ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジャッキー・マクリーン/ライツ・アウト!

2024-04-09 21:18:59 | ジャズ(ハードバップ)

本日はジャッキー・マクリーンです。マクリーンはハードバップシーンを代表するアルト奏者ですが、一方でその魅力を説明するのはなかなか難しい。系統的には一応パーカー派なのでしょうが、やや音が外れた感じがする独特の奏法で、お世辞にも流麗とは言えません。むしろ白人アルトのフィル・ウッズやハーブ・ゲラー、チャーリー・マリアーノあたりの方がパーカー直系という感じがします。ただ、聴き慣れてくると独特のマクリーン節に親しみを感じるようになってきます。特に50年代後半から60年代前半にかけてプレスティッジやブルーノートに残した一連の作品群はマクリーンにしか出せない独特の味わいがあります。本作「ライツ・アウト!」は1956年1月27日録音のプレスティッジ第1弾。メンバーはドナルド・バード(トランペット)、エルモ・ホープ(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)と言った顔ぶれです。

全6曲。うち"A Foggy Day"1曲を除いてメンバーのオリジナルです。1曲目はタイトルチューンでもある"Lights Out!"。文字通りライブが終わり照明の落ちたステージでメンバーが即興で演奏しているかのようなスローブルースです。13分近い曲でマクリーン、バード、ホープがたっぷりと尺を取ってブルージーなソロをリレーして行きます。他では3曲目バード作のバラード”Lorraine”も良いです。スタンダード曲のような美しいメロディを持つ曲で、バードとマクリーンが情感のこもったバラード演奏を聴かせてくれます。4曲目はジョージ・ガーシュウィンの定番スタンダード”A Foggy Day”。実はこの3日後にマクリーンはチャールズ・ミンガスの「直立猿人」セッションに参加し、エキセントリックな”A Foggy Day"を演奏しますが、ここではオーソドックスな解釈で、ミディアムテンポの軽快なチューンに仕上げています。残りはマクリーンとバードのオリジナルですが、既存のバップ曲をアレンジしたようなどこかで聴いたことがあるような曲ばかり。ただ、ラストの”Inding”は残り30秒でマクリーンとバードが前衛風の不協和音を奏でる不思議な終わり方です。個人的には録音数の少ないエルモ・ホープがたっぷり聴けるのも嬉しいポイントです。

 

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クリフォード・ブラウン/ジャズ・イモータル

2024-04-08 20:54:16 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はクリフォード・ブラウンのパシフィック・ジャズ盤をご紹介します。パシフィック・ジャズと言えばチェット・ベイカー、ジェリー・マリガン、バド・シャンクらを擁し、当時全盛期だったウェストコーストジャズを牽引していたレーベルです。そこにブラウンの録音が残されているのは意外な気もしますが、収録当時(1954年7月)のブラウン&ローチ・クインテットはロサンゼルスを本拠地としていたので、ふらりとレコーディングに参加したのでしょう。名義上はブラウンがリーダーとなっていますが、実際にはアレンジャーを務めるジャック・モントローズ(よく似た名前ですがJ・R・モンテローズとは全くの別人です。念のため)が中心人物と思われます。メンバーはブラウンに加え、ズート・シムズ(テナー)、ボブ・ゴードン(バリトン)、ステュ・ウィリアムソン(トロンボーン)、ラス・フリーマン(ピアノ)、シェリー・マン(ドラム)、ベースは曲によってカーソン・スミスとジョー・モンドラゴンが交代します。ブラウン以外全員が白人で、演奏される音楽も典型的なウェストコースト・サウンドです。余談ですがボブ・ゴードンはこの録音の2週間後に自動車事故で死んだそうです。享年27歳。まるで翌年のブラウンの運命を予感させるようです。

