村上春樹さん、ヤクルトも優勝したし、なにかいいことがあるといいですね。
第三章はずばり「文学賞について」です。生々しい話題です。なぜ生々しいかって、いいじゃないですかご本人が「生々しい」とおっしゃっているんですから。そしてこの章のほとんどは芥川賞の話です。二回候補になって村上氏はあがりになったそうですが、ノーベル賞にも「あがり」はあるのかな。
生々しいはなしは本文を読んでいただくとして、芥川賞のレベルについて触れています(65頁)。ご案内の様に芥川賞は年に二回、決まりはないようですが、複数人授賞することが多い。しかも新人である。毎回レベルの高い作品がある訳ではない。村上氏はせいぜい5年に一作くらいいい作品があるだけではないか、と書いています。これでも大アマだと思いますね。10年に一度でもあまいくらいだ。実績を見ると。
それはそれでいい。出版社の営業的色彩の濃いイベントですからね、どうせ。
私なんかが分からないのは、そう言う人たちの作品が毎回結構売れるということなんですね。よっぽど活字に飢えているんですかね、国民は。別に悪いとは言いませんが。
村上氏は作家として励みになるのは芥川賞ではなくて、一定の読者が自分にはあるという感触だと言う。正論です。
そこで村上氏が独自にマーケティングを行っている。これは村上氏の読者だけではなくて、全体として常時小説に親しむ人が国民の5パーセントあると主張していることです。どこかに、マーケティング上の数字があるのかもしれないが、私にはべらぼうに巨大な数字に、つまりあまりにも楽観的すぎる数字に思われます。
600万人になりますからね。そんなコアになる「客」がいるのかな、と首をかしげます。もっとも、本を出せば片っ端からミリオンセラーになる村上氏ならこのくらい楽観的になるのかもしれない。
ほとんどが芥川賞の話なんですが、彼は海外で複数文学賞をもらっていますよね。チェコとイスラエルだったかな。その辺の話は何故書かないのでしょう。「文学賞なんて」と言う割には海外進出のマーケティングの一環として文学賞受賞は積極的に工作(言葉は強すぎるかな)していると聞きますし、要するにくれる物なら何でも拒まず、とくに海外なら大賛成ということなのだろうか。この辺もノンフィクション風に書いて欲しかった。
この本にはかなり海外の話もほかでは多いので不思議に思います。ノーベル賞にしても積極的に授賞を後押しする工作マシーンを持っている(使っている)というし。読者としては興味のあるところではないでしょうか。
マーケティング認識については、上に紹介したコア5%説に加えて、「浮動票(村上氏の表現)」つまり時には本を買おうかなという層は国民の95%(上記参照)の半分(つまり約5000万人)のマーケットがあるというのです。なんとも剛毅な話ではありませんか。
しかも、海外にも日本の何倍ものマーケットがあるというのです。いかにも村上春樹氏らしいですね。