■「火天の城」(2009年・日本)
監督=田中光敏
主演=西田敏行 福田沙紀 椎名桔平 大竹しのぶ 寺島進
織田信長が琵琶湖のほとりに築城を命じて建築されたのが安土城。築城に関わった宮大工岡部又右衛門を主人公に、彼を支えた家族・門下の弟子、そして当時の政治状況を絡めた人間ドラマが本作である。素直な感想は、信念を持って行動する男ってかっこいい・・・ということ。多少の物足りなさはあるけれど、よい台詞がきちんと残る映画だった。
信長を演ずるのは椎名桔平。信長俳優でベストというと渡哲也か藤岡弘(どちらも大河ですが・・・)と思っていたが、椎名信長は野心に満ちあふれた血の気の多さがよく出ていてナイス。西欧かぶれの信長が教会のような高い天井や吹き抜けに拘っていた。城の設計については指図争い(設計コンペですな)が行われるのだが、又右衛門は自分の信念を貫いて異議を唱え、信長を納得させてしまう。さらに、城を支える通し柱で使う木曾檜の巨木を手に入れる為に、敵陣の領内に単身乗り込んでいくエピソード。これには信念を貫く男の姿に、心底すごい人だったんだ・・・と思わざるを得ない。
その又右衛門の仕事を支えたのが、家族や一門の人々。大竹しのぶ演ずる妻は、常に笑顔を絶やさずに夫を支える。「おなごが笑わぬ家に日は昇らぬ」と父親に教えられた妻は最期まで笑顔を絶やさない。これもまた信念。弟子の一人である寺島進(好助演!)が若いもんに「お前は不器用だ。でも不器用である者は上手くなるために工夫をする。工夫をするから立派になれる。」という趣旨のことを、自分も師匠から言われたと励ます場面も素晴らしい。この二つの台詞は、是非使わせてもらおうと思った。メモメモ。
映画の後半、映画はややトーンダウンする。巨石を運び上げようとする際に、刺客に襲われる見せ場。落ちてくる巨石のあからさまなCGと、山本太郎君の純なる愛情もちょっと唐突な印象がぬぐえない。ラストのヒロイン福田沙紀チャンに都合のよい展開にしても、やたら都合よく感じられてしまうのがねぇ・・・。原作もこうなのだろうか。それでも多くの人々の手で柱の手直しがなされるクライマックスは、力の入るいい場面だった。欲を言えば、完成した安土城を誇らしく見つめる又右衛門の姿が見たかったかな。