ホルムアルデヒド (formaldehyde) は有機化合物の一種で、最も簡単なアルデヒド。毒性は強い。分子式は CH2O。酸化メチレンとも呼ばれ、IUPAC命名法では メタナール (methanal) と表される。CAS登録番号は [50-00-0]。
製法・性質
触媒存在下にメタノールを空気酸化して得られる。さらに酸化が進むとギ酸となる。融点 -92 ℃、沸点 -19.3 ℃、分子量 30.03である。刺激臭を持つ無色の気体である。
水などの極性溶媒に可溶で、37% 以上の水溶液はホルマリンと呼ばれる。ホルムアルデヒド及びホルマリンを含むホルムアルデヒド水溶液は、毒物及び劇物取締法により医薬用外劇物に指定されている。簡単に重合し、無水のものはトリオキサン (CH2O)3、水溶液からはパラホルムアルデヒド HO(CH2O)nH を生ずる。
フェノール樹脂、尿素樹脂などの原料としても広く用いられる。
ホルマリンの2008年度日本国内生産量は 1,128,801 t、工業消費量は575,633 t である[1]。
人体へは、粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こす。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症を生ずる。
接着剤、塗料、防腐剤などの成分であり、安価なため建材に広く用いられている。しかし、建材から空気中に放出されることがあり、その場合は低濃度でも人体に悪影響を及ぼす、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られる。現在、建築基準法によりホルムアルデヒドを放散する建材の使用制限が設けられている。建材には、放散量によって最低F☆☆☆☆から最高F☆までのランクがある。
1948年10月30日から1990年11月22日まで農薬登録を受け、殺菌剤として稲のいもち病やジャガイモの黒あざ病防除に種子消毒の形で使用された[2]。
WHOや厚生労働省により 0.08 ppm の指針値が設けられている。現在のところ、性能規定や指針値を超えた場合の罰則等はない。
ホルムアルデヒドはWHOの下部機関である国際がん研究機関によりグループ1の化学物質に指定され、発癌性があると警告されている。
脚注
- ^ 化学工業統計月報 - 経済産業省
- ^ 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著 『農薬毒性の事典 改訂版』 三省堂、2002年。ISBN 978-4385356044。