■「マイケル・ジャクソン THIS IS IT/This Is It」(2009年・アメリカ)
監督=ケニー・オルテガ
出演=マイケル・ジャクソン
2009年6月に急死したマイケル・ジャクソン(僕の追悼記事はこちら)。彼の音楽的な冒険心は人種を越えて世界中の人々から支持された。僕ら世代はそれをリアルタイムで見てきた。Beat ItやThrillerのPVは何度目にしたかわからないし、世間でこれを聴いたことのない人なんていないだろ?と思えるくらいに巷で流れ続けていた。目が覚めるようなキレのあるダンス、黒人音楽なのにファンクぽくもリズムがハネてもいないアレンジは万人に受け入れられた部分なのだろうと思うのだ。
死の直前、ロンドン公演が予定されていた。このドキュメンタリー映画はそのリハーサルをマイケルが私的にフィルムに残していたもの。ステージやPVではわからないマイケルの音楽に対する姿勢が伝わってくる。コンサートのリハーサルというとどうしてもぶつかり合いがあるものだ。コーラスでもバンドでも音楽やったことのある人なら経験があるはず。「あいつが音を外すから悪い。いい加減にしろ。」「オレはこう演奏したいんだよ。」「それ違うだろ、どうしてわからないんだよ。」そんな会話は幾度となく飛び交う。ところが、マイケルのリハーサルにはそれがない。演奏は熱が入っているし、ダンサーとの掛け合いも多い。あれだけのショウを作っていくならぶつかり合いもありそうなのに、それがない。
「僕はショウをよくしたいだけなんだ。これは怒ってるんじゃない。愛だよ、愛。L・O・V・Eだよ。」
マイケルはこう言う。そして必ずミュージシャンやダンサーの労をねぎらうし、彼らに感謝や祝福をする。威張ってるビッグスタアではない。もちろん要求されることはレベルが高い。オリジナルを再現できるように演奏することが最低限の基準で、そこからライブ用に手を加えていく。そんな要求に応えるミュージシャンもダンサーは、マイケルを心からリスペクトしている。彼だから故だ。これを人徳と言わずして、何と言おう。ネットでも話題になっている女性ギタリスト(カッコいい!)のソロでは駆け寄って、「君が輝く時だ!」と激励。I Just Can't Stop Loving Youでデュエットする女性シンガーにも見せ場を用意してあげる。周りを動かしたかったら周りを気持ちよくすることだ。ビジネスシーンでもそれは常々思うことだが、これはそれをうまくやっている実例だろう。近頃の職場でのお悩みがあるからなおさらそう感じるのかもしれないが・・・(あ、仕事の話はこのくらいに・汗)。
そして環境問題についてマイケルが心を痛めていたことが、この映画ではとても強調されている。それは彼が伝えたかったメッセージだ。エンドクレジットで流れるHeal The Worldには泣きそうになった。思わず僕は一緒に歌っていた。ゴシップばかりが先行する報道が、特に日本では食わず嫌いを増やしていたのではないか。音楽をきちんと評価されるべき。この映画のヒットで、多くの食わず嫌いがマイケルをきちんと理解することになったはずだ。改めて、偉大な人を亡くしたことを僕らは思う。
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