドで生まれ、城で奉公していたが
放浪癖のある兄とともにオーストラリアに行き
次はカナダに行き、プリンス・エドワード島に来た時
ここが気に入って、シラカバ屋敷のガーディナー一家を世話してきた
パットを“私のいい子ちゃん”と呼び、一番のお気に入り
ジュディばあや:嫁に行くも苦労、行かぬも苦労なら、慣れた苦労のほうがええだからね
真っ黒なネコ“紳士のトム”はジュディばあやの行く所、いつでも離れない
●シラカバ屋敷
パットと1つ上の兄シドは『秘密が原』が大好き
シラカバ屋敷から見える『大きな寂しい家』は、何年も空き家で
パットは可哀想でならない
●パセリ畑
ジュディばあやは「パセリ畑で赤ん坊を見つける」と言う
パットが生まれた時も、そうして見つけたと話す
母さんは赤ちゃんが欲しいが、体が弱いのでみんな心配している
変化がダイキライなパットは“よそ者”を嫌う
“入り江の家”からフランシス叔母も来て、妹ウイニーと長兄ジョーを連れて行き
シドとパットはトム叔父の家に泊まることになる
トム叔父の家にはエディス叔母とバーバラ叔母がいる
シラカバ屋敷に戻ると可愛い妹が産まれていて
パットは元から家族のような気がして気に入る
レーチェルと名付けられたが、みんなはチャー子と呼ぶ
●学校
パットは学校に通うことになった
クラスメイトのメイ・ビニーは意地悪だが
あれほどシラカバ屋敷を離れるのがイヤだったのに、慣れてくると学校も好きになる
9月末にヘーゼル叔母がロバートと結婚すると決まった時もパットは反対したが
フラワーガールに選ばれると大喜びする
式の当日、ヘーゼル・マジソンと呼ばれることになると分かり
また泣きそうになるが、1年後にはボブ叔父も好きになる
●暗い夜道
シラカバ屋敷では芯の腐ったポプラを伐り倒すのにパットが悲しむため
わけを知らずにフランシス叔母の入江の家に招かれたパット
日暮れに馬で送ってもらう予定が、マクラウドさんの車に乗ることになり
行くと、クルマは故障、シラカバ屋敷まで3マイル歩いて帰って驚かそうと思いつく
しかし、夜になると急に寒くなり、道に迷い、泣きそうになっていると
ゴードン夫婦の養子ヒラリー(ジングル)に会い、家まで送ってくれる
貧しいゴードン家では虐待されていると噂されている
レディのたしなみとして、お礼として月曜に食事に来ないかと誘うパット
●招待
月曜日、青いメガネをかけたジングルは愛犬マクギンティとともにやって来る
2人の家の境を流れる川を“ヨルダン川”と名付け
素晴らしい場所を発見した時は
“秘密が原”と名付けた
建築家を夢見るジングルは、いつかパットにも家を建ててあげると約束する
ジングル:シラカバ屋敷だけは、どこも変えようとは思わないな
ジングルは孤児と聞いていたが、父は赤ん坊の頃に亡くなり
母は再婚してホノルルで暮らしている
月曜のたびに手紙を書いているが、ポストに入れる勇気がなく束にしてしまっている
そんな話を交わした牧場は“しあわせが原”と名付けて、2人の秘密にする
●マクギンティ
10月の末、“しあわせが原”に行くと、マクギンティが行方不明でジングルが泣いている
1週間経っても見つからず、ジュディばあやに相談すると
ジュディばあや:有名な魔女のメアリ・アン・マクレナハンの所に行くがええ と教える
メアリ:
エディス叔母のネコが、私のネコに話してくれて何でも分かってる
あんたの首に小さいほくろがあるね それは魔女の印だ
歳の若い魔女のほうが力が強いだよ
メアリは2人に犬が戻るフシギな方法を教える
言われた家を訪ねてマクギンティと再会し、連れて帰る
メアリは犬泥棒と親しいことを知っているジュディばあやのはからいだった
●大きい寂しい家
9年後 流感が流行り、パットは“にれの木屋敷”で過ごす
最初は慣れなかったが、ヘレン叔母の家も気に入る
ジェシー叔母がお茶会を開いて、退屈したパットが2階に上がると
泣いている美しい少女を見つける
名はエリザベス・ウィルコックスで、ベッツと呼ばれている
“大きい寂しい家”に住むことになったのがイヤだと言うが
パットの家から近くて、いい家だと話すと、すっかり仲良くなる
ベッツは体が弱いため、引っ越してきた
ジュディばあや:あの子は白髪になるまで生きてはいまいよ
