◼️「さよならの朝に約束の花をかざろう」(2018年・日本)
監督=岡田麿里
声の出演=石見舞菜香 入野自由 茅野愛衣 梶裕貴
ポスターで勝手に恋愛ものと思い込んで、さらにおとぎ話の様な純度の高いファンタジーと聞いて、公開当時から敬遠していた。しかし岡田麿里が携わった他の作品にあれこれ触れて、胸を熱くしたもので、これは観ておくべきかと思い始めた。
感謝。Filmarksの再上映のおかげで、劇場で観る機会に恵まれた。思いっきり現実逃避できましたw😭
世間とは隔たりを保って生活しているイオルフの民。日々の出来事を織り込みながら布を織り続ける彼らは、10代で身体の成長が止まり、永く生き続けることから"別れの一族"と呼ばれていた。外の世界の者と関わると必ず別れを経験することになるからだ。イオルフの少女マキアは平穏な日々の中で孤独を感じて生きてきた。そこに隣国から国王軍が侵攻してくる。イオルフの長寿の血を求めて姫に娶ろうというのである。マキアは戦闘の中で村から離れた森に取り残される。そこで母親の遺体の下で泣いている男の赤ん坊と出会う。マキアは彼を自分の子として育てようと決心する。
先日観た「アリスとテレスのまぼろし工場」と違って、僕らがいる世界と似たところも重なるところもない。スクリーンに広がるのは中世ヨーロッパを思わせる風景や自然、ジブリ作品に出てきそうな巨大な機械や入り組んだ街並み、そして絶滅危惧種の巨大な龍。
冷めた気持ちで観ちゃうんではないかと思っていた。でも、忘れていた絵本を大人になって再び手にしたような気持ちになっていた。エリアルと名付けられた男の子が場面が変わる度に成長していく。絵本のページをめくると子供の背が伸びているかのようだ。マキアは少女のままだから、エリアルの周囲は(育ての)母親だと信じてくれない。マキアが自分を育ててくれたことへの感謝はあるのだが、次第に疎ましく感じ始める。そして旅立つ日が訪れるのだが、その頃戦火が国に近づいていた。
「別れがあるから出会わない方がいい」という長老の教え。周囲との関係を遮断してイオルフの民だけで生きてきた。しかし人は誰かと出会うことで成長することができる。いつかさよならが訪れる出会いだとしても、出会いは、相手を大切に思う気持ち、誰かを愛する気持ちを育んでくれる。マキアとエリアルの成長物語としての感動が物語の太い主軸。
出会いと別れの物語だけでなく、戦争や国の存亡という損得勘定が引き起こす悲劇も痛いほど描かれている。強引に王族の子供を産まされたレイリアが、我が子と引き裂かれる様子は観ていて辛い。彼女の最後の決断には心打たれる。またレイリアを慕うイオルフの男子クリムが闇に落ちていく様子も痛々しい。全ては戦争が招いたこと。
外界と遮断して変わらずに存在し続けるイオルフ族。それはアニメでよく言う閉鎖空間。変わろうとするマキアの行動は、その因習から一歩を踏み出す。本作は「アリスとテレスのまぼろし工場」の舞台の原型とも言える。岡田麿里の真骨頂は思春期の心の動きだとよく言われる。しかし、本作で語られる人を慕う純粋な気持ちの美しさは普遍的なもの。身近な共感を排除してストーリーテラーとして、純度の高いファンタジーに挑んだ傑作。か細いボーカルが主人公に重なる主題歌が、じわっと心にしみた。
感謝。Filmarksの再上映のおかげで、劇場で観る機会に恵まれた。思いっきり現実逃避できましたw😭
世間とは隔たりを保って生活しているイオルフの民。日々の出来事を織り込みながら布を織り続ける彼らは、10代で身体の成長が止まり、永く生き続けることから"別れの一族"と呼ばれていた。外の世界の者と関わると必ず別れを経験することになるからだ。イオルフの少女マキアは平穏な日々の中で孤独を感じて生きてきた。そこに隣国から国王軍が侵攻してくる。イオルフの長寿の血を求めて姫に娶ろうというのである。マキアは戦闘の中で村から離れた森に取り残される。そこで母親の遺体の下で泣いている男の赤ん坊と出会う。マキアは彼を自分の子として育てようと決心する。
先日観た「アリスとテレスのまぼろし工場」と違って、僕らがいる世界と似たところも重なるところもない。スクリーンに広がるのは中世ヨーロッパを思わせる風景や自然、ジブリ作品に出てきそうな巨大な機械や入り組んだ街並み、そして絶滅危惧種の巨大な龍。
冷めた気持ちで観ちゃうんではないかと思っていた。でも、忘れていた絵本を大人になって再び手にしたような気持ちになっていた。エリアルと名付けられた男の子が場面が変わる度に成長していく。絵本のページをめくると子供の背が伸びているかのようだ。マキアは少女のままだから、エリアルの周囲は(育ての)母親だと信じてくれない。マキアが自分を育ててくれたことへの感謝はあるのだが、次第に疎ましく感じ始める。そして旅立つ日が訪れるのだが、その頃戦火が国に近づいていた。
「別れがあるから出会わない方がいい」という長老の教え。周囲との関係を遮断してイオルフの民だけで生きてきた。しかし人は誰かと出会うことで成長することができる。いつかさよならが訪れる出会いだとしても、出会いは、相手を大切に思う気持ち、誰かを愛する気持ちを育んでくれる。マキアとエリアルの成長物語としての感動が物語の太い主軸。
出会いと別れの物語だけでなく、戦争や国の存亡という損得勘定が引き起こす悲劇も痛いほど描かれている。強引に王族の子供を産まされたレイリアが、我が子と引き裂かれる様子は観ていて辛い。彼女の最後の決断には心打たれる。またレイリアを慕うイオルフの男子クリムが闇に落ちていく様子も痛々しい。全ては戦争が招いたこと。
外界と遮断して変わらずに存在し続けるイオルフ族。それはアニメでよく言う閉鎖空間。変わろうとするマキアの行動は、その因習から一歩を踏み出す。本作は「アリスとテレスのまぼろし工場」の舞台の原型とも言える。岡田麿里の真骨頂は思春期の心の動きだとよく言われる。しかし、本作で語られる人を慕う純粋な気持ちの美しさは普遍的なもの。身近な共感を排除してストーリーテラーとして、純度の高いファンタジーに挑んだ傑作。か細いボーカルが主人公に重なる主題歌が、じわっと心にしみた。