さて、白人ばかりのウェストコースト・サウンドの中でブラウンがどういったプレイをするかが注目ですが、評価は正直微妙なところ。もちろんブラウンのトランペットの音色自体はいつもと変わらず素晴らしいです。ただ、ジャック・モントローズの編曲が微妙。せっかくブラウンとズート、シェリー・マンという稀代の名手達を揃えているのだから、彼らのアドリブに任せていれば良いものを、変に4管のアンサンブルとかアレンジにこだわるんですよね。ただ、それでもマニア的には楽しむポイントがいくつかあります。まず、ブラウンの代表的名曲である"Joy Spring"と"Daahoud"は解説書によると本作が初演だそうです。翌8月にかの名盤「クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ」に収録され、知名度も内容もそちらの方が上ですが、西海岸風の本作も悪くはないです。特に”Daahoud”はなかなかの熱演です。他では1曲目の”Tiny Capers”や6曲目”Bones For Jones”もブラウンの自作曲で、どちらも彼らしい明るくハッピーな楽曲です。3曲目モントローズ作の”Finders Keepers”もなかなか魅力的な旋律。ただ、スタンダード”Gone With The Wind”はストレートに演奏すれば良いのに、編曲に凝り過ぎて何だか変な曲になっています。7曲目”Bones For Zoot”はブラウンは関係なく、ズート・シムズのワンホーン・カルテット。明らかに関係のないセッションの曲で、なぜ本作に収録されているのかは謎ですが、演奏自体は良いです。

 

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ベニー・ゴルソン&ザ・フィラデルフィアンズ

2024-04-07 17:53:39 | ジャズ(ハードバップ)

ハードバップ期に活躍したジャズメンの中にデトロイト出身者が多いことは、以前「ジャズメン・デトロイト」で述べましたが、今日取り上げるのは東部フィラデルフィア出身のジャズメン達です。ニューヨークほどではないにせよフィラデルフィアも人口200万を超える大都市とあって、ジャズシーンも賑わっていたようです。本作に集まったメンバーはベニー・ゴルソン(テナー)、リー・モーガン(トランペット)、レイ・ブライアント(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)と十分豪華ですが、他にもボビー・ティモンズ、マッコイ・タイナー、パーシーの弟ジミー&アルバート・ヒース、さらにはジミー・スミスも同地の出身だそうです。録音日は1958年11月17日。発売元はユナイテッド・アーティスツ・レーベルです。

全6曲。作曲者としても名高いゴルソンがリーダーとあって、彼の自作曲が3曲演あります。代表曲である”Stablemates”も入っていますが、個人的イチ押しは2曲目”Blues On My Mind”。冒頭のレイ・ブライアントのブルージーなソロが最高です。豪放なゴルソンのテナー、いつもながらバリバリ鳴らすモーガンのトランペットも素晴らしく、ずばり名曲・名演と言って良いでしょう。ただ、もう1曲の自作曲”Thursday’s Theme"はちとマイナー調のメロディがくどいか?自作曲以外も充実の出来。オープニングの”You’re Not The Kind"はジジ・グライス作だそうですが、活気あふれるバップチューン。4分あまりの短い曲ですが、ゴルソン、モーガン、ブライアントが目の覚めるようなソロをリレーしていきます。ジョン・ルイスの”Afternoon In Paris”も素晴らしい。パリの春を思わせる洒脱なメロディをミディアムテンポでグルーヴ感たっぷりに演奏しています。特にモーガンとブライアントのソロが光ります。ラストのレイ・ブライアント作”Calgary”も3分余りの短い曲ですが、ファンキーで小気味よいナンバーです。以上、これだけで十分名盤と言って良い内容ですが、CDにはボーナストラックとしてベニー・ゴルソンが同年にヨーロッパツアーした際の曲が4曲収録されています。ただ、これは以前に本ブログで紹介した「ロジェ・ゲラン=ベニー・ゴルソン」と1曲を除いて同じ内容なので、解説は割愛します。

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ソニー・ロリンズVol.1

2024-04-05 21:08:21 | ジャズ(ハードバップ)