パットはベッツの家に泊まりにいき、同じベッドで寝て
同じ日に産まれたのだから、同じに結婚式を挙げ
同じ日に死にましょう、とまで約束する
●母親
ジングルは、明日、母ドリーンが来ると興奮して話す
15歳になって初めて会うため、どんな人か知らないが
きっとジングルを引き取りに来るつもりだと励ますパット
母のために長い時間をかけて花束をつくり
パットにもぜひ一緒にいてほしいと頼む
ドリーンは美しいが、真っ赤な口紅が母親らしくないと感じるパット
キレイな女にうつつをぬかす夫のために
いつまでも若く、美しくありたいと思うあまり
身をすり減らしたと気づいたのはもっとあとのこと
ドリーンはジングルを見ても息子と分からず
もらった花束も重いから帰りに1本だけもらうと言う
マクギンティを紹介しても、みっともない犬だと笑ったため
ジングルの顔は裏切られて暗赤色に変わる
ドーリン:
時間がないの 夕方の汽車に乗らなきゃ
そのメガネを外したほうがいいわ
養父ローレンスと今後の話し合いが済むと、花束を置いたまますぐに出ていく
ドーリン:また12年して会った時は、こんなに大きくなっていないでね
マライア叔母:
来年、あんたは進学クラスへ入り、その後、大学へ行くんだ
費用は払うからと言ってたからね
母を連れて行こうと思っていた“しあわせが原”に行くジングルとパット
ジングル:
僕に10ドルくれたんだ
今度来る時なんかないさ ボクに愛情なんかひとかけらも持ってやしない
これからボクをヒラリーと呼んでくれないか
ヒラリーは急に大人になったようで
パットに母への手紙を焼いてくれと頼む
ヒラリー:
大学へ行って、建築家になる 必ず成功してみせるぞ
パットは我が家、家族があり、愛情に包まれている自分をしみじみ幸せだと思う
●行ってしまったジョー
パットは家族の中で一番勉強ができたため、進学クラスに行くことになる
教師の免許をとって、地元の小学校に勤めれば、シラカバ屋敷から離れずに済むし
貧しい父の経済を支えることもできる
ある日、長兄ジョーが突然、家を出て
モーガンさんの船で西インド諸島に向かったと知る
みんなショックで泣いて悲しがるが
ジョーから遠い国の冒険話がたくさん書かれた手紙を楽しみにするパット
ウイニーはフランクと真剣に付き合い出す
シドはベッツに夢中になる
●危篤になったパット
パットは試験の前にショウコウ熱にかかり生死をさまよう
家族は諦めかけたが、ジュディばあやだけは「前ぶれがない」という理由で
寝ずの世話をし続ける
10週目でようやく自由に体が動かせるようになり
いきなり髪が抜け落ちたが、再び生えた時には、美しい黒い縮れ毛に喜ぶ
クイーン大学の試験も1年延期となる
●初恋
ベッツは合格したが、ヒラリーは落ちたため、3人で学校に通う楽しい日々が始まる
ハンサムなハリス・J・ハイネスが教会でパットに見惚れてから意識するパット
マイラと付き合ってる噂を聞いてショックを受ける
エドナのパーティーにオシャレして出かけ、ハリスと踊り、家まで送ってくれた
飛行士になるのが夢だと話すハリス
一緒に映画を観に行き、甘い会話を交わすが
三日月の美しさを語っても分かってもらえず
ヒラリーなら分かるだろうにと思う
ハリスはヒラリーのことを“半気ちがいの建築家”と呼んでいた
ハリスの所有欲も気になりはじめ、初めてケンカをして
急に恋の魔力が消え失せた
ハリス:キミはボクのことだけ考えてりゃいいんだよ
パット:もう二度と会いたくないわ
ハリス:移り気もいいところだな
メイ・ビニーが彼のことを女たらしと言ってたのを思い出す
ジュディばあや:
ハリスはあんたにとっちゃ遠足みたいなものっだ
あの子は少し図々しくはなかったかね
パットは二度と恋愛などしないと誓う
ヒラリーと散歩に出かけ、恋愛より友情のほうがどんなにいいかと思う
●帰宅
ジョーが急に帰宅し、愛犬シュニクルフリッツは狂ったように喜ぶ
遠い国のいろんな話をして、再び海へ去る
ジュディばあや:去る者があれば、来る者もある
老犬シュニクルフリッツは、悲しみのあまり、ジョーの枕に寝て亡くなった
●夏の計画
パットとベッツは夏の1週間にキャンプに行く計画を立てる
パットは入江の家に2週間泊まりに行くため、名残を惜しんで別れる
パット:
人生って美しいわ!
