◼️「女王陛下の007/On Her Majesty's Secret Service」(1969年・イギリス)
監督=ピーター・ハント
主演=ジョージ・レーゼンビー ダイアナ・リグ テリー・サバラス
一作だけジェームズ・ボンドを演じたジョージ・レーゼンビー主演作。歴代唯一の非欧州出身ボンド俳優であり、撮影中の素行が悪くてプロデューサーや共演者を怒らせたこともあって続投にはならなかったと伝えられる。過去5作品の影が随所に色濃く残り、タイトルバックにまで旧作の場面が散りばめられる。引き出しを開けると過去の任務の思い出の品が出てきて、その主題曲が流れる演出なんていかがなものか。決別の意味かもしれないけど、未練がましくも見える。
じゃあ、作品自体が面白くないのかと言われたらさにあらず。任務から外されて独断専行する展開、山の上にある研究施設、スリリングなスキーアクションなど、後に続くボンド映画にも受け継がれる原型がここにある。山の上の研究施設は最近なら「スペクター」にも出てくるし、この映画が大好きなクリストファー・ノーランは「インセプション」でクライマックスの襲撃場面を再現してくれる。
オープニングタイトルに主題歌が添えられたのが、第2作以来となるインストメンタルになっているのも目立つ変化のひとつ。ジョン・バリー作のこの曲が素晴らしい。ボンド楽曲のカバーアルバムであるコンピ盤「Shaken And Stirred」ではデジタルビートを効かせたアレンジでカバー。やたらカッコいい。そして何よりも、ルイ・アームストロングの名曲と共に、真剣に恋するボンド像が描かれること。ダニエル・クレイグが登場するまでこの展開は復活しなかった。そして第25作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」は「女王陛下」を観ておけばグッとくる愛の物語になった。
好きな場面がいっぱい。小学校高学年の初見以来かなりの回数リピートして観ているはずだ。クライマックスのボブスレーの手に汗握るアクション、スケートリンクで再会してからのテレサとのやりとり、そこから始まるカーチェイス。不敵に野望を語るテリー・サバラス、そして衝撃のラストシーン。アレルギー研究施設の女性患者たちとのエッチなやりとりもプレイボーイスパイらしい気障った振る舞いで、お子ちゃまにはかなり刺激的。
マネーペニーに囁く「君なしじゃ生きていけんよ」(吹替版育ちなもので😅)って台詞がいい。これも実生活で何度使ったかww
「ノー・タイム・トゥ・ダイ」観たので久々鑑賞。ボンドにヒラリー卿が紋章について説明する場面にこんな台詞が。
「ボンド家の紋章にはこう書かれています。"世界では足りない"」
おお、ここが「ワールド・イズ・ノット・イナフ」に通じるのかっ!今まで気づかなかった。