◼️「反撥/Repulsion」(1964年・フランス)
監督=ロマン・ポランスキー
主演=カトリーヌ・ドヌーヴ イボンヌ・フルノー ジョン・フレーダー
ポランスキー監督の映画には閉塞感がつきまとう。それは場所としての息苦しさだったり、主人公のいる世界の狭さだったり、ともかくそれは外界から隔てられた主人公がいる世界。この「反撥」は、性への期待と恐怖が入り交じる思春期の女性の心理が次第に狂気と化していく様を描いた映画である。映画の後半、カメラは彼女のアパートからほとんど出ることはない。狭い寝室の中で荒々しく男に抱かれる妄想をみるヒロイン。壁から現れる手が彼女の体にまとわりつき、壁は音を立てて崩れ始める。周りの誰も信じられなくなる恐怖を、マタニティブルーと絡めて描いた「ローズマリーの赤ちゃん」も傑作だけど、あの題材を選んだポランスキーのルーツはここにあったのだな。
カトリーヌ・ドヌーヴが次第に精神崩壊していくヒロインを熱演。男性への嫌悪感と、その一方で大人への憧れが交錯し、恐怖と苦悶に表情を歪めることもあれば、ルージュを塗りながらうっとりとした表情も見せる。姉へ寄せられるレズビアン的な憧れが根底にあって、彼女をここまでに追い詰めたのだろうか・・・。狂気に陥るにつれて美しさを増していくドヌーヴが怖い。映画の冒頭映し出された瞳が、虚空を見つめる。そしてあれ程嫌っていた姉の恋人の手に抱きかかえられる。そんな物言わぬラスト。人間のもろさと恐さ。