1週間後、父が迎えに来た
体の弱い母になにかあったのかとドキリとしたが
ベッツが肺炎で危篤になり、パットに会いたがっていると言う
ジュディばあや:ベッツは誰にでも好かれたから、天国でも来てもらいたいんだろうて
ベッツの手を握り、亡くなった時もパットは信じられないままだった
夢の中のように葬式が行われ、仲良くもなかったメイ・ビニーが泣いているのを見て滑稽に思う
自分の愛する者が死ぬということを初めて知り
夜になって、涙があふれ、いつの間にかジュディばあやがそばで慰めていた
パット:
人生がめちゃめちゃになってしまった
それでも生きていかなくちゃならないのね
ジュディばあや:
1日ずつ生きていけばええだよ
誰でも、もう1日ぐらいは生きていられるだからね
ウィルコックス夫婦は家を売って、町へ越した
別の家族が住み、灯が見えるが、ベッツの部屋はいつも暗い
パット:ヒラリーがいなかったら、この夏を生き抜けなかったわ
●家を離れる
ふたたび、パットの笑顔が戻るようになり
パットとヒラリーは試験に上位で受かり、安下宿に越した
最初は激しかったホームシックも、慣れてきた
ヒラリーは学院の女生徒の憧れだったが、パットにしか興味がなく
パットはそれに気づかないまま眼中にないことを知らない者はいなかった
●手術
パットは地元の小学校の教師になることが決まるが
母は冬中、心臓のクスリを飲み、ある日、重態となる
医師は手術をすれば助かるかもしれないが、しなければ望みはないと告げたため入院する
手術は成功し、ようやく家族も安心する
ウイニーは、フランクを待たせているため、9月末に結婚が破綻になるかもしれないと泣く
ジュディばあやはもう歳だし、パットは教師として働くし
家のことをやるのはウイニーしかいない
パットは教師にならず、家を守るから、ウイニーは結婚するんだと励ます
●姉の結婚
ウイニーらはフランクが英国国教徒のため、教会で式を挙げるしきたりで
母の体調を考えて、父も母と家に残ることになった
ウイニーがいない部屋を見て悲しくなるパット
ジュディばあや:
今じゃあんたがここの女主人だからね
私はその通りにするだよ
●別れ
ヒラリーは建築の5年課程を研修するためトロントへ行くのが決まる
子ども時代が去り、青春の歓喜も終わったことを感じるパット
夜行列車に乗る前に“しあわせが原”で会う2人
ヒラリー:
僕たちはいつか親友以上になれないかい?
パット:
あなたは成功して一流になるわ
昔馴染みの友だち、ことにオールドミスのパットは
あなたと知り合いだったと自慢するでしょうよ
いつか私に家を建ててくれるわね
シドが結婚して、シラカバ屋敷から追い出されたら、そこで暮らすから訪ねて来てね
私は銀髪の可愛いおばあちゃんになってるわ
20歳のヒラリーと、18歳のパットは老いた旅人同士の気がした
パットはどれほど彼を愛しているか言いたかった
肩に顔をうずめて泣きたかったが、そうすればヒラリーは抱きしめるだろう
ヒラリーはシラカバ屋敷が憎らしくなった
「今に必ずキミをボクのものにするよ」と心に誓って去る
なにもかも失ってしまったと泣いて帰るパットの目に
シラカバ屋敷がいつも変わらぬ姿で迎えてくれる
パット:
私は私の世界の真っ只中にいるのだ
私は自分の仲間に囲まれて暮らしているのだ
これが私の家なんだわ
とフシギな満足感が広がる
■
あとがき
本書は二部作で、後編は『パットお嬢さん』として紹介されている
絶版になっていたのをトロントの古本屋で探してもらった
モンゴメリーは『グリーン・ゲーブルズの手紙』の中でこう書いている
私はプリンス・エドワード島で生まれた
ことに有難いのは、子ども時代をたくさんの木に囲まれて過ごしたこと
木々にはそれぞれの性格がある
私の生活のすべての喜び、悲しみを分かち合ってくれ
空想の翼に乗って妖精の国へ行くパスポートを持っていたから
退屈したことがありません