ソニー・ロリンズはビバップ期から活躍するいわゆる”ジャズ・ジャイアンツ”の中で数少ない存命人物の1人です。御年93歳。最近はさすがに演奏活動は行っていないようですが、私がジャズを聴き始めた1990年代後半はまだバリバリ現役でした。そんな息の長い活動歴を誇るロリンズですが、全盛期は1950年代中盤というのは衆目の一致するところでしょう。特に1956年は彼のキャリアの中でも最も充実していた年と言ってよく、リーダー作としてはプレスティッジに「ソニー・ロリンズ・プラス4」「テナー・マッドネス」「サキソフォン・コロッサス」、サイドメンとしてもブラウン&ローチ・クインテットの「アット・ベイズン・ストリート」、セロニアス・モンク「ブリリアント・コーナーズ」とジャズ史に残る演奏を次々と残しています。その締めくくりとして1956年12月16日に吹き込んだのがブルーノート移籍第1弾である本作「ソニー・ロリンズVol.1」です。ロリンズにしては珍しいトランペット入りのクインテット編成で、メンバーはドナルド・バード(トランペット)、ウィントン・ケリー(ピアノ)、ジーン・ラミー(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)です。

全5曲、うちバラード”How Are Things In Glocca Morra”を除いて全てロリンズのオリジナルです。全体的にこれぞブルーノート・ジャズといった感じのマイナーキーのナンバーが揃っています。後世に残るような名曲は正直ありませんが、どの曲もロリンズの男性的で太い音色のテナー、力強いバードのトランペット、いつもながらのケリーの名人芸により、聴き応えのある内容になっています。マックス・ローチもラストの”Sonnysphere”でロリンズと2分半にも及ぶスリリングな掛け合いを聴かせくれます。個人的イチ押しは気だるいテーマで始まる1曲目”Decision”。レイジーな雰囲気が"大人のジャズ"って感じですよね。唯一のスタンダード”How Are Things In Glocca Morra"がまた素晴らしく、ロリンズのダンディズム溢れるテナーの音色とケリーのロマンチックなピアノに聴き惚れるばかりです。ブルーノートが誇るリード・マイルスのジャケット・デザインも最高にかっこいいですね。

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ジジ・グライス & ザ・ジャズ・ラブ・クインテット

2024-04-04 20:52:13 | ジャズ(ハードバップ)

ジジ・グライスとドナルド・バードによる双頭コンボ”ジャズ・ラブ”については、過去にも何度か取り上げました(コロンビア盤「ジャズ・ラブ」、RCA盤「ニュー・フォーミュラズ・フロム・ザ・ジャズ・ラブ」)。クインテットは他にも4つの作品を様々なレーベルに残していますが、今日ご紹介するのは1957年2月27日と3月7日に吹き込まれたリヴァーサイド盤です。ここではジジ・グライスが単独リーダーになっていますが、バードももちろん参加しています(ジャケット写真右上)。他のメンバーもついでにジャケ写で紹介すると、左上のダンディな髭の御仁がアート・テイラー(ドラム)、左下の眼鏡くんがウェンデル・マーシャル(ベース)、右下がウェイド・レギー(ピアノ)、中央はもちろんジジです。

全6曲。スタンダードが2曲、メンバーのオリジナルが4曲です。ジャズ・ラブのラブはLoveではなく、Lab(実験室)のことですが、だからと言って小難しい実験音楽を演奏するわけではなく、基本的にハードバップです。ただ、1曲目のスタンダード”Love For Sale”は少しひねりを加えており、冒頭のテーマをゆったりアンサンブルで奏でた後、転調してジジとバード、レギーが急速調のアドリブを繰り広げ、さらにテイラーの長尺のドラムソロを挟んで、最後に再びテーマアンサンブルという展開です。2曲目”Geraldine”はレギー作のバラードですが、一風変わったミンガス風のメロディです。3曲目”Minority”は作曲家ジジの代表作で後にビル・エヴァンスやキャノンボール・アダレイも取り上げた名曲です。本作が初出ではありませんが(初演はクリフォード・ブラウンの「パリ・セッション」)、ここでの演奏も見事です。4曲名”Zing! Went The Strings Of My Heart”は演奏される機会はあまり多くありませんか、魅力的な旋律を持つスタンダード曲で、ここでも軽快なハードバップに仕上がっています。5曲目"Straight Ahead"とラストの"Wake Up!" はどちらもジジ作で前者はブルース、後者は軽快なバップです。パーカー直系のアルトを聞かせるグライス、ブリリアントなバードのトランペットはもちろんですが、録音の少ない夭折のピアニスト、ウェイド・レギーも存在感を発揮しています。

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